ページ内を移動するためのリンクです。
ここからメインコンテンツです

三菱原子燃料株式会社にて第121回安全キャラバンを実施

平成23年1月25日、茨城県那珂郡東海村にある三菱原子燃料株式会社において、第121回安全キャラバンを実施しました。(安全講演会は、ニュークリア・デベロップメント株式会社と共同開催)

安全講演会

三菱原子燃料株式会社の社員約40名が出席されました。

講演会の冒頭、三菱原子燃料(株) 取締役副社長 小野 幸雄 様から「本日と明日の二日間、当社とニュークリア・デベロップメント株式会社二社合同で、安全キャラバンのご指導を受けたいと思っております。本日は、吉田道雄先生のご講演を午前中に伺うということで、大変お忙しいなか時間を割いて、東海まで来ていただきました。先生は、九州大学の教育学研究科でドクターを修了され、現在は熊本大学の教授をされております。我々と違って、博士号は「学術」という非常に幅広い分野でございます。もう一つ、集団力学研究所の所長を歴任されております。先生は、原子力のみならず、様々なところでリーダーシップや組織安全、対人関係トレーニング等の指導・開発をされており、様々な主要産業を含めて、看護や教育分野でも400以上のトレーニングコースを主催されているということでございます。2004年には内閣府の原子力安全委員会の依頼を受けられ、座長として「原子力安全文化の尺度の検討に向けた基礎的調査報告書」をまとめていらっしゃいます。なお、主著や論文その他も多数ございまして、一番新しいものとしては「組織の安全管理と人間理解―グループ・ダイナミックスから見た安全」というタイトルで、原子力eyeという原子力関係の本にも執筆をされております。日常我々がなかなかお話を伺えないような内容について、様々なご議論・ご指導をいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。」とのご挨拶を頂きました。

ご挨拶の後、熊本大学教授 学術博士 吉田 道雄 氏から「安全文化醸成活動とヒューマンスキル」と題してご講演頂きました。

安全講演会の様子

講演では

グループ・ダイナミックスとは、集団との関わりを通して人間を理解し、それを実践に生かす学問である。我が国において事故防止にグループ・ダイナミックスを導入した最初の研究は、西鉄バスにおける研究であった。事故を起こした運転手の再発防止を目的に、集団決定法と呼ばれる技法を研修の中で導入した結果、事故の減少を実現した。ここでは特に、職場に戻ってからの受講者同士の支え合いと、職場の雰囲気や上司の態度が結果に大きく影響することが明らかになった。三菱重工の長崎造船所における研究では、リーダーシップ・トレーニングと小集団活動により災害事故の減少に成功した上に、“マイプラント意識の高揚”“コスト意識の向上”“出勤率の向上”“家族の見学・招待会の提案”といった、予期せぬ波及効果も見られた。
続いて、組織の安全に脅威を与えた事例・事件から、そのメカニズムを検討する。組織としてヒューマンエラーに対応すべきポイントとして、“言いたいことが言えない”状況を解消することがあげられる。そのためにリーダーは、失敗することがあっても隠さず、それを克服する姿を部下に見せられるような“ミニカリスマ”となる必要がある。

講演の様子

安全な職場づくりに求められるスキルとしては、トップダウンだけでなくボトムアップのあり方が重要である。下からの情報の流れを職場のリーダーが途中で止めてしまうことがないようにしたいものである。また、リーダーシップが重要であるとよく言われるが、同様にフォロワーシップもスキルとして欠かせないものであって、管理者と部下には互いのやりとりを循環させるような態度や行動が求められる。こうした、いわゆる“対人関係力”を向上させるには、対人関係トレーニングが有効である。この手法は、まず、部下から上司に対して期待している行動を収集し、その中から上司が改善すべきものを選んで職場で実践していく。そして、数ヶ月後の状況を部下に評価してもらうことになる。職場の安全文化を醸成するためにもお役に立つと思っている。
全体のまとめとして、安全文化を促進するために求められる対人関係力やリーダーシップはエクササイズで強化改善できる、いわば“心の筋肉運動”であることを強調したい。それが、働く人々の仕事に対する“責任と誇り”を高めることにつながっていくことになる。

との貴重なお話をいただきました。

ご講演終了後、ニュークリア・デベロップメント(株)取締役社長の田村 仁様から「吉田先生、どうもありがとうございました。先生の講演の迫力に圧倒されました。そもそも人に一時間半集中力を持って聞かせるということは、非常に大変なことだと思います。1時間半、よくこれだけぐいぐいと持っていけるなあと、その迫力と熱意に感心いたしました。失礼ながら、頭の回転の速さと、ジョークを交えた素晴らしいご講演だと思いました。当初「心の筋肉運動」というタイトルを事前にいただいたときに、「微妙な言い回しで人を煙に巻くタイトルだな」と思い、「心の筋肉」と最初に読んだので、「心に筋肉があるのか、どういう禅問答をやる気かな」と思ったのですが、私の読み方が間違っていたようで、「心の」「筋肉運動」が正しかったのかなと思います。本日は、内容でぐいぐい聞かされたということでございますが、私自身、水を蒸発させられる太陽になり得るか、あるいは遮る雲になってしまうのかということを自問自答しながら、明日とは言わず、今日から実践してみようと思います。」との謝辞が述べられました。

講演会終了後のアンケート

講演会終了後のアンケートでは、

・問題を発信できる環境づくりの大切さを再認識しました。責任感が強くなりすぎると発信を受け入れなくなる感はあると思われます。リーダーシップとフォロワーシップの考え方は重要。リーダーは、標準か手順書だけで責任を担当に振るべきではないと常に感じていました。

・本講演会に参加し、大変参考になりました。今後の業務に活かしたいと思います。私は、「明日やる」ことが多いので、「今日からやる」に考え方を変えてみます。

・リーダーシップ力、対人関係が重要であることは認識しているものの、日頃その力を伸ばす努力を怠っていますが、本日の講演を機にできることから実践していきたいと思います。

・管理職でないものの、リーダーシップに対する反応も対人関係では重要であると認識しました。また、上司に対する意見を言う重要性を再認識し恐れずに意見を言うことができるように心のエクササイズをしていきたいと思いました。

などのご意見・ご感想をいただきました。

安全情報交換会

安全情報交換会では、三菱原子燃料株式会社殿からご要望があった「安全文化アンケート調査結果報告」をINSSから、また「安全文化醸成活動のモニター」の説明を原技協から行い、三菱原子燃料株式会社殿の安倍昌宏氏から「安全文化醸成の取り組みについて」の紹介を頂いた後、上記の取り組みについて意見の交換を行いました。

情報交換会の様子

以 上