理事 中野益宏

- 昨年に引き続き、理事、情報・分析部長を拝命しました中野益宏です。
情報・分析部は、これまで、国内外のトラブル情報など運転経験情報を収集し、事象を分析してその重要度に応じて文書を発行するなど、トラブルの再発防止の観点から産業界に有益と思われる情報を提供して参りました。2010年度からは、国内のトラブルの傾向分析を行い、どういった原因のトラブルが多いか、どういった設備でトラブルが多く発生しているかなどについて詳細に分析を行い、その結果についても事業者に提供して参りました。ヒューマンファクターの面からの分析にも取組んで来ました。
また、2010年度からWANO(国際原子力発電事業者協会)の運営実績評価指標(パフォーマンスインジケーター)を活用して、国内の原子力発電所の運営実績を整理し、評価しました。その結果、国内の発電所の優秀な点や課題などが明確になり、これを基に今後の改善のための取組みについて検討を開始しました。
事業者の品質保証活動の改善支援や根本原因分析(RCA)の技量向上の支援などにも取組んできました。
これらの活動について、より有効で価値のある活動となるよう取組みを強化して参りましたが、昨年の3月11日に東京電力(株)福島第一原子力発電所で、津波に起因する大事故が発生したことから、一旦これらの取組みを中止し、福島第一原子力発電所の事故に関する対応に集中して参りました。
事故対応の一環として、各電力会社、プラントメーカーの専門家からなる福島第一原子力発電所事故調査検討会を日本原子力技術協会内に立ち上げ、事務局として、事故の経緯と原因の分析を行って教訓を抽出し、原子力発電所の安全性の向上に繋がる諸対策の提言の取りまとめを行い、昨年の10月末に報告書「東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故の検討と対策の提言」を公表しました。現在、各電力会社では、これらの提言も参考にして、それぞれの対策に取組まれているところであります。
今年の1月に、電気事業連合会の八木会長から、国内の原子力発電所の安全性を一層向上させるための新組織を、今年中に設立する旨の発表がありました。
新組織においても、現在の我々の活動が継続してしっかりと活用されるよう、これまでの活動を見直して改善し強化すべく取組んで参ります。
全ての原子力発電所が運転を停止し、大飯原子力発電所以降の発電所の運転再開の目処が立っていない状況の中、原子力産業の信頼回復のため、微力ながら尽力して参る所存であります。今後とも引き続き、皆様方のご指導、ご支援よろしくお願いいたします。