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日本原子力発電(株)敦賀発電所にて第127回安全キャラバンを実施

平成23年12月20日、福井県敦賀市にある日本原子力発電(株)敦賀発電所において、第127回安全キャラバンを実施しました。

安全講演会

日本原子力発電(株)及び協力会社の社員約80名が出席されました。

講演会の冒頭、日本原子力発電(株) 敦賀発電所 運営管理室 マネジャー 小嶋 剛 様から
『今回の安全キャラバンはヒューマンエラーをテーマにしております。ご存じのとおり、敦賀発電所では昨年度から今年度にかけて数件の火災トラブルが続いております。今月に入り、また数件ほど発生しております。これらの事例はすべてヒューマンエラーによるものです。敦賀発電所のヒューマンエラーの状況を簡単にご説明しますと、今年度については今日現在までで多くのヒューマンエラーが発生しております。平成21年度・22年度から比べると少なくなってきていると言えますが、重大ヒューマンエラーについては、品質目標として年間0件目標を掲げている中で、今年度はすでに何件か発生しており、なかなか減らすことができない状況です。今後の敦賀発電所としての命題は、「火災を起こさない」ということと、「重大ヒューマンエラーを起こさない」ということです。本日ご講演をお願いしました、(株)安全マネジメント研究所の代表取締役所長の石橋先生には、このような敦賀発電所の状況について事前にご説明しております。その上で、「レジリエントな高信頼性組織を目指して―現場力向上を実現する戦略―」という内容でご講演いただけることになりました。午後からは安全情報交換会ということで、関西電力の美浜発電所の千種様から美浜発電所の状況を紹介していただいたり、日本原子力技術協会様からもいろいろな情報をいただける予定です。本日の安全キャラバンで得た知見は、今後のヒューマンエラー低減活動に役立て、「火災を起こさない」、「重大ヒューマンエラーゼロ」という目標につなげていきたいと思っております。』
とのご挨拶を頂きました。

安全講演会の様子

講演会の様子

ご挨拶の後、(株)安全マネジメント研究所の代表取締役所長 石橋 明 様から「レジリエントな高信頼性組織を目指して―現場力向上を実現する戦略―」と題して、ご講演をして頂きました。

 

講演では

◆航空事故と比較して、交通事故による死者数はその減り方が鈍化している。労災においてもいまだに多くの方が亡くなっており、優良企業や大企業と言われる企業においても大事故や不祥事が絶えない。最近は、運輸安全マネジメントシステムの導入を背景として、予防安全対策が実践されるようになってきているが、こうした流れの中でヒューマンファクターズに注目し、なぜ人はエラーをおかしてしまうのかということを理解しなければならない。

◆ある事故が発生し、ヒューマンエラーが介在することが明らかになった時、そのエラーの背後要因を検討し、それらがどのような流れで事故に至ったのかということを検討していかなければ有効な対策は立てられない。人間の能力や限界、人間の持っている基本的な特性をしっかりと見極めたうえで検討していくことが必要になる。特に、プロフェッショナルとしては常に頭脳明晰な意識水準で適切な判断ができることが求められる(例:ハドソン川の奇跡)。情報処理プロセスをもとに人間の行動パターンを見ていくと、初心者の陥りやすいエラーと熟練者の陥りやすいエラーや、人間の能力発揮を阻害する要因等が理解できる。

 

講演の様子

(株)安全マネジメント研究所
代表取締役所長
石橋 明 様
◆一般的に、ヒューマンエラーを当事者エラーとして分類・検討されているが、これは氷山の一角であると言え、組織エラー(潜在エラー)まで含めて検討することが重要である。このような組織エラーに対する対策として、航空業界ではテネリフェ空港事故等大事故を契機としたCRM訓練が開発された。これは、ノンテクニカルスキルを養成し、チーム能力を発揮することを目的とした訓練である。また、TWA514便事故を契機として、予防安全の視点からヒヤリハットに関する情報を収集する安全報告制度ができた。このCRM訓練と安全報告制度が、今日の航空の安全性に貢献する二大成果であると言え、参考にしていただきたいと思う。さらに、予防安全という視点からは、東日本大震災からも学ぶことが多い。中でも、良好事例を振り返ることで、その教訓を後世にどう伝えるか、危機管理にどう活かしていくかということが非常に重要である。


◆安全管理サイクルを構築するためには、不具合事象の情報を正確に把握し、ヒューマンファクターの視点から分析し、各要因に対してリスクアセスメントを実施して、リスクレベルの高いものから順に対策に盛り込み、それを確実に実践していくことが重要である。そのためには安全文化が必要であり、強い現場力が求められる。ここで、レジリエンス工学の考え方(対処能力・予測能力・モニター能力・学習能力・前向きな復元能力)を背景として、まず現場が自ら気づいて行動を起こせるような仕組みを構築し、環境を整備し、維持できるような現場力の高い組織(高信頼性組織)を構築することで、最終的に災害ゼロ・不適合ゼロが達成されるのである。

 

との貴重なお話をいただきました。

講演会終了後のアンケート

基本的なところから教えて頂いたため、理解しやすかった。ヒューマンエラーを防ぐには人の特性を良く知った上で対策を考えること、エラーが起こったらその要因を探し、次に繋げることが大切ということを理解できた。

事故防止や安全維持に関し広く学ぶことができました。特に原子力以外の他産業の例示もあり理解を深める参考になりました。

講演内容の中でヒューマンファクター、安全管理サイクル等全ての項目で頷けることが多々あった。その中でも安全文化と高信頼組織の内容をもっと掘り下げてじっくりとお話を聞きたい心境になった。


ヒューマンエラーの起きる要因と発生するメカニズムについて、より深く理解することができました。要因として挙げられている中でも、現場での権威勾配やエラー対策について、現場操作における人員配置やグループ内コミュニケーションを正確に行い、ヒューマンエラーの低減に努めたいと感じました。

現場力を高める手法を私たちの職場に取り入れて活用して行き安全文化を高めて安全作業を行っていきます。

など

安全情報交換会

安全情報交換会では、日本原子力発電(株)殿から「敦賀発電所 ヒューマンエラー低減活動の取組み」の報告を頂き、関連する活動事例として関西電力(株)殿から「原子力発電所における危険予知活動の現状」の紹介頂きました。その後、原技協から「HEの低減に向けた諸活動」の紹介を行い、上記の取り組みに関する意見の交換を行いました。

情報交換会の様子

安全情報交換会の様子

 

以 上