2002年1月30日
N S ネ ッ ト |
2001年12月11日から13日間にかけて、茨城県那珂郡東海村の住友金属鉱山(株) エネルギー・環境事業部 技術センターに対して相互評価(ピアレビュー)を実施してきましたが、1月28日にその結果を取りまとめた報告書を住友金属鉱山(株)に提出いたしましたのでお知らせします。
この報告書については、全文をNSネットのホームページにて公表しております。
その概要は以下のとおりです。
1.対象事業所(所在地)
住友金属鉱山(株) エネルギー・環境事業部 技術センター(茨城県那珂郡東海村) |
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2.事業所の概要及びレビュー対象施設
技術センターでは、原子燃料再処理の溶媒抽出工程に係わるパルスカラム(脈動抽出塔)関連技術開発を軸に、原子燃料サイクルにおける各種の試験研究業務に取り組んでいる。同社の基幹事業である非鉄金属製錬で培った溶媒抽出技術、高温製錬技術をベースに、今後とも原子力分野での既存技術の高度化や新エネルギー・環境分野の新規技術開発に取り組むこととしている。 |
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3.レビューチームの構成及びレビュー方法
第1グループ
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:電源開発(株)、日立造船(株)
(レビュー分野:組織・運営、緊急時対策、教育・訓練) |
第2グループ
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:日本原子力発電(株)、東京電力(株)、石川島播磨重工業(株)
(レビュー分野:運転・保守、放射線防護、重大事故防止) |
レビュー方法 |
:上記分野について、現場観察、関係者との面談及び書類確認 |

技術センター外観
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現場観察
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4.レビュー結果
(1)主な結論 |
- 住友金属鉱山(株) エネルギー・環境事業部 技術センターに対するレビュー結果を総括すると、原子力安全の面で直ちに改善措置を施さなければ重大な事故の発生に繋るような項目は見出されなかった。 技術センターは、JCO事故後数ヶ月間にわたりJCOを支援して事故収拾の取り組みに参加した経験を踏まえて、安全確保のための活動に際し、センター員一人ひとりが「なぜ行わなければならないのか」を理解し、また「自分がやらなければ」との自覚を持って取り組んでいることが確認された。 特に、技術センター長の「安全を確保し、地域社会と共存できなければ、事業は存続できない。また、安全の継続的向上こそが、全ての業務のベースにある。」との考えの下、@施設の安全管理、A全社的な取り組みであるリスクマネジメントやISO14001認証・維持活動、及びB安全への取り組みがごく自然にできる風土づくりを目指した諸活動、などを展開して、原子力安全確保を強化していくために、技術センターが一体となって真剣に取り組んでいる実態が確認された。
- 技術センターは、現在センター員個々が有する安全追求への自覚を維持しつつ、またその伝承に配慮しながら、なお一層の安全文化の醸成を目指してさらなる自主努力を継続していくことが望まれる。
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(2)良好事例及び改善提案 |
今回のレビューにおいて、NSネットの他の会員さらには原子力産業界に広く紹介されるべきいくつかの良好事例を見出した。一方、本事業所の安全文化をさらに向上させるためのいくつかの提案を行った。
良好事例*1と改善提案*2 の一覧は次のとおり。 |
○「良好事例」
レビュー分野 |
良好事例の概要 |
T 組織・運営 |
・自主的に定めた『保安管理規定』による核燃料物質保安活動
・危険のポイントや想定トラブル対応策を含む作業毎の「安全管理計画書」の作成
・「安全衛生カード」の積極的な活用による安全意識の維持・向上
・企業再生計画に基づいた全社的なISO14001認証取得への取り組み
・リスクの洗い出しと重要事象の絞込みによるリスク認識の共有化
・災害関連データベースの全社的運用 |
U 緊急時対策 |
・毎朝の「緊急対策本部」要員の在/不在チェックとその周知
・通報マニュアルの作成と通報連絡装置近くへの実務的な配備 |
V 教育・訓練 |
・資格取得の奨励と良好な取得実績 |
W 運転・保守 |
・文書・手順書の重要度等に応じた区分による体系的な運用
・化学物質(薬品)のデータベース化による購入・保管等の管理の一元化 |
X 放射線防護 |
・管理区域入域者を居室から確認できる自社開発の「入退域管理システム」の運用 |
Y 重大事故防止 |
・自主的な防火推進責任者の選任による適正な防火体制と管理 |
○「改善提案」
レビュー分野 |
改善提案の概要 |
T 組織・運営 |
・上位/下位規定間の関連づけによる規定類の位置づけの明確化
・ リスクの更なる詳細評価による対応策の万全化 |
W 運転・保守 |
・設備・機器点検時の不適合事項に対する"対処要領書"の制定
・固体廃棄物置き場の表示や区画の改善による分別管理の徹底 |
Y 重大事故防止 |
・夜間・休日の火災発生を想定した警備員への防火教育の検討 |
注)太字は代表的な良好事例と改善提案
5.相互評価報告書
相互評価報告書本文及び参考図は、こちらをご覧下さい。
●相互評価報告書本文(PDF形式:419KByte)
●参考図
以 上
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*1良好事例
当該事業所の安全確保活動のうち、的確かつ効果的で独自性のある手法を取り入れている事例であって、NSネットの会員さらには原子力産業界に広く伝えたい、優れた事例を示したもの。
*2改善提案
原子力の安全性を最高水準へと目指す視点から、原子力産業界でのベストプラクティスに照らして、当該事業所の安全確保活動をさらに向上・改善させるための提案などを示したもの。そのため、現状の活動が原子力産業界の一般的な水準以上であっても、改善提案の対象として取り上げる場合がある。 |
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