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柏崎刈羽原子力発電所の地震後の状況等について(第16報)
-6月12日までの全体状況に係る経過報告-

平成20年6月17日
改訂0版
日本原子力技術協会

一昨年9月、原子力安全・保安院は、改訂された「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」(以下、「新指針」という)に照らした耐震安全性評価の実施を各電力会社等に要請し、これを受け、各社は耐震安全性の評価を行ってきた。また、その後、平成19年7月に新潟県中越沖地震が発生したことを踏まえ、経済産業大臣より、本地震から得られる知見を耐震安全性の評価に適切に反映し、早期に完了する旨の指示がなされた。
前回の第15報では、このような経緯を経て電力各社が本年3月末までに実施し保安院に報告(柏崎刈羽原子力発電所を除く)した「基準地震動Ss策定」とこれを踏まえた「耐震安全性評価」の結果(中間報告)について紹介したが、今般、柏崎刈羽原子力発電所においても基準地震動Ssの策定が完了し、保安院に報告がなされたことから、その概要について紹介する。また、併せて、タービンの点検状況についても紹介する。

1. 基準地震動の策定

(1) 東京電力の策定状況と対応方針

東京電力は、5月12日に保安院へ報告した柏崎刈羽原子力発電所敷地周辺における地質調査結果の中間報告書の内容と中越沖地震時に取得された地震観測データの分析の結果を踏まえ、同発電所の基準地震動Ssを策定し、5月22日、保安院へ報告書を提出した。概要は以下のとおり。

  1. 地震観測データの分析結果
    中越沖地震後の地質調査や中越沖地震の地震データ及び過去の地震データの分析の結果、次のとおり,この地域で地震動が強まる要因があることが分かった。
    要因①: 同じ規模の地震と比べ大きめ(1.5倍程度)の地震動を与える地震であった。
    要因②: 周辺地盤の堆積層の厚さと傾きの影響で地震動が増幅(2倍程度)した。
    要因③: 発電所敷地内において、1~4号機側と5~7号機側では、発電所敷地下にある古い褶曲構造の影響により地震動の増幅に違いがあり、1~4号機側の方が5~7号機側に比べ、2倍程度地震動が大きくなった。
    一方、解放基盤表面から原子炉建屋までは、原子炉建屋が地中に埋め込まれていることなどから地震動は弱まる(要因④:1~4号機で0.4倍程度、5~7号機で0.6倍程度)。
    地震動が大きくなった要因の概要図
    (5月22日 東京電力プレスリリース資料より抜粋)

  2. 基準地震動の策定
    上記a.で述べた地震観測データの分析結果から得られた地震動の増幅に関する知見を考慮し、東京電力においては、発電所敷地に与える影響が大きい「F-B断層」と「長岡平野西縁断層帯」における地震をもとに、解放基盤表面における基準地震動を策定するとともに、解放基盤表面から原子炉建屋に地震動が伝わる間の減衰を考慮して、最終的に主要な安全設備に影響を与える原子炉建屋基礎版上の地震動を評価した。評価結果は以下のとおりである。
  3. 耐震安全性向上工事
    施設の耐震安全性の向上を図るため、今後、1~7号機の全てに対して原子炉建屋基礎版上で1,000ガルの揺れに耐えられるよう工事を実施していく。
    東京電力では、今回策定した基準地震動に係る保安院の審議会等の審議状況を踏まえつつ、柏崎刈羽原子力発電所の耐震安全性の確認作業を進めるとともに、耐震安全性の向上を図る工事についても、同審議の状況を適切に反映していくことにしている。

(2) 保安院、原子力安全委員会の対応方針

この報告に対し、保安院は、JNESの分析結果や専門家の意見を聴きながら厳正に評価するとし、併せて、同日開催された原子力安全委員会に本件の報告を行った。
また、保安院からの報告を受け、原子力安全委員会は、同日、今回策定された基準地震動の妥当性について、耐震安全性評価特別委員会において慎重に検証するとともに、その結果を踏まえて耐震安全性の一層の向上に向け取り組んで行くことを決定した。

2. 低圧タービンの点検状況

(1) 7号機

7号機低圧タービンC第14段(タービン側)の動翼4枚(動翼は4枚が一体で固定されている)を取り外し点検したところ、3月3日、動翼1枚のフォーク部(翼付け根部)が一部折損していることが確認された。また、破面観察の結果、表面に金属疲労を原因とする場合に特徴的に見られるビーチマーク(縞状の模様)が確認された。
同様の構造部に対するその後の点検(外観目視点検及び非破壊検査)結果は以下のとおりである。

(2) 6号機

6号機についても、低圧タービンB第14段の動翼フォーク部(各152枚、計304枚)について外観目視点検を実施した結果、折損などの異常は確認されなかったが、非破壊検査を実施した結果、発電機側の動翼28枚、タービン側の動翼63枚に指示模様が確認された。

(3) 今後の予定

これまでに確認した動翼フォーク部の折損等については、中越沖地震の発生以前から起きていた可能性も考えられるが、東京電力は、引き続き地震との関連も含めて原因の調査を進めるとともに、6号機の低圧タービンA、C第14段動翼フォーク部ならびに低圧タービンB第15段、第16段動翼フォーク部の外観目視点検および非破壊検査、低圧タービン第14段のロータフォーク取付部の非破壊検査を実施することにしている。

以 上