安全講演会 |

安全講演会の様子
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北海道電力株式会社泊発電所の社員および協力会社の職員約50名が出席されました。
講演会の冒頭、泊発電所長 熊谷 隆 様から「泊発電所にとっては、今回が3回目の安全キャラバンとなる。泊発電所は、運開以来1,2号とも比較的順調に運転している。しかし、全国的に見ると、いわゆる原子力をめぐる状況は非常に厳しいものがあり、発電設備における総点検では、当社の伊達火力の問題も含め大きな社会問題となっている。このような時期に安全キャラバンを開催して頂き大変に有り難い思いである。本日の安全キャラバンを機に、私どもはもう一段、安全に対する意識を高め、今後の発電の運営に役立てたいと考えている。」とのご挨拶を頂きました。
ご挨拶の後、日本原子力技術協会 河島理事より当協会の活動概要を紹介し、引き続き、日本ヒューマンファクター研究所 研究開発室長 石橋 明 様より「ヒューマンファクターと安全を考える」と題してご講演頂きました。
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講演では、 |

日本ヒューマンファクター研究所
研究開発室長 石橋 明 様
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●近年の文明社会では、生産現場から家庭生活に至るまで最新のハイテクシステムが導入され、高度な利便性を享受している。その陰で、危険感覚が著しく希薄化する傾向にあるといわれている。しかも、システムが進歩するに連れて、これを使用する人間との間に次々と「ヒューマンマシンインタフェースの問題」が発生して、システムの僅かな故障や、些細な操作ミスでも大事故に至る可能性を秘めている。そこで、使用する人間の精度が求められるのであるが、人間の能力には限界がある。個人の能力の限界をカバーするために組織が編成されて、エラーが発生しても、その被害を極限するための対策が準備されることとなった。その組織的な取り組みの一つが、リスクマネジメントシステムの構想である。
●リスクマネジメント活動を進めるうえで最も大切なことは、ヒューマンファクターズの理解とヒュ−マンエラーへの備えである。人間の基本的特性、行動特性、或いは能力の発揮を妨げる要素などを理解することによって、ヒューマンエラーのメカニズムを解明して、有効なエラー対策を構築することが求められている。ヒューマンエラーを詳細に分析すると顕在化した当事者エラーの背後には、これを誘発する組織エラーが潜在することが分かる。航空の分野では古くから組織エラーへの取り組みが進んでおり、その成果が、新しい訓練手法(CRM訓練)の開発、失敗から学ぶ体制(航空安全報告制度)の整備という形で実を結んでいる。それらが、航空分野における安全文化の基盤となって、最近10年間の世界の航空事故統計にも実績として現れている。
●航空分野におけるヒューマンファクターへの組織的取り組みは、「墓石安全から予防安全へ」と進化している。墓石安全とは、事故の尊い犠牲のうえに成り立っている安全という意味であり、従来の安全手法はすべてこの手法に頼っていた。しかし、航空機が大型化して、ひとたび事故が発生すると大惨事となることから、「事故を起こしてからでは遅い」と考えられるようになった。すなわち、日常業務の中に潜在する危険因子を正確に把握して、分析し対策を練って、事故を未然に防止する考え方の台頭である。
との貴重なお話を頂きました。
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講演会終了後のアンケートでは、
●現在、根本原因分析(RCA)に関する研修を受講しているが、分析手法の一つであるSAFERもヒューマンファクター学を基礎としたものであり、同じようなVTA分析手法についての説明に興味を持った。
●CRM訓練は原子力発電所中央制御室や保修作業チームでも効果的な訓練と思う。
●航空業界という、安全を非常に重視する他分野のエピソードはとても興味深く聴いた。
●エラーとは何か、その種類は、なぜ発生するのか、対策はどうしたら良いか等、体系的な話を聴けたことはとても有難く感じた。特に、CRM概念は大いに参考になった(心で気付くことの大切さを認識)。
●CRM訓練(熟練者の陥りやすいエラー)は興味深かった。十分な知識と経験を積んで自信と誇りを持つことは必要なことと思うが、それは、慢心と紙一重の関係にあり、常に意識して自戒する必要がある。
●リスクマネジメントとして、墓石安全→予防安全への変遷があり、予防安全の重要性を痛感した。安全文化の定着については育成の要件項目全てが重要不可欠と感じた。
●ヒューマンエラーに関する色々な知見について、具体的な事例を交えながら、体系的に説明がなされた点で、大変有意義な講演だった。 |
などのご意見
・ご感想をいただきました。 |
安全情報交換会 |

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安全情報交換会の様子 |
安全情報交換会では、北海道電力株式会社泊発電所からご要望があった「職場の風土調査」について、株式会社原子力安全システム研究所 ヒューマンファクター研究プロジェクト 主任研究員 福井 宏和 様より詳しくご紹介頂いた後、意見の交換を行いました。
以 上 |