2001年11月2日
N S ネ ッ ト |
NSネットでは、2001年9月18日から21日までの4日間、日本原子力研究所 東海研究所に対して相互評価(ピアレビュー)を実施しましたが、10月31日にその結果をとりまとめた報告書を日本原子力研究所に提出しましたので、お知らせします。
この報告書については、全文をNSネットのホームページにて公表しております。
その概要は以下のとおりです。
1.対象事業所(所在地)
日本原子力研究所 東海研究所(茨城県那珂郡東海村) |
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2.事業所の概要およびレビュー対象施設
日本原子力研究所は、原子力分野におけるわが国の中核的な総合研究機関として、1956年に設立された。東海研究所はつづく1957年に設置され、研究用原子炉、安全性研究施設、加速器施設などで、幅広い研究開発を行うとともに、基礎研究、基盤技術の開発を進めており、総合研究センターとしての役割を果たしている。
今回のレビューの対象施設は、「組織・運営」、「緊急時対策」、「教育・訓練」及び「放射線防護(廃棄物関連)」の各分野については東海研究所全体とし、「運転・保守」、「放射線防護(廃棄物関連は除く)」及び「重要課題対応」の各分野については、代表として、研究用原子炉のJRR−3とした。
JRR−3の諸元
名 称 |
JRR−3 |
目 的 |
中性子ビーム実験
燃料材料照射
RI生産 |
型 式 |
低濃縮ウラン軽水減速冷却プール型 |
最大熱出力 |
20,000kW |
炉心の形状・寸法 |
円柱
直径60cm/高さ75cm |
臨界年月 |
1990年3月 |
備 考 |
改造前の炉の臨界は1962年 |
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3.レビューチームの構成およびレビュー方法
第1グループ
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:四国電力(株)、三菱電機(株)
(レビュー分野:組織・運営、緊急時対策、教育・訓練) |
第2グループ
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:東京電力(株)、(株)東芝
(レビュー分野:運転・保守、放射線防護) |
第3グループ |
:(株)グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン、NSネット事務局
(レビュー分野:重要課題対応) |
レビュー方法 |
:上記分野について、現場観察、関係者との面談および書類確認 |

JRR−3建屋全景
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現場観察
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4.レビュー結果
(1)主な結論 |
- 今回の日本原子力研究所東海研究所に対するレビュー結果を総括すると、原子力安全の面で直ちに改善措置を施さなければ重大な事故の発生に繋がるような項目は見出されなかった。
- 東海研究所では、所長をはじめ全職員が一体となって、原子力安全確保を継続・強化していくために真剣に取り組んでいる実態が確認された。
- 東海研究所では、歴史的にも、その位置づけとしても、わが国の原子力研究の最大かつ中核を担う研究機関であるという自覚とその重責を認識し、原子力安全についても、先導的・中心的役割を果たしている。すなわち、その保持している研究力・技術力の資源及び内外の原子力関係の豊富な知見を活かし、原子力安全に関する高い意識作りや原子力技術の継承・向上に大きな努力を払い、わが国の原子力事業者の模範となることへの意識が強く感じられた。
- 今後、東海研究所は、現状に満足することなく、なお一層の安全文化の醸成を目指してさらなる自主努力を継続されることが望まれる。
- 今回のレビューで得られた成果が、東海研究所に留まらず、日本原子力研究所の他の研究所、さらには協力会社に対しても展開されることが期待される。
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(2)良好事例及び改善提案 |
- 今回のレビューにおいて、NSネットの他の会員さらには原子力産業界に広く紹介されるべきいくつかの良好事例を見出した。一方、東海研究所の安全確保活動をさらに向上させるためのいくつかの提案を行った。
良好事例*1と改善提案*2 の一覧は次のとおり。 |
○「良好事例」(18件)
レビュー分野 |
良好事例の概要 |
T 組織・運営 |
・核燃料取扱主任者の自主的な選任等による安全管理体制強化
・原子力に係る専門家集団としての十分な能力の発揮(JCO事故時の活動)
・原子力事業所安全協力協定(東海ノア協定)による各原子力事業所の安全確保
・地元地域への積極的な理解促進活動及び情報発信 |
U 緊急時対策 |
・故障から非常事態に至るまでの効果的な防護活動体制と関連手順書の整備
・総合防災情報システム等の整備による防護活動の充実・強化
・多種・多様な訓練の効果的な実施 |
V 教育・訓練 |
・全新入職員等に対する入所時教育の徹底
・開発技術等を取りまとめた公開報告書による技術伝承への貢献 |
W 運転・保守 |
・居室のパソコンを活用した中央制御室運転情報の確認と共有化
・原子炉運転への雷情報の活用
・運転・保守の一体体制による研究炉の安全管理と職員のスキルアップ |
X 放射線防護 |
・国際標準に沿った個人被ばく線量評価手法の確立と運用
・事故時にも測定可能なワイドレンジ型空間線量率測定装置の開発と設置
・放射性固体廃棄物の減容のための「高減容処理施設」の建設整備 |
Y 重要課題対応 |
・未使用燃料貯蔵に関わる臨界安全対策の人為ミス防止策
・研究炉運転経験の国内外における情報交換・提供
・異常事象究明のためのアドホック委員会の設置 |
○「改善提案」 (5件)
レビュー分野 |
改善提案の概要 |
T 組織・運営 |
・年度の部安全衛生計画における目標の定量化に係る検討 |
U 緊急時対策 |
・ 『防災業務計画』等に係る情報の協力会社への一層の発信
・原子力防災資機材点検記録等の一括管理 |
W 運転・保守 |
・各施設『運転手引』間の異常時等の通報・連絡インターフェイスの明確化 |
Y 重要課題対応 |
・崩壊熱除去運転経験等の『運転手引』等への更なる反映 |
注)太字は代表的な良好事例と改善提案
5.相互評価報告書
相互評価報告書本文及び参考図は、こちらをご覧下さい。
●相互評価報告書本文(PDF形式:252KByte)
●参考図
以 上
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*1良好事例
東海研究所の安全活動のうち、的確かつ効果的で独自性のある手法を取り入れている事例であって、NSネットの会員さらには原子力産業界に広く伝えたい、優れた事例を示したもの。
*2改善提案
原子力の安全性を最高水準へと目指す視点から、原子力産業界でのベストプラクティスに照らして、東海研究所の安全確保活動をさらに向上・改善させるための提案などを示したもの。そのため、現状の活動が原子力産業界の一般的な水準以上であっても、改善提案の対象として取り上げる場合がある。 |
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