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(財)電力中央研究所 原子力技術研究所にて第130回安全キャラバンを実施

平成24年2月9日、東京都狛江市にある(財)電力中央研究所 原子力技術研究所において、第130回安全キャラバンを実施し、安全講演会と安全情報交換会を行いました。

 (財)電力中央研究所 原子力技術研究所および狛江地区の職員、協力会社社員の79名が出席されました。

1.安全講演会

(講師)中満 悦郎氏

 講演会の冒頭、原子力技術研究所長 木下 泉 様から、 「 原技協様には日頃より、原子力関係の安全文化醸成や安全診断などに、ご尽力いただいていることに心より感謝申し上げる。 本日の安全講演を企画するにあたり、副所長はじめとするスタッフで相談した。この参加者の3分の1程度はいわゆる原子力専門の職員である。原子力の安全への取組みもさることながら、他分野の安全への取組みなどヒューマンエラー防止の取組みについてもきかせていただきたいという思いもあり、いろいろと相談を重ねた。 原子力やシステム技研の方々は工学系の人間が多く、昔から飛行機とか電車などに憧れや興味を抱いていた人間も多かったということもあって、今回はぜひ航空関係のヒューマンファクター、ヒューマンエラーを専門に扱っている方に講演いただきたいということになり、全日空から中満様にお越しいただくことになった。 ヒューマンファクターに関することは、私どもも当初から課題にしていたが、緊急時に力を発揮できる組織とはどんなものか、あるいはそういった組織にするためはどういった指標を置けばいいかなどの研究を今後も続けていこうと思っている。 中満様の本日のご講演をぜひ参考にさせていただければと考えている。 また職場の安全については、原技研では昨年8月に実験室内にて火災が発生し、それ以降も少々ヒヤリハットがあった。施設内では高温高圧の蒸気、薬品などを扱っているので、安全に対する考え方にも今日のご講演の内容を反映させていきたいと考えている。また、今後の安全文化醸成活動に反映させていきたいと考えている。」 とのご挨拶をいただきました。 ご挨拶の後、全日本空輸(株)整備本部 品質保証室 品質保証部 ヒューマンファクターズチームリーダーでもある中満 悦郎 様から「ANA整備部門(e.TEAM ANA)におけるヒューマンファクターズへの取組み - ヒューマンエラーの回避・防止対策とその実際 -」と題してご講演いただきました。

 

(講師)中満 悦郎氏

講演では

◆航空機の整備業務を行っていくためには、現場で起きるヒューマンエラーを品質部門が正確に把握して、必要な仕組みを構築し、ヒューマンエラーの再発防止に向けた対応を確実に行っていくことが肝要である。原子力関連の施設を取り巻く環境も、安全が求められるという面では航空機の分野と同様であろうと考え、我々の安全に関する活動をぜひ参考にしていただきたく、実例を交えて説明する。

◆全日空では、整備において自社部門だけに頼ることなく、系列の整備会社とともにジョイントベンチャー方式を採用し、e.TEAM ANAというチームを作り一貫した品質保証体制を整えている。近年、航空機事象・事故率は減少しているものの、件数は減少してはいない。その要因を調べていくと整備に関わるものは3%前後である。この整備士による人的要因を少なくしていくというのがヒューマンファクターズへの取組みである。そのため全日空では、個人のキャリアに合わせて随時必要な訓練を行っている。また、業務内でのエラーコントロールの一環として、整備士はセルフインスペクションのルール化を定め、ひとつひとつ確認しながら作業していく体制を採っている。また、ベーシックマナーを重視し、コールアウトチェックリストを活用しているのをはじめ、現場では積極的な取組みを行っている。エラーの分析については、イーラ体系を、要因分析についてはSHELモデルを活用し、対策を立てている。

◆安全マネジメントについては、継続的に安全を確保しながら、さらなる改善を求めて、周りにあるハザードを遠ざけることなく取組み、報告や未然防止活動にはトップマネジメントが関わり、積極的にバックアップすること、さらに現場だけに頼らず連携して活動していくことを目指している。安全に向けての未然防止活動については、TAKOと名付けた独自の全員参加型改善活動を通じて企業のナレッジとして定着し、組織力に変えていくことを目指している。また活動を始めて4~5年が経過するヒヤリハットについては発信件数を伸ばすとともに、よいものを褒めていくことでさらなる推進力に変えていこうと考えている。

◆全日空の安全文化向上への取組みは10年が経過しているが、この取組みが形骸化しないよう、手を変え、品を変え継続していくことが欠かせない。一本筋の通ったやり方でエラーコントロールの3原則を崩さないことを常に意識しながら、いまあるハザードを解決して遠ざける取組みが、航空業界にも、原子力の分野でも必要であろう。 

との貴重なお話をいただきました。

講演会終了後のアンケートでは、

●事例を踏まえながら講演していただいたので興味深く聞くことができました。何も事象が起こらないと安全を過信し、対策の形骸化という危険もあると感じます。しかし、事象が起きてからでは遅いので、感受性を高める活動の重要性を感じました。
●実際の保全におけるエラーをなくす活動について、事例を交えながら分かりやすく解説していただき、ありがとうございました。研究の中でも、またその運営においても、重大なエラーが生じるリスクがあり、状況がかなり異なりますが、参考にさせていただきたいと思います。
●航空会社における非常に厳密かつ積極果敢な取り組みを拝聴し、参考となりました。原子力村の人間からしますと、どうしてこのように皆が、そして品証部の皆様が前向きに取り組めるのかとうらやましく思ったりいたします。やはり、元々の風土(文化)の違いと思う面もありますが、少しでも今日のお話しを活かして行きたいと思います。
●わかりやすく、興味深い内容の発表ありがとうございました。 「おもしろ おかしく」というキーワードが心に残りました。多くの人を巻き込んでいく上で大切だと共感しました。
●具体的事例を含めた分かりやすいご講演をいただきありがとうございました。取り組み効果が出ているので説得力がありました。個々の取り組みは業種に関係なく実施できるものと認識しました。ANA殿においては見える化、体系化を上手くなされているので参考にさせていただきたいと思います。明るいイメージでの進展に心がけたいと思います。

などのご意見・ご感想をいただきました。

2.安全情報交換会

 安全情報交換会では、(財)電力中央研究所 原子力技術研究所様からご要望のあった「研究所における安全文化醸成活動」をテーマに、原子力技術研究所の醸成活動の取り組みについて意見交換を行いました。

ワークショップの様子

以 上