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熊本大学教育学部
教育実践総合センター教授 吉田 道雄 氏 |
熊本大学教育学部 教育実践総合センター教授 吉田 道雄 氏をお招きし、安全管理と管理者の対人関係スキルアップなどについて情報を提供していただきました。主なお話の内容は以下の通りです。
・安全文化活動を進めるための正解は、ご参加の会社や職場毎に様々な事情に応じていくつもある。このセミナーではそうした正解例を提示しながら、自分たちの職場に合った正解をさがすためのお手伝いをさせていただきたいと思っている。
・原子力施設のトラブルや事故は、法整備が進み設備がしっかりしていればなくなるというものではない。fail safe(ハード) だけでなく、feel unsafe(対人、ソフト)の両立を実現する必要がある。
・成果を大事にすることは必要だが、成果には見える成果≠ニ見えない成果≠ェある。一般的には見える成果≠ノ目が向きやすく、見えない成果≠フ大事さを見逃すことが少なくない。見えない成果≠ノは、意欲や満足度などが含まれる。そうしたものを厳密に測定しようと考えず、ある程度の傾向を把握することで大事な成果≠ニして評価することが期待される。
・意欲に関していえば、いやいややっている仕事≠ナはなく、しっかり仕事をしたら褒められた=A失敗してもあらためてチャレンジできる≠ニいった環境にある組織は強い。
・見えない成果である意欲や満足度を上げるだけでも安全性や生産性の向上を期待できる。見えないところを大事にする、意欲などのようなこころ≠フ部分を大事にしていただきたい。
・スムーズなコミュニケーションを考えるに当たっては、伝える側と受ける側の対人関係が重要になる。それがうまくいっている場合は、一方が80%しか伝えていなくても、受ける側が不足する20%をフォローしてコミュニケーションを成立させる。内容的に正しいことを伝えるのはもちろんだが、それが意図通りに通じる対人関係を作ることが重要になる。
・安全と効率を両立させる発想が求められている。安全を高めるアイディアを出せばそれが正しく評価される。そうした風土ができれば、誰もが気持ちよく仕事ができる。その結果として、コストを伴わずに安全な職場が実現する可能性も高まる。
・リーダーだけでなく、フォロワー側にもリーダーをサポートする力が求められる。基本的にリーダーシップは上から下へ流れていくものであるが、力あるフォロワーが力あるリーダーを育てるという側面もある。また、フォロワーの人数が多くなればなるほど、リーダーの専門力に加えて人間力のウエイトが大きくなる。知識や技術の量だけでなく人間力を磨いていかなければ、フォロワーに対してリーダーシップを発揮することが困難となる。
・リーダーの善し悪しは、リーダー個人の資質で決まるのではなく、リーダーの行動によって決まる。すなわち、リーダー個人がどんな特徴を持っているかが問題なのではなく、どんな行動をしているかが重要なのである。リーダーには求められるあらゆるアクションを取っていくことが期待されている。
・言葉と人間行動は密接に関連しており、言葉によって行動が規定されることも多い。たくさんの言葉を知っていれば、それに応じて多様な行動が取れることになる。
・部下を育てる「きょういく」にもいろいろある。たとえば、「驚育」などは大事にしたいものの1つである。「驚く」ことは、「褒める」ことにも通じる。この他、お互いに協力しあいながら進める「協育」、共鳴しあう「響育」、今すべきことを先延ばししない「今日育」なども大事にしたい。
・その一方で、脅しながら行う「脅育」、自分の考えだけを押しつける「狭育」などは避けないといけない。しかし、自分では気づかずにこうしたマイナスの「きょういく」をしている管理者も少なくない。
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