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 平成19年12月5日に東京都港区の仏教伝道会館において、会員の管理者クラスを対象に第14回管理者セミナーを開催し、約50名の方に参加いただきました。今回のセミナーでは、鈴木専務理事の挨拶に引続き、原子力業界内外での事故・トラブル・不正問題発覚などを踏まえ、根本原因と考えられるヒューマンファクター、倫理、組織要因と、その根底にある安全文化にフォーカスした講演を行い、会員間で認識を共有しました。

講演

 第一部
     演題 : 「日本の原子力産業の歴史を踏まえた安全文化のあり方とこれから」

      日本ヒューマンファクター研究所  所長 黒田 勲 氏

日本ヒューマンファクター研究所
所長 黒田 勲 氏

 原子力発電所では、原子力安全、設備安全、作業安全など、「安全」という言葉がさまざまな使い方をされている。しかし、これらの安全はIAEAの方を向いているものであり、一般世間における安全とは違うものである気がしてならない。
 近年の日本では、原子力業界のQMSや航空機の業界のSMSなど、大きなシステムによって安全をマネジメントしていく欧米流の仕組みが導入され始めている。安全に関する社会の要求も高くなりつつある今、日本の組織は安全に対する考え方を改める必要に迫られている。
 戦後60年間にわたり、日本の組織は安全に関する優れた枠組みを独自に構築してきた。しかし、再発防止よりも責任追及を重要視する傾向や、行政・規制に対する過剰な依存など、短所というべき点も多く見られる。安全というものは時代の流れとともに変化していくものであり、その仕組み自体も一緒に変わっていくべきである。しかし、長期にわたる経済不況の中、日本の組織はそれが上手くできていない。欧米流の仕組みに馴染むことができず、さまざまな不祥事やトラブルを引き起こしているのが現状である。
 安全とは、「許容限度を超えていないと判断された危険性である」と定義されるが、許容限度をどう決定するするのかが重要な要素となる。まずは、安全とは組織の目的を達成する方法論であり、目的そのものではないということを認識しなければならない。安全を第一とするならば、品質やスケジュールはどんな順序で優先させていくのか、きちんと明確にすべきである。日本の組織はその点が非常に曖昧であり、現場の人間を困らせる一つの要因となっている。また、人間が一切関わらない安全というものは決して存在しないということも、十分に理解しておくべきである。あらゆる作業に人間が関わっている以上、100%安全というものはあり得ないのである。
 安全文化を醸成させるためには、強力なリーダーシップが不可欠であり、経営者が直接関与しながら、風通しのよい組織を作っていく必要がある。さらに、社員が自律的に物事を考えて自主的に行動すること、ヒューマンファクターについての的確な理解、活気のある組織風土なども重要な要素となる。
 安全に対する社会の意識が変わりつつある今、もう一度、安全の根源を考え直してみることが求められている。社会の中で安全をどう作っていくのか、日々努力を続けていくことが重要である。

