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日本原燃(株)再処理事業部にて第124回安全キャラバンを実施

平成23年5月12日、青森県六ヶ所村にある日本原燃(株)再処理事業部において、第124回安全キャラバンを実施し、安全講演会とワーックショップを行いました。

 日本原燃(株)再処理事業部の社員、協力会社社員の123名が出席されました。

ご挨拶

講講演会の冒頭、専務取締役 再処理事業部長 松村 一弘 様から、 「 本日は、震災後の大変な時期にこのような形でお集まりいただき感謝する。 本日の安全キャラバンでは、講演会だけでなく、ワークショップも実施するとのことで、私としては大いに効果があるものと期待している。 当社では、昨年秋から、協力企業さんと一緒に「ヒューマンエラー撲滅キャンペーン」を実施してきた。その効果は確実に出てきているように感じている。昨年度は労災関係の事象が19件あり、そのうちの7件が熱中症で、残りの12件については、前年度の17件と比べて確実に減少している。事象内容に関しても、深刻なものはなくなりつつあり、歩行中の転倒、軽度のケガといった初歩的なものばかりで、いずれも本人が気をつけていれば防ぐことができるレベルである。本年度は、これらの小さな事象についても発生件数ゼロを目指していきたい。 人間であるから、エラーを完全にゼロにするのは難しい。しかし、それをいかにして少なくしていくのか、これこそが本年度の私のテーマである。まずはヒューマンエラーキャンペーンを6月まで実施し、その次の段階で初歩的な事象についてもなくすことができれば、本事業所におけるヒューマンエラー的な労災事象を発生件数ゼロに近い状態にできるのではないかと期待している。 本日は、「ヒューマンエラーを誘発する諸要因とその防止策」というテーマで、井上先生にご講演をお願いしている。先生のお話をヒントに、本年度は限りなくゼロを目指して、皆さんと一緒に頑張っていきたい。」
とのご挨拶をいただきました。

安全講演会の様子

安全講演会

ご挨拶の後、関東学院大学 人間環境学部 教授で、(財)労働科学研究所理事 研究主幹でもある井上 枝一郎 様から「ヒューマンエラーを誘発する諸要因とその防止策」と題してご講演いただきました。

講演では

◆人が何かに集中している時、脳の中では「集中する時間」と「休む時間」が交互に現れる。「集中する時間」は最も高い集中状態では最長でも0.2秒程度しか持続できない。つまり、生物学的な観点から見て、人間は常に注意し続けることは不可能である。しかし、その不可能を過度に期待する人間が多いことから、私はこれを「安全管理ロマン主義」と呼んでいる。ロマン主義では事故を防ぐことはできない。

 

(講師)井上 枝一郎氏

◆ヒューマンエラーを検討する上で、テネリフェ空港におけるジャンボ機衝突事故は、避けて通ることのできない重要な教訓事例である。この事故では、両機長による常態化したルール違反、思い込みなどのヒューマンエラーが見られたが、その背景には、天候不良による代替空港の利用、焦りなど、いつもとは異なる状況(定常状態の崩れ)が潜在要因として存在していた。このような事故が発生すると、原因究明に向けた調査が実施されるが、ほとんどの場合、技術系の人間だけで調査・対策検討が行われる。このことがヒューマンエラー絡みの事故では類似事故の再発を招いている一因のように思えてならない。事故の背景に潜むヒューマンファクターを十分に分析・検討することなく、精神論で片付けようとする傾向が強いため、対策が有効に機能していないと考えられるのである。

◆ヒューマンファクターの観点から見ると、多くの職場で守りにくいルールが数多く存在している。その結果、現場では独自の論理を展開することになり、「正規のルール」と「現場独自のルール」が混在したダブル・スタンダード状態が形成される。ヒューマンエラーはその狭間で発生することが多く、これを防ぐには「守りやすいルール」を作ることが不可欠である。

◆人間は、知覚から認知、判断、行動に至る全ての段階でミスを冒す。これは生物として必然のことであり、個人レベルで対応することは不可能である。したがって、組織レベルで対策を講じ、ヒューマンエラーの背後要因をしっかりと管理することが求められる。この考え方は今やグローバルスタンダードな共通認識となっており、「安全文化」という考え方でその重要性が唱えられている。

◆人間行動は常に揺れ動いている。しかし、これを外部から直接制御することはできない。したがって、人間の行動を安全に管理する上では、この揺れの抑制にエネルギーを注ぐのではなく、個人を支えている組織体に目を向けて、組織要因をタイトに管理することで、たとえ人間側に大きな揺れが生じても事象発生に至らないようにすることが重要なポイントである。この考え方を共通理解として組織内で共有することこそ、安全文化という概念に他ならない。

との貴重なお話をいただきました。

講演会終了後のアンケート

講演会終了後のアンケートでは、

●他人との視点の違いについて具体例を取り上げていてとても理解しやすかった。ヒューマンエラー対策には、組織全体として、様々な観点からの意見を取り入れて、組織としての対策として取り組むことの重要性について理解することができました。
●心理学も交えての講演でヒューマンエラーの事例を組織全体での理解はもちろん、階層別、年別等での理解、対策を行うことが必要等、非常に興味深く聞かせていただきました。安全ツールについては是非、運用していきたいと思いました。
●ヒューマンエラーの防止について組織要因や環境といった面への改善が大切であることが改めて理解できた。図で示されたことにより、これまでの考えが整理できた。
●人間の特性を理解したうえでのヒューマンエラー防止対策を考える。という切り口であり、これまでのヒューマンエラー対策が有効でなかった原因、今後の対策の検討のために有用な講演であった。例えば、新人とベテランで一律ではなく各々の行動特性に合わせて対策を考えるべきなど、新たな視点が得られたと考える。
●面白い話を交えてよかったと思います。ダブル・スタンダードの話しでは少なからず、現場作業で行っている場合があります。今回の講演を参考に社内ルールの見直しを検討したいと考えます。安全文化についても再認識した部分もありましたので今後につなげていきます。
●エラーの事例、視覚的(知覚)なサンプルを聞いた講演であり参考になった。エラーの分類による対策や、ヒューマンエラーと安全文化との関係についても得られる部分が多かった。ありがとうございました。
●ヒューマンエラー対策について、作業員の立場でうすうす気付いていたことや感じていた事を明確に指摘していただいたことは、今後ヒューマンエラー対策を立てる上で、大変効果があったのでは無いかと思います。

などのご意見・ご感想をいただきました。

ワークショップ

ワークショップでは、日本原燃(株)様からご要望のあった「ヒューマンエラー撲滅のための具体的行動」に係わる課題「ヒューマンエラーの事例分析」と「協力会社とのコミュニケーション」について、日本原燃社員と協力会社社員を交えてグループに分かれて、課題解決への意見交換とその成果発表を行いました。

ワークショップの様子

以 上