2001年11月19日
N S ネ ッ ト |
NSネットでは、2001年10月16日から19日までの4日間、中国電力(株)島根原子力発電所に対して相互評価(ピアレビュー)を実施しましたが、11月16日にその結果をとりまとめた報告書を中国電力(株)に提出しましたのでお知らせします。
この報告書については、全文をNSネットのホームページにて公表しております。
その概要は以下のとおりです。
1.対象事業所(所在地)
中国電力(株) 島根原子力発電所 (島根県八束郡鹿島町) |
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2.事業所の概要及びレビュー対象施設
本発電所は、日本で5番目の原子力発電所サイトとして建設され、沸騰水型軽水炉(BWR)2基を運転中である。1号機(電気出力46万kW)は、国内原子力機器メーカとの共同研究による国産第1号であり、1974年3月に営業運転を開始し、運転実績における発電時間は日本のトップクラスの長さとなっている。2号機(電気出力82万kW)はさらに改良型格納容器・制御棒駆動の高速化などを採用し、1989年2月に営業運転を開始している。2000年12月には本発電所の累計発電電力量が1500億kWhに達している。
号機 |
電気出力
(MW) |
炉形式 |
営業運転
開始年月 |
運転実績(累計)(2001年9月末現在) |
発電電力量
(億kWh) |
発電時間
(時間) |
設備利用率
(%) |
1 |
460 |
BWR |
1974年3月 |
798 |
176,345 |
71.9 |
2 |
820 |
BWR |
1989年2月 |
778 |
95,539 |
85.7 |
合計 |
1,280 |
− |
− |
1,576 |
271,884 |
78.1 |
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3.レビューチームの構成及びレビュー方法
第1グループ
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:住友金属鉱山(株)、中部電力(株)
(レビュー分野:組織・運営、緊急時対策、教育・訓練) |
第2グループ
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:九州電力(株)、日揮(株)
(レビュー分野:運転・保守) |
第3グループ |
:原子燃料工業(株)、NSネット事務局
(レビュー分野:放射線防護,重要課題対応) |
レビュー方法 |
:上記分野について、現場観察、関係者との面談及び書類確認 |
島根原子力発電所
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現場観察(新燃料受入検査)
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4.レビュー結果
(1)主な結論 |
- 中国電力(株)島根原子力発電所に対するレビュー結果を総括すると、原子力安全の面で直ちに改善措置を施さなければ重大な事故の発生に繋がるような項目は見出されなかった。
- 発電所長をはじめ全発電所員と協力会社社員がイコールパートナーとして一体となり、原子力安全確保を継続・強化していくために真剣かつ誠実に取り組んでいる実態が確認された。また、発電所と協力会社との垣根を無くし、情報交換を活発に行って、小さな安全上の問題点なども真っ先に報告できる風土を構築していることも確認できた。
- 業務運営方針の中で安全・安定運転を最重要課題として位置づけ、目標とする重点実施事項、指標を策定し、着実に運転・保守業務を遂行しており、1995年度以降計画外停止発生のない安定した運転を継続している。
- 業務実施にあたっては現場第一主義を掲げ、安全を最優先し迅速に対応できるよう勇気を持って決断すること、さらなるプラントの安全向上を目指して常に「なぜ」の問いかけを行うことを「安全行動規準」として制定し、安全・安定運転に対する意識付けを徹底している。また、原子力安全のみならずゼロ災活動として、ヒューマンエラー防止活動も積極的に展開している。
- 今後、本発電所は、現状に満足することなく、なお一層の安全文化の向上を目指してさらなる自主保安努力を継続していくことが望まれる。
- また、今回のレビューで得られた成果が、本発電所の協力会社に対しても展開されることが期待される。
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(2)良好事例及び改善提案 |
今回のレビューにおいて、NSネットの他の会員さらには原子力産業界に広く紹介されるべきいくつかの良好事例を見出した。一方、本発電所の安全文化をさらに向上させるためのいくつかの提案を行った。
良好事例*1と改善提案*2 の一覧は次のとおり。 |
○「良好事例」
レビュー分野 |
良好事例の概要 |
T 組織・運営 |
・運営方針徹底のための行動指針等の携帯カード化と所員への配布
・「安全協議会」の改善提案制度による協力会社の積極的な安全確保への関与
・環境放射線データの積極的な提供 |
U 緊急時対策 |
・通報訓練の積み重ねによる通報・連絡方法の習熟度向上 |
V 教育・訓練 |
・設備の異常兆候の発見に寄与する体感装置の有効活用 |
W 運転・保守 |
・適正な運転管理体制維持のための発電課初期教育時の運転実務手帳の活用
・プラントデータの相関評価による異常兆候早期発見への発電課の取り組み
・当直班と発電課長との定期懇談会
・協力会社と一体となった保守体制
・保修部門における持ち回り勉強会の実施
・シュラウド取替工事における周到な準備と発電所内一体となった工事の実践 |
X 放射線防護 |
・各種会合を利用した線量低減策の検討・実施
・線量低減に向けた意識の高揚を図るなどきめ細かな取り組み
・廃棄物低減化の確実な取り組み |
Y 重要課題対応 |
・トラブル事例データベースの有効活用に向けた取り組み
・全員参加の「ゼロ災活動」によるヒューマンエラー対策の掘り起こし
・火災発生時の簡潔な連絡系統
・広域消防本部との実質的な合同救助訓練の実施 |
○「改善提案」
レビュー分野 |
改善提案の概要 |
T 組織・運営 |
・品質保証担当の位置づけの全社大での明確化 |
U 緊急時対策 |
・「緊急時対策組織」の各班の手順書整備
・原子力防災資機材である担架設置場所の放射線レベル表示板への記載 |
V 教育・訓練 |
・運転員に対する認定行為の導入 |
W 運転・保守 |
・運転・保守部門で使用する帳票類のOA化の更なる推進 |
Y 重要課題対応 |
・初心者にも理解しやすい臨界安全管理に関するテキストへの見直し
・『危険物災害予防規程』への追記による危険物施設の担当部署の明確化 |
注)太字は代表的な良好事例と改善提案
5.相互評価報告書
相互評価報告書本文及び参考図は、こちらをご覧下さい。
●相互評価報告書本文(PDF形式:453KByte)
●参考図
以 上
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*1良好事例
当該事業所の安全確保活動のうち、的確かつ効果的で独自性のある手法を取り入れている事例であって、NSネットの会員さらには原子力産業界に広く伝えたい、優れた事例を示したもの。
*2改善提案
原子力の安全性を最高水準へと目指す視点から、原子力産業界でのベストプラクティスに照らして、当該事業所の安全確保活動をさらに向上・改善させるための提案などを示したもの。そのため、現状の活動が原子力産業界の一般的な水準以上であっても、改善提案の対象として取り上げる場合がある。 |
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