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 平成20年12月4日、東京都港区のTKP田町ビジネスセンターにおいて、会員の管理者クラスを対象に第18回管理者セミナーを開催し、約66名の方に参加いただきました。今回のセミナーでは、藤江理事長の挨拶に引続き、当協会NSネット事業部の様々な活動(安全キャラバン、安全風土調査、現場診断等)を通じて提起された安全文化に関する共通課題とその取り組みにフォーカスした講演を行い、会員間で認識を共有しました。

講演

 第一部
     演題 : 「安全文化、その捉え方と実践
               ―個人・チーム・組織の価値観共有による事故防止戦略―」

         慶應義塾大学大学院教授  高野 研一 氏

慶應義塾大学大学院教授
高野 研一 氏

 企業は実にさまざまなリスクに囲まれている。しかし、全てのリスクに対して万全の体制を整えておくことは、事実上、不可能な話である。そこで、有効な対策として、経営者から管理者、従業員に至るまで、組織を構成している全ての人間が、安全の価値観を共有することが求められている。これは、倫理やコンプライアンス、そして安全文化に関わる問題であり、「心の問題」という領域にまで踏み込んでいかなければ、実現させることは難しいとものである。
安全文化には、組織文化の基盤となる4つ軸(モチベーション、ガバナンス、コミットメント、コミュニケーション)と、事務運営の基盤となる4つ軸(危険認識、学習伝達、業務実施、資源配分)が求められている。
モチベーションについては、やる気の出る仕組みを作っていくことが重要である。調査の結果、モチベーションは未だ十分ではないことが判明している。モチベーションは安全活動のあらゆる要素に影響を及ぼすものであるため、これをいかに高めていくかが、今後の大きな課題になっている。
ガバナンスについては、「安全が重要である」という理念を組織内に浸透させることが重要である。そのためには、経営者が直接現場に足を運び、一対一の対応をしていかなければならない。また、株主価値だけを追求することなく、企業価値という全体的な考え方が求められている。
コミットメントについては、当事者意識をしっかり持たせることが重要である。そのためには、工夫を凝らした多彩な安全活動を実施し、マンネリ化の防止に努めることが不可欠となる。
コミュニケーションについては、特に若手との交流についての対策が求められている。また、言い難いことでも報告しやすいような雰囲気、あるいは情報システムを作ることも重要な課題の一つである。
危険認識については、日頃から地道な努力を進めていくことが大切であり、小さなリスクを確実に摘み取っていくことが求められる。
学習伝承については、その場限りの教育や指導を行うのではなく、体系的な教育を実施していくことが必要である。その際には、「現場での教育」と「安全に関する教育」の両輪を組み合わせたものを導入しなければならない。
業務実行については、高品質の業務を進めていくこと、つまり品質管理が求められる。
最後に、リソースマネジメントについては、現在、人員構成の偏りという問題を抱えている現場において、いかに世代間のギャップを埋めていくかが大きな鍵を握っている。
これら8つの軸に基づき、「組織の風土・文化」という土台をしっかりと構築することが、今の原子力業界に求められているのである。

との講演をいただきました。

第二部
     演題 :「安全文化のキーパーソン −中間管理者−」

        (財)原子力安全研究協会 理事長 松浦 祥次郎 氏

(財)原子力安全研究協会 理事長
 松浦 祥次郎 氏

 安全文化という言葉を私なりに解釈すると、「安全を第一とする心映えを身につけた考え方、態度、習慣」ということになる。
安全の価値は、「安全を求める権利」という視点で考えることができ、これは憲法でも保障されている基本的人権の1つである。なぜならば、安全が確保された状況でこそ、人ははじめて自由に行動でき、利益を生み出すことができるからである。安全文化は、その基盤となる最も重要なものであると考えられる。
安全文化を醸成、あるいは堅持していくためには、常に問い直す態度や習慣(Questioning Attitudes)、慎重かつ確実な思考と行動、充実したコミュニケーション、そして、慢心や思い上がり(Complacency)に対する配慮という4つのキーファクターが求められる。
これら4つのキーファクターの裏返しとして、安全文化を崩壊させる因子がいくつか考えられる。代表的なものとしては、良い経験や優れた実績よる自信過剰、気に入らないことへの無関心・無視、成功体験や前例への寄りかかり、組織の利益共同体化、意思疎通の狭窄や断絶といったものが挙げられる。これらの因子に関する組織の状態をチェックすることで、安全文化の健全性を確認することができるが、その際には、自分たちの手で作った独自の仕組みを用いて、自分自身で確認することが大原則となる。
現場で実施した意見交換会では、原子力を取り巻く環境の厳しさによる萎縮、職員の意識のあり方、経験や技術継承の難しさ、施設内・外のコミュニケーションの難しさなどが、問題点として指摘されている。また、原子力技術者と地域住民・一般市民との間に生じている「安全認識の乖離」も決して無視できない課題であり、コミュニケーションを図りながら、乖離を小さなものにしていく努力が必要である。
組織の中に安全文化を醸成し、堅持していくうえで、最も重要な役割を担っているのが中間管理職である。彼らは長いキャリアの中で反復を十分に繰り返し、安全文化に求められるものをしっかりと身につけている。また、上司と現場、現場と協力会社など、さまざまなコミュニケーションの場において、「つなぎ目」という重要な立場にいる存在が中間管理職なのである。
日本には、「全て御上に任せて、下々は仲間内でやっていこう」という考え方が文化の根底にある。この欠点を超克するには、経営トップの人間ではなく、現場をよく知る中間管理職が中心となり、安全活動を盛り立てていくことが求められている。

との講演をいただきました。

講演会終了後のアンケートでは、
慶應義塾大学大学院教授  高野 研一 氏の講演 に対して

●安全文化を体系的に整理することに役立てることが出来たる内容で非常に良かった。資料も内容があり、後日活用ができるものであった。

●安全文化の考え方と実践項目、手順の理解は深まったが、改善の実施例の紹介を多く取り入れてもらいたい。

●今回のご講演は「安全」に関するのものでしたが、この話は即「品質」とおきかえる事ができると思います。私は品質保証を担当しており、要領書遵守等の行動面での改善に加え、各員の品質に対する意識調査をどうやって高めていくかということ事について取り組んでおります。今回の内容はそのまま品質保証活動に反映させていただきたいと思います。大変参考になりました。特に大きなリスクを除くためには小さなリスクをきっちりと取り除くと良いというニューヨークの地下鉄の例は参考になりました。 

(財)原子力安全研究協会 理事長 松浦 祥次郎 氏の講演 に対して

●「安全文化」を日本文化との関連も含めて、分かりやすく解説していただきました。また、中間管理職の役割や重要性も理解することが出来たと思います。中間管理職としての元気が出た様に思います。

●安全文化醸成のキーファクターは、安全を超えた大切な要素が含まれていると思いました。これも大いに活用させていただきたいと存じます。

●前原子力安全委員長の安全文化に関する哲学を聞くことが出来、非常に有益であった。専門家の先生の講演も良いが、時には今回のような原子力業界トップの方の話を聞く機会を作っていただきたい。

●「原子力安全文化」として捉えると社会との接点が重要になると思う。これを原子力に携わるものに自覚して社会に対して接していくための話も次回聴きたいと思いました。

●安全文化は知識として持っていれば良いというものではなく、身につけるものというご説明に感銘しました。社内でルール化しているものでも、根本的なものについては「規程に書いてあるから」とかいう理由のようなものがなく行われ、浸透することが重要と思いました。

など、多数のご意見をいただきました。  



以 上

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