安全講演会 |

安全講演会の様子
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安全講演会には、原燃輸送(株)の社員約50名が出席されました。
講演の冒頭、社長 梶井孝泉様から、
本日は第116回の安全キャラバンです。記録を見ると、10年前に始まった安全キャラバンの名誉ある第1回目は、弊社の六ヶ所輸送事業所と日本原燃さんが合同でお受けしています。以来、弊社では第60回、第89回もお受けし、本日は4回目の安全キャラバンとなります。また、安全キャラバンの他にも、弊社では過去に2回、日本原子力技術協会さんのピアレビューをお受けしており、いろいろとご指導をいただきながら、徐々に安全文化を高めてきたつもりです。今日まで無事故・無災害の安全輸送実績を積み上げてきたことも、先生方のご指導を踏まえながら、皆さんがしっかりと頑張ってくれたおかげだと思っています。
本日は、慶應大学の高野先生をお招きし、「組織マネージメントとヒューマンファクター」というタイトルでご講演を拝聴することになっています。高野先生は、長年にわたって電力中央研究所(電中研)でご活躍され、電力業界の事情にもご精通されています。
ヒューマンファクターは今や非常に有名な言葉になりましたが、大変難しい課題であり、いくら努力しても終着駅はないというほど、継続して取り組まなければならないものだと思います。昨今の世間一般のトラブルや事故は、その大半がヒューマンファクターによるものであると言っても過言ではないでしょう。最近の事例では、高い安全実績を誇っていたJRの新幹線で、パンタグラフのボルトを締め忘れるという、非常に単純なヒューマンファクタートラブルが発生しています。
ボルトの締め忘れと言えば、昨年、低レベル放射性廃棄物の輸送コンテナをめぐって、ボルトの締め忘れに端を発した過去の基準不適合という問題が弊社でも発覚しています。午後には、この事例に関する弊社の取り組みをご紹介した後、いろいろとご指導をいただくことになっています。こちらの方も大いに期待しているところです。
本日は高野先生のお話をよく聞いて、安全第一の経営に役立つヒントを得たいと思っていますので、皆さんもしっかりと聞いてください。
とのご挨拶を頂きました。
ご挨拶の後、慶應義塾大学大学院教授 高野研一様から「組織マネージメントとヒューマンファクター」と題してご講演を頂きました。
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慶應義塾大学大学院教授 高野 研一様
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◆近年、企業を取り巻く環境は複雑化し、極めて多岐にわたる多様なリスクに囲まれていると考えられる。このような状況において、手順書や組織体制、施策だけで全てのリスクをカバーするのは非常に難しい。そこで、今、企業に求められているのが安全文化、すなわち価値観の共有である。「何を優先すべきか」という点について価値観を共有していれば、どんなリスクに対しても、正しく対処できるはずである。
◆基本的に「設備」が順調に運転されていれば、安全上は問題ない。その設備を支えているのは「技術」であり、技術は「管理」によって支えられている。管理の実効性を高めなければ、いくら一流の技術を持っていても、設備の運用に問題が生じてしまう。しかし、管理はあくまでも人が司るものであり、それを作り出す組織風土や文化の部分に一番大きな問題が内在していると考えるべきである。そのため、モチベーション、モラル、人間関係といった要素を改善することで、土台から再構築していくことが安全文化の基本となる。
◆日本の産業界における事故には、「スケジュール優先」、「会社に損害を与えたくないという使命感」などの共通点が見られる。このような人や組織に関わる問題点を上手く改善していけば、多くの組織事故を未然に防ぐことができるのではないだろうか。
◆電中研では、次の8つの項目を安全文化の醸成に欠かせない要素としている。JANTIの7原則とほぼ同じものである。まず、組織文化の基盤になるものとして、「ガバナンス(組織統率)」、「コミットメント(責任関与)」、「コミュニケーション(相互理解)」、「モチベーション(動機付け)」の4つが挙げられる。ガバナンスには安全に対する価値観の共有を図ることが、コミットメントには安全に対する当事者意識が、コミュニケーションには現場との対話が、モチベーションにはやる気の出る仕組み作りが、それぞれ求められる。
◆さらに、業務運営の基盤になるものとして、「アウエアネス(危険認識)」、「ラーニング(学習伝承)」、「業務実施」、「リソースマネジメント(資源配分)」の4つが挙げられる。アウエアネスには徹底したリスクの発見と管理が、学習伝承には根本原因追及と教育の充実化が、業務実施には万全なチェック体制が、リソースマネジメントには最適な人材配置が、それぞれ求められる。
◆これら8つの要素に基づき、「組織対応」、「作業開始前」、「認知・判断過程」、「行動」、「設備」の五層モデルで事故防止の戦略を立てることが重要である。その際には、「やらされ感」の強い活動ではなく、現場の人間のやる気を促すような仕組みを考えることが、価値観の共有を図っていくうえで強く求められている。
との貴重なお話をいただきました。
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講演会終了後のアンケートでは、
●潜在リスクの洗い出しを行い、そのリスクに備える取り組みが重要であると再認識した。また、各社に
おける潜在危険要因の発掘、低減や異常に気付かせる事例等をご紹介いただき、今後、職場で活用可能な
ものが多くあった。大変参考になりました。
●事故防止のバリヤーの具体的事例の紹介が多岐、多数あり、今後の安全管理の検討に参考となった。
●安全文化が企業倫理、リスク管理、内部統制といった会社の課題と密接に関連していることがよく理解
できました。事例も多数ご紹介いただけたので、今後の自業務に活かしていきたいと思います。
●安全対策の分析的アプローチが具体例をもとに体系的に研究されていることについて理解できました。
当社でも適用できる対策が数多くあると感じました。人の心理的ベースが共通的判断に繋がることが理解できました。
●ヒューマンファクターに起因する問題、トラブルが、企業に重大な損失を与えること、これを引き起こ
しているのは、ルールの不備だけでなく、社員全員のモチベーションの低下が大きいということが理解できた。
●多面的な解説、特に重大事故に関する要因が聞けて非常に有意義だった。さらに、「価値観の共有」というキーワードを理解することに役立った。現実的な指摘で、安全の維持というものがやはり難しいと実感できた。
しているのは、ルールの不備だけでなく、社員全員のモチベーションの低下が大きいということが理解できた。
●多面的な解説、特に重大事故に関する要因が聞けて非常に有意義だった。さらに、「価値観の共有」というキーワードを理解することに役立った。現実的な指摘で、安全の維持というものがやはり難しいと実感できた。 |
などのご意見 ・ご感想をいただきました。 |
安全情報交換会 |

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安全情報交換会の様子 |
原燃輸送(株)の安全・品質保証部マネージャー井上忠司様から「低レベル放射性廃棄物輸送容器の不適合の再発防止対策と今後の教訓について」という詳しい事例紹介を頂き、また、講師の高野研一様からの事例とコメントをもとに「組織マネージメントとヒューマンファクター」の視点で、原燃輸送(株)常務の鈴木一弘様他6名の関連部門の方々に参加いただき、意見交換をおこないました。
以 上 |