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2003年2月10日

第28回相互評価(ピアレビュー)に参加頂いた
第三者オブザーバーのご意見・ご感想について

 2002年12月3日及び12月18日から20日の間で原燃輸送(株)六ヶ所輸送事業所(青森県六ヶ所村)及び本店(東京都港区)に対して実施した第28回ピアレビューにおいて、NSネットの会員外から東京大学大学院 教授である古田一雄氏に三日間(12月3日、18日及び19日)にわたりオブザーバー参加頂きました。その際のご意見・ご感想が以下の通り取りまとめられましたので、ご紹介致します。
1.はじめに
 

JCOの事故以来、このような事業者による自主的な安全活動は重要である。発電所点検データ不正問題もあり、規制強化に向かっている傾向があるが、単なる規制強化では安全の向上につながらないと考えており、日本原子力学会ヒューマンマシンシステム研究部会でも同様の声明を出した。無意味な規制をやめるとするならば、このような事業者主体の安全活動が重要であると考えており、NSネットの活動には注目している。
今回、オブザーバーという形で参加させていただき、個人的にも非常に参考になった。

2.今回のピアレビューについての感想

オープニングを確認するオブザーバー(左端)
 

 

(1) オープニングについて
  ホストからの会社概要説明の後、特に質疑の時間を設けておらず、レビューチームからも経営に関する質問がなかったため、経営に関することはピアレビューの限界かとオープニング時は感じたが、その後のレビューをオブザーブしていると経営計画等までも突っ込んだ議論があったので、オープニングとしてはこれでよいのではないかと思う。

 

書類確認状況を確認するオブザーバー(中央奥)

 (2) 書類確認について
   書類確認は内部監査や審査等でホスト側、レビュー者側共に経験があり、お互いに慣れているので淡々と進んでいた。
  ホスト側から事前に提出されていた資料もあり、レビュー者も事前に確認されていたようであるが、これだけ多くの資料の詳細をレビューでじっくりと確認するには更に多くの時間が必要であり、これ以上、レビュー期間をのばすとレビュー者もホストも負担が大きいので、現状が妥当であると感じた。しかし、2巡目以降はポイントを絞ってレビューする等の工夫が必要ではないかと思う。
  組織管理は安全文化の根幹であり、レビューが検査レベルでハードだけ見ていても意味がない。その点、今回のレビューでは深いところまでしっかりとレビューされていた。また、ホスト側も相応し、経営計画までも広くオープンにしていたことには驚いた。

 また、データ改ざんのようなホットイシューは書類確認、面談の何れか一方にはなじまないので、両者の中間的なレビュー方法があればよいのではないかと思う。
緊急時対応について、システマティックに行うための基本は、マニュアル類を整備し、訓練もきっちり行い、事前に備えておくことである。しかし、現実に問題が起こったときにはマニュアル通りに進まないので、その時々の判断が重要となってくる。マニュアルだけでなく、判断の責任体制をしっかりしておくことが必要である。原燃輸送における輸送業務の特殊性として、荷主電力、日本原燃、関係会社等の複数の会社が関係しており、緊急時にはそれらの企業と協議を行い、関係省庁、自治体等に通報・連絡するとのことであるが、協議をしていると時間がかかるので、マニュアル通りにいかない緊急時には、独断で判断するケースも発生するだろう。従って、事故時にどこが責任を持つのか十分注意しておくことが必要である。
ピアレビューから話は逸れるが、マスコミ対応については、早くプレスをしてわからないことが多いと非難される一方、時間をかけ真相究明してからプレスをしても遅いと非難される。マスコミに対しては信念を持って対応していくしかないと考える。

 
 

(3) 面談について
  社長/専務のトップとの面談と担当者との面談の両方をオブザーブしたが、トップの考え方とそれを受けて担当者がどう仕事をしているかをインタビューすることのは重要であり、レビューに不可欠な項目であると感じた。ただ、質問内容についてマニュアルができているようだが、今後質問内容を進化させていってほしい。
  経営トップとの面談では質問も回答も一般論に流れていたという印象を持ったので、もっと具体的な経営理念やトップとしての行動を聞き出せるよう質問を工夫したほうがよい。2日目の担当者との面談は質疑が具体的でポイントが絞られており非常に良かった。が、1日目の担当者との面談では、質問内容がストレートすぎるように感じた。「手順書を守って業務を行っていますか?」と質問されて、たとえ守っていなかったとしても、「守っていません。」とは答えにくい。例えば、「手順書の改訂に手間がかかりますか?」等、手順書逸脱の背景になり得る要因を少し遠回しに聞くことから始めると、問題点が透けて見えてくるのではないだろうか。
  このように経営トップの方針を担当者がどこまで理解し、実行しているかを確認することは安全マネージメントで重要な部分であり、不可欠である。

(4) 現場確認及びヒューマンエラー防止策について
  ヒューマンエラー防止策については現場確認時にホスト側が個々の対策を詳しく説明する形であったため、今回のレビューは検査レベルになってしまっていたように感じた。ヒューマンエラー防止策については原子力関連企業であれば現状で個々の対策はきっちりなされているはずなので、むしろPDCAが回る仕組みがシステムとして確立されているかをもう少し詳しくレビューしたほうがよかったのではないだろうか。
 

面談の状況を確認するオブサーバー
(左から3人目)
現場観察状況を確認するオブサーバー
(右端)

 

