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三菱重工業株式会社 高砂製作所にて第87回安全キャラバンを実施
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 平成18年10月5日、兵庫県高砂市にある三菱重工業株式会社 高砂製作所において、第87回安全キャラバンを実施しました。

安全講演会

安全講演会の様子

 安全講演会には三菱重工業株式会社 高砂製作所の社員151名が出席されました。

講演会の冒頭、三菱重工業株式会社 高砂製作所 所長 前川篤様から 「日本原子力技術協会の第87回の安全キャラバンを実施していただきありがとうございます。今日はよろしくお願いいたします。 今日、日本原子力技術協会の活動紹介の後、杉本先生から、まさにわれわれの抱える問題である、原子力業における倫理と説明責任ということでご講演をいただき、非常に重たいテーマであり、また、われわれが原子力をやる以上避けて通れない課題について教えていただきたいと思います。
みなさんご存じかもしれませんが、9月の中頃に、日経新聞の社説に原子力の足元を固め直せという社説がありました。その中に3つの悪い事例が書いてありました。三菱重工業の美浜の問題、配管の刻印問題、2つ目が東芝の流量計の試験データの改ざん、3つ目が日立製作所の浜岡のタービンの破損、この3つの事例がありました。メーカとして原子力を足元から支える基盤が崩れているのではないかと、日経新聞に載っていました。日経新聞の社説に取り上げられるということは、原子力を支えるわれわれメーカの危機ではないかと感じております。特に原子力は、製品を良くすることだけでなく、お客様と社会から見て、本当に原子力が安心して作れる組織、高砂製作所の組織であるのかということが要求されているのではないかと思います。しかも、それがきちんと説明できる責任、アカウンタビリティが求められています。これがわれわれの課題であると思います。確実に時代は変わっています。製品だけ良いのではなく、一歩踏み込んで、製品を作れる組織ができているのか、またそれをきちんと説明できる説明責任のある組織なのか、この事が要求されています。われわれ、企業として営業していく上で基本的なスタンスは、誠実、透明であるということで、世の中の人間としての当たり前の正しく正直にやっていく、これが全てのベースではないかと思います。会社のため、よかれと思ってデータを変えるということを、排除していかなければ生き残れません。新しい原子炉をアメリカ、中国に出そうと思いますので、みなさんの会社での生活、個人の生活ともに誠実、正直をベースに営む必要があると考えます。 今日は、貴重な講演を参考にさせていただいて、われわれも未来のある高砂製作所を築き上げていきたいと切に思います。」 とのごあいさつを頂きました。

ご挨拶の後、日本原子力技術協会から活動状況を紹介し、引き続き、NPO法人 科学技術倫理フォーラム 代表 杉本 泰治様から「原子力業の倫理と説明責任について」と題してご講演頂きました。

講演では、

杉本 泰治 様

1.科学技術に携わる者の倫理
(1) なぜ倫理か
米国で、 20 世紀前半にプロフェッショナル・エンジニア (PE) 制度が生まれ、やがて「公衆優先」の技術者倫理が明らかになった。安全確保の潮流のなかでとらえると、その意義が見える。 技術者は、社会から、科学技術を人間生活に利用する業務を行なう権限を授けられ、条件として、社会規範(=法と倫理)を順守する(=コンプライアンス)義務を負う。

(2)公 衆
科学技術が進歩し大量生産・大量消費の時代、いわゆる消費者は、科学技術のことがよくわからずにその影響を受け、危害にさらされる。そういう立場の人たちを、公衆という。

2.原子力業の倫理・安全文化・説明責任
もんじゅナトリウム漏れ事故(1995)、使用済燃料輸送容器データ改ざん問題(1998)、JCO臨界事故(1999)、東京電力トラブル隠し(2002)、関西電力美浜配管破損事故(2004)、という発生順に、行政庁ないし原子力安全委員会の調査報告を検討すると、考え方の筋道と問題点が見えてくる。

