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1. 平成20年7月30日(水)
(1) 講演:警察大学校
警察政策研究センター
主任教授 樋口 晴彦 氏
樋口先生から、「組織行動の「まずい!!」学〜どうして失敗が繰り返されるのか〜」と題して、最新の様々な不祥事等に潜む根本的な組織の原因と管理職の姿勢についてのご紹介がありました。
私は、警察で危機管理の分野に長年携わってきた経験から、危機の発生を未然に防止するためのリスク管理の重要性を認識している。最近は事故や不祥事が数多く発生しているが、特定個人の責任を追及するのではなく、組織全体の問題として考える姿勢が必要である。
平成14年に発生した三菱重工における客船火災事故は、マニュアルに違反した溶接作業が原因であった。その背景には、「守るべきルールやマニュアルが多すぎる」、「会議や報告が多く、現場監督に当てる時間がない」といった問題が存在した。マニュアルや報告書が増えすぎると、逆に現場の管理がずさんになってしまうことに注意が必要である。
平成16年に発生した美浜発電所の配管破損事故では、破損部分が点検リストから登録漏れになっていた。この登録漏れが長年にわたって是正されなかったのは、関西電力が経費を削減する目的で点検業務をメーカーから子会社へと移管したためである。短期的な業績向上に執心することによって、安全性などの長期的な指標に悪影響が出てしまった一例である。
昨年の「あるある大辞典」の捏造事件では、テレビ業界の厳しい階層構造が孫請け制作業者を不祥事へと追い込んでいる実態が明らかになった。このような状況は、アウトソーシングの拡大とともに、様々な業界に広がりつつある。外注業者を見下すような特権意識を捨てなければ、いずれは自分の足元がすくわれるということを学ぶべきである。
平成18年に発覚した社会保険庁の不正処理事件は、成果主義に基づく人事評価が原因であった。成果主義は非常に難しいもので、上手く実践するためには、ハイレベルな管理能力が求められる。成果主義が数値偏重に陥ってしまうと、現場の業務をおかしな方向へと歪曲させる危険性がある。
「組織の強さ」とは、まさに「中間管理職の強さ」である。中間管理職には、現場指揮官として、やるべきことを部下にやらせることが求められる。そのためには、現場の仕事内容を真に理解するとともに、部下に対する説明責任も不可欠となる。また、日常の惰性に流されることなく、相手によって態度を変えてはいけない。
そして、最も重要なポイントは、「中間管理職は憎まれ役にならければならない」ということである。組織が健全であり続けるためには、誰かが憎まれ役を演じる必要がある。その役目を担っているのが中間管理職であり、嫌われ役を引き受ける覚悟を固めるべきである。
など、ご講演をいただきました。
(2)JR東日本総合研修センター「事故の歴史展示館」に学ぶ
ジェイアール東日本パーソネルサービス
顧問 関口 雅夫 氏
JR東日本総合研修センターにある「事故の歴史展示館」見学しました。
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2.平成20年7月31日(木)
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(1)体験学習
JR東日本パーソネルサービス
顧問 関口 雅夫 氏
JR東日本総合研修センターの実習線において、踏切内での緊急時対応訓練や踏切事故における列車の緊急停止訓練など、JRにおける豊富な現場経験に基づいた体験学習を行っていただきました。
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(2) 講演
JR東日本パーソネルサービス
顧問 関口 雅夫 氏
関口先生から
「事故の失敗から学ぶ 安全への意識改革」
と題して
仕事の原点に関わる事故事例、安全の原点に関わる事故事例、安全な仕事をするために、と鉄道事故の原因から得られる教訓を整理し、自らの事業所への警鐘とすると共に、今後の安全な風土作りへの参考となる講演をいただきました。 |
3.アンケート
セミナー終了後のアンケートでは、
(1) 講演について
●ヒューマンエラーの起こりやすい環境や対策方法など、実事故を例にわかりやすく解説され、非常に良かった。また、良い環境作りには中間管理職の役割が大きい事も再認識させられ、有意義な講演でした。
●社会的問題となった事故や不祥事の背景には、当時の会社が抱える組織要因が潜んでいることが、多くの事例を管理者と現場の目線からの適格な分析結果を聞くことでよく理解できた。会社に持ち帰り教訓事例として活用したい。しかし、どのように改善したら是正できるのか、もう少し具体例を踏まえ掘り下げて解説して欲しかった。
(2)
体験学習について
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関口先生の熱くて活力的な指導がすごく魅力的であった。自らの経験を踏まえた発言には説得力があって、また、語り口が面白かった。電車や踏切など日ごろあまり身近で無い物に触れた事もいい経験であったが、先生がおっしゃった「脳は同時に2つの事を判断することは出来ない」という観点を持ち帰ろうと思う。
●命を守るために全力をあげて取り組むための重要性をよく認識することができた。
●危機に直面した時、まず先に何をやるか、これについては原子力発電所を運転する責任者として常に考えております。今回の体験学習、大変勉強になりました。トラブルに対応するマニュアルは色々ありますが、それらを読んで覚えるだけではなく実際に自分の体を動かしてやってみる、その大切さを再認識しました。思ったほど自分の体は動きませんでした。
など、多数のご意見をいただきました。
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