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2002年7月24日から7月26日にかけて、茨城県日立市の(株)日立製作所日立事業所において第24回の相互評価(ピアレビュー)を実施しました。
その概要は以下のとおりです。
1.対象事業所(所在地)
株式会社日立製作所 日立事業所(原子力事業部) [茨城県日立市] |
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2.事業所の概要及びレビュー対象
(株)日立製作所の原子力事業では1954年に原子力の開発に着手以来、多数の沸騰水型軽水炉(BWR)及び改良型BWR(ABWR)プラントの開発・設計・製作・検査・据付から運転支援、アフターサービスが行われるとともに、新型炉や原子燃料サイクル分野での技術開発やシステム設計・製作などが行われている。同社では、これらの業務を原子力事業部が担当し、ほぼ据付現場関係以外を日立事業所内で対応している。本レビューでは、同事業所における原子力事業部の安全推進活動を対象とし、製造現場は原子力機器生産の中心工場である「臨海工場」を対象とした。
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3.レビューチームの構成およびレビューの方法
Aグループ
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:日本原子力発電(株)、日立造船(株)
(レビュー分野:組織・運営、教育・訓練、重要課題対応(協力会社との協調、品質保証)) |
Bグループ
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:(財)電力中央研究所、NSネット事務局
(レビュー分野:設計・製造、重要課題対応(協力会社との協調、品質保証を除く)) |
レビュー方法 |
:上記分野について、現場観察、関係者との面談および書類確認 |
(株)日立製作所日立事業所臨海工場 全景
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現場観察状況
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4.レビュー結果
(1)主な結論 |
- 今回の本事業所(原子力事業部)に対するレビュー結果を総括すると、原子力安全の面で直ちに改善措置を施さなければならないような事項は摘出されなかった。
- 日立製作所の創業の精神である、「和」、「開拓者精神」及び「誠」、並びに法と正しい企業倫理に基づく行動等を謳った企業行動基準が定められ、長い歴史を経て、全従業員に受け継がれている状況が確認された。特に、安全文化醸成の基盤とも言える「落穂拾いの基礎観念」及び「落穂の精神」が、新たな経験を反映し、その内容を多くの読本や信頼性教育テキストに追加するなど、常に進化している状況を基本とし、さらに過去の教訓に対しても「基本と正道の日」を定めるなど、それらを風化させることなく継続した安全文化醸成の活動が行われている。
- これらの活動の継続には、トップ自らが率先垂範して取り組んでいることが確認された。事業部長と従業員との直接対話による双方向のコミュニケーションの実践など、トップの強力なイニシアティブのもとで事業活動を従業員が一体となって推進している。
- 教育面では、OJT を重視し、特に、若手技術者にはトラブル発生時の原因究明や再発防止策の検討等一連のトラブル対策への参加や現地業務の経験によって教育効果を上げている。また、技能の蓄積・伝承の観点から工匠・工師制度を設け従業員の指導にあたるとともに、従業員の技能向上心を高め、やる気を起こさせている。
- 業務の遂行に必要なトラブル事例や設計管理等の情報は、IT 技術を十分に活用した情報システム群が構築され従業員全員が有効に使用し、業務の正確さと迅速さに大きく貢献している。
- 本事業所(原子力事業部)は、現状に満足することなく、なお一層の安全文化の向上を目指して更なる自主努力を継続していくことが望まれる。
- また、今回のレビューで得られた成果が、本事業所(原子力事業部)より、原子力プロジェクト体制に関係するその他の事業部に、さらには協力会社に対しても展開されることが期待される。
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(2)良好事例及び改善提案 |
今回のレビューにおいて、NSネットの他の会員さらには原子力産業界に広く紹介されるべきいくつかの良好事例を見出した。一方、本事業所の安全文化をさらに向上させるためのいくつかの提案を行った。
良好事例*1と改善提案*2 の一覧は次のとおり。 |
○「良好事例」
レビュー分野
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良好事例の概要
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T 組織・運営 |
・トップの率先垂範と従業員との双方向コミュニケーションの実践
・BSCシステムとパフォーマンス指標の活用による効果的な業務管理
・電子「ご意見箱」の活用による風通しの良い組織風土醸成活動 |
U 教育・訓練 |
・過去のトラブル事例における再発防止策の現場教育と教育時の工夫
・優秀技能者の重用や「技能五輪」への参加等による技能向上心の高揚 |
V 設計・製造 |
・設計部門の情報伝達・設計管理のIT化
・設計・製造・品質保証部門の要員が一体になった改善活動
・製造作業者が自発的に作業指示内容を遵守するための工夫 |
W 重要課題対応 |
・基本と正道の日の設定と継続的取り組みによる風化防止
・公開実演会を通じた安全作業の再確認と定着化
・幅広いヒューマンエラーの防止活動
・新設備導入時の専任安全員による安全確認
・「QFプラント委員会」活動による製品品質の向上 |
注)太字は代表的な良好事例
○「改善提案」
レビュー分野
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改善提案の概要
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U 教育・訓練 |
・ヒヤリハット事例集のデータベース化 |
V 設計・製造 |
・現場掲示類のより効果的な配置の検討
・改善活動情報のより一層のグループ間共有化 |
5.相互評価報告書
相互評価報告書本文及び参考図は、こちらをご覧下さい。
●相互評価報告書本文(PDF形式:283KByte)
●参考図
6.その他
航空産業の専門家である渡利邦宏氏(元 日本航空 品質保証部長)のオブザーバー参加を実施。(オブザーバーのご意見・ご感想の取りまとめ結果は、別途NSネットのホームページにて公表しています。)
以 上
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*1良好事例
当該事業所の安全確保活動のうち、的確かつ効果的で独自性のある手法を取り入れている事例であって、NSネットの会員さらには原子力産業界に広く伝えたい、優れた事例を示したもの。
*2改善提案
原子力の安全性を最高水準へと目指す視点から、原子力産業界でのベストプラクティスに照らして、当該事業所の安全確保活動をさらに向上・改善させるための提案などを示したもの。そのため、現状の活動が原子力産業界の一般的な水準以上であっても、改善提案の対象として取り上げる場合がある。 |
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