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専務理事 百々隆

  • 専務理事 百々隆
  • 引き続き専務理事を拝命しました百々(どど)隆です。

    本年5月に、国内の原子力発電所の全てが定期検査終了後の再起動が出来ず、運転を停止してしまうという異常な事態が生じてしまいましたが、漸く、国の存続にとって原子力発電所が必要不可欠なものであるとの認識が広まり、安全確保を大前提として運転再開に至ったことは、当面の愁眉を開いたといえるとかも知れません。しかし、社会の信頼を取り戻すには、原子力関係者が自らをどれだけ律することが出来るかを行動と実績で示していくことが必要不可欠と考えています。IAEAの安全原則でも謳われているように、原子力施設の安全確保の一義的な責任を有する原子力施設の設置者にあるのであり、設置者は、現状に満足することなく、重層的な発想をもって、常に潜在的な脆弱性の克服に努めることが求められています。

    原技協では、スリーマイル発電所2号機の事故や、チェルノブイル発電所4号機の事故を教訓として、ヒューマンエラーの防止や、安全文化向上を中心に、産業界各社と少し距離を置いた視点から、各社に物申す立場で取り組んできました。
    原子力関係者が決して起こしてはならないと思っていた炉心溶融事故とそれに伴う環境汚染が現実に起こってしまったことを受け、原技協なりの分析を行なった結果、事故から学ぶ最大の教訓事項として、「原子力安全の再認識」と「問いかけ学ぶ姿勢の重要性」を抽出しました。これを踏まえて、従来の取り組みだけで十分であったかという点については原点に立ち返って議論しているところではありますが、ヒューマンエラー防止や安全文化の向上の継続的な努力の重要性はいささかも揺るぐものではなく、むしろ一層実効的なものに強化拡充していく必要があると考えています。
    加えて、東京電力福島第一発電所の事故は、設計・設備面も含めて、規制条件を満足すればよしとするのではなく、それを超えたいわゆるシビアアクシデントの発生防止、影響緩和、ひいては防災に至るまで、世界最高水準を目指して、産業界自らが取り組んでいくことが不可欠であることを示しています。既に、電気事業者では、安全性の向上に向けた独立した新組織を作る方針を公にされていますが、この組織は、原技協が今まで行って来た事業と密接不可分なものと認識しており、原技協7年余の経験も最大限活用して、新しい活動がより実効的なものとなるよう、全面的に協力していきたいと思っています。

    平成24年度は、原子力規制委員会と新しい規制体系への移行等、原子力を取り巻く情勢はまだまだ流動的と予想されますが、世界の共通認識となっているように、原子力の安全は、国の規制と産業界の自主保安が、両輪として上手く噛み合って始めて実現できるものであり、原技協は自主保安の一翼を担うものとして、着実かつ大胆に業務を進めて生きたいと思います。引き続き各位のご指導、ご鞭撻をよろしく御願いします。

平成24年7月1日
専務理事 百々隆