3.組織のなかの個人
国鉄名古屋ブルートレイン激突事故(1982)、JR尼崎脱線事故(2005)を比べる。労務管理の違いにかかわらず、共通する何かがある。一般論として、科学技術の産物に、組織が関わり、事故・不祥事の発生には、組織のなかの個人の意識が決定的に関わる。

4 倫理への指向を妨げるもの
倫理は、どの企業でも一様に作用したり、同じ働きをするものではない。倫理が機能するには条件がある。もし、原子力業に倫理への指向を妨げるものがあるとしたら……(仮説)。
@ データベース型知識の集積
A 公衆と原発反対派の識別不全
B 防御的、内向的、閉鎖的な風土

5.倫理とは何か
(1) モラル・倫理
技術者は通常、してよいことと、してはいけないことの区別がつき、そのように行動しようという意識(=モラル)がある。倫理の形骸化は、どのようにして起きるか。
(2) コミュニティと風土
人は、社会の一員であると同時に、いくつかのコミュニティに属する。企業もコミュニティの一つであり、経営者と従業員が、共通の目的のもとに集まり、互いに(多少なりと)信頼し(多少なりと)対話できる関係にある。そういうコミュニティの対話が、いわゆる“風通し”を良くし、情報の共有を生む。コミュニティの風土が、個人の意識や行動に及ぼす影響は大きい。そこに倫理を取り込むようにすれば、倫理は機能する。

6.倫理の方法を求めて
コミュニティに倫理を定着させる方法があるとよい。確信的な経営者が企業内の倫理に成功している例は少なくないが、移植可能なシステムにはなっていない。学生対象のものは、必ずしも企業向きでない。講演やセミナーで片付くことではなく、自助努力を必要とする。
@ 読み物 の効用
A グループでケース・スタディに取り組むことの意義

7.結 語

との貴重なお話を頂きました。

講演会終了後のアンケートでは、
●品質管理の歴史、及びそれが戦後日本に導入された経緯等大変興味深かった。PEという資格は、その成り立ち時から倫理規範に寄って立っている。米国に於いてPE個人の責任として規定された倫理が、日本では組織がリードする Safety Culture に置き換えられ、個人の倫理責任が忘れられた点、両国の文化の違いとして興味深い。ルール、労務管理をいかに厳しく作り上げても結局人を大切にしなければ、健全な企業活動は育たない。大変分かり易い説明でした。

●エンジニアとして持つべき倫理観を聞いて、自分の置かれている立場を再認識しました。倫理向上のために意識あることを継続していきたい。非常に有意義であった。社会の信頼を保持するために尽力していきたい。

●当講演については常々思っていた事の再認識が出来たことで非常に有意義であったが、それ以上に原子力に限らず、日常の安全について少し考えさせられた良い講演となった。一般的な大きな話となるが、安全はやはり「人」であるとの認識を忘れてはならない。安全文化は解るが、その前に各個人が倫理が良く理解されていなければならない。その意味で、学校教育の場で倫理を話し合う物は重要と思う。各企業社会では、かなり教育がうるさく言われ、このような講演も受ける機会があるが、各個人はそうではない。自動車事故がなくならないのは、やはり個人の倫理観が無くなっているからと考える。

などのご意見がありました。

安全情報交換会

(1)取組み紹介と意見交換

安全情報交換会の様子

安全情報交換会では、鞄立製作所 電力グループ 日立事業所 原子力製造部 部長 南 雄彦様においでいただき、「安全キャラバン良好事例紹介:日立原子力のモノづくり活動の取組み」(安全を全てに優先させること)について詳しくご紹介頂きました。
 また、三菱重工業梶@高砂製作所 工作部 佐郷 昭博様より「原子力安全品質向上プロジェクト 工作分科会」、また、三菱重工業梶@高砂製作所 総務部 教育推進課 柘植 雅則「高製の技術・技能教育とリーダーシップ強化について」紹介がありました。 紹介の後、上記の活動や取組みについて情報や意見の交換を行いました。

(2)その他
日本原子力技術協会 NSネット事業部の有する原子力安全文化醸成に関するデータベースなどについて紹介しました。

以 上

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