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松尾 太加志 氏 |
講演では、
●なぜヒューマンエラーを起こすのか?
人間は、現実世界に適応的に生活している動物である。進化の歴史を考えると、細かな正確さが要求されるような環境で生活してこなかったため、正確さよりも効率を優先させており、正確で論理的な行為や決定ができるはずはない。そのため、エラー(ヒューマンエラー)を起こすのは人間の基本的特性である。ヒューマンエラーが問題になるのは、@人間がエネルギーの大きな道具や機械を操作するにようになった、A分業がなされ、情報伝達がうまくいかなくなったためである。つまり、人間個人の問題ではなく、情報を伝達するしくみやモノの問題である。
●ヒューマンエラーの防止対策
ヒューマンエラーを防止するには、エラー発生そのものを低減させるエラーレジスタントなアプローチと、エラーが発生しても事故に至らないようにするエラートレラントなアプローチが必要である。エラー低減のためには、作業機会自体を少なくすること、わかりやすい作業にすること、情報を共有する
ことが必要である。事故に至
らないようにするためには、エラーであることに気づかせる外的手がかりのしくみを作ることが大切である。外的手がかりとしては、対象、表示、ドキュメント、人の4要素が考えられ、それらの利用可能性、実現可能性を考慮した安全システムの構築が必要となる。
個人としては、作業スキル向上、リスク認知を高める、専門的知識を高めることが必要だが、さらに、安全文化のために何を理解すべきかを共有することが大切である。
●安全文化の確立に向けて
安全文化の確立には、組織としての取り組みが必要である。個人の行動は、個人の利害に依存するため、安全行動はコストとして受け取られ、かりに注意などが喚起されても、永続的な安全行動にはつながらない。組織として、安全行動の社会規範を形成することが必要である。しかし、例外規定が存在していたり、遵守することにコストがかかってしまうと、遵守されないことが規範として確立してしまう。
安全なシステムを確立するには事故やヒヤリハットを教訓としなければならない。事故当事者を罰したり、解雇したりすることによって問題解決を図るのではなく、事故原因を明らかにし、事故防止を目指し、事故を今後の学習に活かすことが必要である。むしろ、事故当事者を免責にし、 事故原因を究明し、将来発生するかもしれない多くの犠牲を防いで公共の利益につながるようしなければならない。
などの貴重なお話を頂きました。 |