との講演をいただきました。

第二部
     演題 :「信頼回復に向けて」

      (株)JALインターナショナル  品質保証部 品質マネジメント室
           ヒューマンファクターグループマネジャー 渋江 尚夫 氏

(株)JALインターナショナル
 品質保証部 品質マネジメント室
 ヒューマンファクターグループマネジャー
渋江 尚夫 氏

 日本航空では、失われた信頼の回復に向け、新たな安全管理システム(SMS)を導入している。
 2005年3月に国土交通省から事業改善命令を受けた日本航空では、2005年の下期に新しいプロジェクトを立ち上げ、徹底的に現状の調査を行った。その結果に基づき、2006年4月にヒューマンファクターに専念するヒューマンファクター・グループを新設し、4ヶ月間の準備期間を経て、同年8月に新たな仕組みを導入した。この成果として、2006年度のヒューマンエラー発生数を前年度の20%近くに削減し、2007年度についても継続して結果を出し続けている。
 航空機の整備では、「お客様に安心してお乗り頂ける航空機の提供」、という大前提のもと、4Mを用いた仕組みを導入している。第一のManは、個々人のスキルを指し、経験年数、訓練や資格などが重要となる。第二Methodは、航空機の整備不可欠なマニュアルに関するものであり、マニュアルそのものはもちろん、その作成過程についても考えていく。第三のMaterialは、部品や材料の管理、第四のMachineは、設備や機材の製造管理、維持管理がテーマとなる。これらの4Mに加え、8000人近い全スタッフにどのような啓蒙活動を実施していくべきか、的確なマネジメントを実施するためのManagement、さらに、「なぜ、我々は航空機の整備をしなければいけないのか」という使命的なものを考えるMissionの2つのMを新たに付け加えている。
 これらのMを管理していくために、日本航空では「皆の力で“落とし穴”を徹底的に埋めよう!」というスローガンを掲げ、PDCAサイクルを導入した仕組み作りを実施している。このPDCAサイクルでは、潜在要因の抽出と根本的な対策の実施を基本とし、安全親父と呼ばれるヒューマンファクターアドバイザーを活用した情報の収集、ハザード抽出、MEDAプログラムを活用しての要因分析・対策立案、そして実施した対策に関する科学的な評価といった活動を行っている。
 さらに、この仕組みを支える基盤作りとして、当事者の責任を追及しない「No Blame Culture」という制度を導入するなどの明確なトップコミットメント、現場主導型で進めていくためのNetwork作りを含む推進体制、そして、自ら考えることを徹底した訓練活動など、さまざまな活動を実施している。

との講演をいただきました。

講演会終了後のアンケートでは、
日本ヒューマンファクター研究所  所長 黒田 勲 氏の講演

●安全と経済、社会動性の関連など、興味深い話が聴けました。また、私もこれからの企業のあり方とは?と考えています。日本的→国際的の変化の中、個人、企業、社会の仕組みの変化への対応が有効か、経営的な対策が個人の幸せになるのか。国民性の変化と、システムの変化の要求がバランスを保つために何が有効か、次回にでも先生の考えを聴かせて頂ければと思います。ありがとうございました。

●最近の「安全」に対する認識について、疑問、懸念が提示され、非常に共鳴を受けた。大きく状況が変わっていく中で基本とすべきところを大切に取組んでいきたい。

●原子力における安全が、複数あるとのご指摘は、非常に納得させられ、我々のような製作メーカーでは、安全=作業員の安全ととらえて、考えがちであり、全体としての安全まで意識が向かないので、安全に対する考え方が変わった。

●「安全は存在しない。存在するのは危険。安全とは一人ひとりが力を合わせて作りだす物である。」「安全第一なら第二、第三は何か」「日本の原子力安全は安全文化の根源に立ち帰って見直す必要がある」が印象深い。今後の考える視点を得た気がする。

●幅広い視点から、原子力業界の“安全”への姿勢などを鋭くついておられ、自分自身の行動も含めた安全文化への取り組みの参考となった。また、日本の原子力がこのままでは衰退するのではないかとの問いかけも日頃感じている事でもあり、何とか食い止め、誇りをもって社会へ発信して行く必要性を感じた。

 

株)JALインターナショナル  品質保証部 品質マネジメント室  ヒューマンファクターグループマネジャー 渋江 尚夫 氏 氏の講演

●「4M」+2Mについて、大変参考になりました。現場を担当する者として、今後の一つの手法として、品質維持・管理の目安に出来ればと思います。「No Blame Culture」については、今後国内に広がって欲しい風土であると思います。ある意味、逆風の状態であるにも拘らず、採用した御社に期待します。

●JALの整備部門の安全管理体制の構築を実際に進めている部分としての紹介であった。信頼回復するためにミィーダ(MEDA)を活用している事例は電力部門として根本分析を導入する場合に非常に参考となるものと考えます。JALさんの意気込みが感じられました。

●ヒューマンファクター・アドバイザーというものは即効性といい、良いシステムだと思いました。

●トラブル発生からの信頼回復として、生の発表を聞かせていただき、大変参考になった。内容的にも、今後の活動にも十分、当社の活動にも活かせるものであり勉強になった。

●“仕組み作りと仕組みを支える基盤作り”ポイントは身の丈にあった仕組みであること。→正常に機能する仕組みであること。要因分析については、潜在要因の抽出も重要である。-インタビューアーの力量。なぜ?を繰り返す事で真の要因を把握することが重要。トップコミットメントとして明確な方針の提示とNo Blame Cultureを打ち出す。など興味を持った。

など、多数のご意見をいただきました。  



以 上

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