3.全体を通しての感想

(1) ピアレビューについての意見
  六ヶ所での現場レビューも含めて、レビュー者は自社での経験を参考にレビューされており非常に良かった。状況や背景を知らずに形だけを見るのではなく、自社での実態に基く地に足がついた有益な意見交換が行われていたと思う。現場の実態を踏まえたレビューはNSネットのピアレビューの良いところだと思う。
  全体的に、レビューを行うレベルを明確にするべきである。すなわち、NSネットのピアレビューは監査レベルで実施しているものと認識しているが、時として監査レベルなのか検査レベルなのか境界が曖昧であるように感じた。監査レベルでレビューするならば、リスクマネージメントのPDCAが適切にサイクルしているかというチェックとなり、検査レベルでのレビューは、現在の規制当局が行っているような個々の処置が適切であるかどうかということなる。NSネットとして原子燃料サイクルの輪に係わる企業同士でのレビューシステムを確立してもらいたい。
  また、レビューのレベルと共にどの程度の厳格さを期待するかについての考え方も重要である。ピアレビューは情報交換に近いところで行っているため、組織管理等までレビューすることが出来るという特質がある。しかし、一方では情報交換と言ってしまうと外部から見れば馴れ合いともとられかねない。その背景には(ピアレビューの位置づけが充分理解されていないことから)、ピアレビューを受けた企業には不正はないというような過剰な期待があるのではないだろうか。例えば JCO事故後には、抜き打ち検査を実施すれば不正は見抜けるというような誤った意見があったが、外部からでは抜き打ち検査をやってしても、あるいはかなりの時間をかけて監査をしても不正を見抜くことは難しい。規制、監査、ピアレビューなど何れもする側と受ける側が適度な緊張感を持ち、自主的な不正防止のための努力が必要である。従って、ピアレビューには不正の摘発といった直接的効果ではなく、適度な緊張感を会員企業に持たせて安全レベルの向上につなげるという間接的な効果以上を期待することには無理がある。
  現在のピアレビューのやり方が完全なものではないかもしれないが、形だけ見ているのではなく実質的なレビューとなっていて、進んだ取り組みであると思う。一般的には他社から立ち入られたくないような組織管理プログラム等まで議論を行っており、ホスト側の企業カラーもあるとは思うが、事業者同士のレビューだからこそ出来ることだと思う。このように事業者同士でピアレビューを行うというシステムがうまく機能することが重要であると思う。

(2) その他
  2巡目以降のピアレビューでは費用対効果の最適化、レビュー者の眼力及びスキルの維持、レビュー者の養成・確保が重要課題であろう。レビュー者が権威のある資格で、尊敬され、広く認められるようになればレビューもやりがいがあるものになる。レビューに熟練した経験者がサポータ組織を作るなどピアレビューのシステムに磨きをかけ、原子力界が安全に努力している誠意を見せていけば、時間がかかるかもしれないが、いずれ認められていくのではないだろうか。
  原燃輸送の事業である輸送業務は発電等に比べるとあまり世間の注目を浴びていない分野ではあるが、今回、オブザーバーとして参加し、安全に対して非常に手間、時間、費用をかけていることがよくわかった。このような取り組みを行っていることを社会にわかってもらうためにも、ピアレビューは重要な役割を担うものである。
  現状の原子力の置かれている社会的立場では、ひたすら安全に配慮している誠意を態度として見せるしかないと考えており、ピアレビューが有用な社会システムになることを期待している。

 

4.オブザーバー:古田 一雄(ふるた かずお)氏

(1) 参加ピアレビュー(レビュー対象)
     第28回ピアレビュー(原燃輸送(株)本店及び六ヶ所輸送事業所)

(2) 参加スケジュール
     2002年12月3日及び12月18日から20日のレビュー期間中のうち、
     12月3日、18日及び19日の三日間

(3) プロフィール

  ・職   業:東京大学大学院 教授

  ・主なご経歴:1981年 東京大学工学部原子力工学科卒業
           1986年 東京大学大学院工学系研究科原子力工学専攻博士課程を
            修了(工学博士)。同年(財)電力中央研究所担当研究員に
           1987年 東京大学工学部講師
           1989年 東京大学工学部助教授
           1999年 東京大学新領域創成科学研究科教授
           1983年 アルゴンヌ国立研究所客員研究員
           1989年 エジンバラ大学人工知能学科客員研究員

           ヒューマンインタフェース学会、人工知能学会、日本原子力学会、
            計測自動制御学会、電気学会、ANS等会員。

・主な論文: 古田一雄他、プラント運転操作訓練支援システムのための学習者モデル構築手法、人工知能学会誌、13巻、5号、811-821、1998. 古田一雄他、運転員認知モデルを用いたプラント異常診断認知過程、日本原子力学会誌、38巻、1号、65-74、1996. K. Furuta, S. Kondo, An Approach to Assessment of Plant Man-Machine Systems by Computer Simulation of an Operator's Cognitive Behavior, Int. J. Man-Machine Studies, Vol.39, 473-493, 1993.
   ・著   書: 古田一雄著「プロセス認知工学」海文堂、1998.
           E. ホルナゲル著、古田一雄監訳「認知システム工学」海文堂、1996

以上


 


【用語解説】 ・ピアレビューの位置づけ:会員の専門家により構成したチームにより、会員の事業所の原子力安全に関する取り組みを、現場観察及び書類審査、面談などの意見交換を通して専門的立場から評価し、課題や良好事例を抽出することによって、会員の自主的な安全推進活動の向上に寄与する活動
 

 

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