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(株)IHI 横浜事業所にて第131回安全キャラバンを実施

平成24年6月14日、神奈川県横浜市にある(株)IHI 横浜事業所において、第131回安全キャラバンを実施し、安全講演会とRCA研修会を行いました。

安全講演会

(株)IHIおよび関係会社社員の101名が出席されました。

講演会の冒頭、(株)IHI 原子力セクター 副セクター長 朝倉 一郎 様から、『本日は、JANTI殿からヒューマンファクターのお話をいただくことになっている。原子力事業に携わる者として安全文化を大切に日々頑張っているつもりだが、ヒューマンファクターに起因するミスは我々の所でも身近な問題。品質上のトラブルには悩まされているのが本音。本音の部分と真正面から向い合い、本日の講演を是非有効に活かしていきたい。また、品質改善のためのツールとしてRCAがあり、午後から研修会も予定されている。これらを日々の業務に活かして、より一層、お客様の期待に沿う製品作りをしていきたい。』とのご挨拶を頂きました。

ご挨拶の後、日本原子力技術協会 安全文化推進部 吉村誠一から「事故・トラブルとヒューマンファクター - 入力ミスや操作ミスの背景にあるもの -」と題して、講演を行いました。


講演要旨

◆人は誰でもヒューマンエラーを起こし、また、時にはそれが事故やトラブルに繋がる。我々は事故やトラブルには目が行くが、それが何故起きたのか、その原因(背後要因=ヒューマンファクター)にまで思いを馳せることは少ないのではなかろうか。

◆一般に、ヒューマンエラーという概念は広く世間に認知されているが、ヒューマンファクターという概念は馴染みが薄い。しかし、RCA等で事故やトラブルの背後要因を分析し対策を立てようとする時、発生した事象を理解した上で、ヒューマンエラーとヒューマンファクターの関係を正しく知ることは重要である。ここでは、まず、人間の振る舞いと、それに影響を与えるヒューマンファクターの関係を概観する。


◆事故やトラブルは一見、突然起きるように思われるが、実はそうではない。幾つかの伏線(小さな事象)を経て発生する。これを事象の連鎖と呼ぶ。小さな事象とは、例えば、何かに気づかなかったことや、操作ミスなどに起因する人間―機械系の不具合事象であるが、その時点では、自分がそのような「小さな事象」を起したことに気づかないか、あるいは気に留めない。その重大性に気づくのは、これが大きな事象(事故やトラブル)に進展し、過去を振り返った時である。従って重要なのは、自分の行動や周囲の環境に常に注意を払い、自分を取り巻く状況を客観的に把握すること(気づきを得ること)である。この気づきはメタ認知と呼ばれ、事故やトラブルを未然に防止する有効な手段となる。

◆しかし、自分の胸に手を当てて考えてみれば分かるように、この気づきを得ることはなかなか難しい。阻害要因は、例えば「思い込み」であったり、「他人を頼りたいと思う心」であったりする。しかし、「人間はどういう時にそういう状況に陥るのか」、が分かれば、日常業務の中での留意点が思い浮かび、危険に対する気づきは比較的容易に得られる。

◆他産業で事故が発生した時、多くの人は、「大変だ。でも、自社では起こらないから関係ない」と思うだろう。なぜか?設備が違うから、仕事の内容が違うから、働いている人のレベルが違うから、etc.・・・。しかし、それらは屁理屈だけの希望的観測かも知れない。設備を使うのも仕事をするのも同じ人間であり、教育のレベルが違ったとしても我々は皆同じ人間としての特性を持つ。

◆ここでは、多くの人が知っているTMIとPiperαという2つの重大事故を取り上げ、ヒューマンエラーとヒューマンファクターの関係を概観した上で、証券と電力という全く異なる分野の事例を紹介し、事例と人間特性との係りや事例間の類似性を考える。これらにより、我々は、他産業/他社で起こったことは自産業/自社でも起こるかも知れないことに改めて気づくだろう。

などのお話しをさせていただきました。

講演会終了後のアンケート

    ●日常の業務にてミスをしてしまうことがあるが、どうしてミスをしてしまうのかの原因を考え、防止するということを今日の講演にて改めて良く考える機会を得られたと思いました。今日の講演内容を今後の業務に十二分に活用してゆきたい。

    ●ヒューマンエラーには分類があり、原因により対策が異なることが良く理解できた。人間はどうしてもミスが出てくるものだと思うので、未然にミスを出さないような対策を講じることが必要だと思う。そのためにもヒューマンエラーに対して適切な分析が必要なことを理解しました。

    ●チェックの手法として、「同種防護」と「異種防護」の考え方は今後の業務に参考になる考え方である。

    ●電気設備、保守操作ミスの事例については、設計者も良く経験する。設計図面の作り込みの際、ミスをするものという前提ででもチェック等もしっかりやろうと思った。他の事例を知ることは、多角的な観点で自分の仕事を見つめなおす良い機会だと思う。今後も数種類の事例を紹介していただけるような講演内容にすれば有用だと思う。

などのご意見・ご感想をいただきました。

RCA研修会

RCA研修会では、日本原子力技術協会 吉村から「分析手法(HINT/J-HPES)」の紹介後、参加者の方々に手法に従い、仮想事例「端子ビスの緩みによる循環ポンプ停止」を用い、事象の把握(分析対象行為の特定)、原因の分析(分析対象行為を起点とした原因関連図の作成)を行っていただき、最後に代表グループによる分析結果の紹介と意見交換を行いました。

RCA研修会の様子

 

以 上