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2002年6月19日から21日にかけて、兵庫県神戸市の三菱重工業株式会社 神戸造船所に対して相互評価(ピアレビュー)を実施しましたが、7月31日にその結果を取りまとめた報告書を三菱重工業株式会社に提出いたしましたのでお知らせします。
この結果については、全文をNSネットのホームページに公表しております。
その概要は以下のとおりです。
1.対象事業所(所在地)
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2.事業所の概要
三菱重工業鰍フ原子力事業では、1957年に加圧水型軽水炉(PWR )の開発に着手以来、多数のPWR発電プラントの開発・設計・製作・検査・据付から運転支援、アフターサービス、さらには、新型炉、核燃料サイクル分野での様々なシステムの開発・設計・製作が行われている。
今回レビューを行った三菱重工業鰍フ神戸造船所(以下「本造船所」という。)は1905年に操業を開始し、現在、本工場、二見及び鯛尾の3工場を有し、船舶、鉄構、環境保全機器、原動機・原子力等の各種製品を生産している。原子力関係については、その設計・製造・据付・アフターサービスなどの業務を行っており、三菱重工業鰍フ原子力事業において、本造船所はその中核となる事業所である。
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3.レビューチームの構成およびレビューの方法
Aグループ
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:東京電力(株)、原燃輸送(株)
(レビュー分野:組織・運営、教育・訓練(資格認定関係を除く)、重要課題対応) |
Bグループ
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:日本原子力研究所、NSネット事務局
(レビュー分野:教育・訓練(資格認定関係)、設計・製造) |
レビュー方法 |
:上記分野について、現場観察、関係者との面談および書類確認 |
三菱重工業(株)神戸造船所 全景
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現場観察(三菱原子力研修センター)
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4.レビュー結果
(1)主な結論 |
- 今回の本造船所に対するレビュー結果を総括すると、原子力安全の面で直ちに改善措置を施さなければならないような事項は見られなかった。
- 原子力安全については、「安心感」を得ることが重要である。その一助となるべく、本造船所においては、所長をはじめ所員が協力会社も含め真剣かつ誠実に諸活動へ取り組んでいることが確認された。
- すなわち、本造船所では、わが国の原子力産業における原子力施設の設計・製造事業所の中核の一つであるという自覚のもと、原子力の重要性・危険性を十分に認識した上で、原子力施設の設計、製造、据付及び試運転における「確実な物造り」並びに施設運転開始後の「的確なアフターサービス」を行うことが基本と考え、各論に示すような諸活動を実践している。
- さらに、安全に関する行動認識として、「技術的良心に恥じないこと」を基本におき、「コンプライアンス(法令遵守)及び倫理観を持った行動が不可欠」というポリシーであることは評価されるものと考えられる。
- 今後、本造船所は、現状に満足することなく、なお一層の安全文化の向上を目指して更なる自主努力を継続していくことが望まれる。
- また、今回のレビューで得られた成果が、本造船所より、三菱重工業鰍フ原子力事業全体、さらには協力会社に対しても展開されることが期待される。
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(2)良好事例及び改善提案 |
今回のレビューにおいて、NSネットの他の会員さらには原子力産業界に広く紹介されるべきいくつかの良好事例を見出した。一方、本事業所の安全文化をさらに向上させるためのいくつかの提案を行った。
良好事例*1と改善提案*2 の一覧は次のとおり。 |
○「良好事例」
レビュー分野
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良好事例の概要
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T 組織・運営 |
・安全衛生管理者のワッペン表示による意識付け
・有効な現場パトロールの実施
・企業倫理に関する積極的な取り組み
・一般住民への効果的な原子力PAの推進 |
U 教育・訓練 |
・きめ細かい力量評価に基づく適正な要員の配置
・「技監」、「範師」の資格認定制度の導入とその活用
・定期検査工事従事者の資格認定制度
・ナレッジマネージメントシステムの構築による技術伝承の強化
・定期検査工事従事者教育における作業手順を動画化したCAI教材の活用 |
V 設計・製造 |
・設計・製造の計画管理のシステム化
・設計マニュアルの確実な整備のための工夫
・確実な作業工程管理による製造マニュアルの遵守
・体系的TPM活動による自主保全活動と個別改善活動の展開 |
W 重要課題対応 |
・調達先等協力会社との良好な意志疎通
・他分野との交流による情報交換
・「トラブル支援システム」の開発、試運用開始
・有効なトラブル予知注意事項集の活用 |
注)太字は代表的な良好事例
○「改善提案」
レビュー分野
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改善提案の概要
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T 組織・運営 |
・会社方針の具現化に対する更なる工夫 |
V 設計・製造 |
・「シミュレータセンター」活用による原子力安全意識の高揚 |
W 重要課題対応 |
・調達先も含めた協力会社社員の個人の意見・要望の募集 |
5.相互評価報告書
相互評価報告書本文及び参考図は、こちらをご覧下さい。
●相互評価報告書本文(PDF形式:249KByte)
●参考図
以 上
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*1良好事例
当該事業所の安全確保活動のうち、的確かつ効果的で独自性のある手法を取り入れている事例であって、NSネットの会員さらには原子力産業界に広く伝えたい、優れた事例を示したもの。
*2改善提案
原子力の安全性を最高水準へと目指す視点から、原子力産業界でのベストプラクティスに照らして、当該事業所の安全確保活動をさらに向上・改善させるための提案などを示したもの。そのため、現状の活動が原子力産業界の一般的な水準以上であっても、改善提案の対象として取り上げる場合がある。 |
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