1. 事業概況 |
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平成18年度は、当協会の基本業務である情報・分析活動、安全文化の推進、民間規格の整備活動を継続して実施するとともに、4つ目の柱である原子力技術者の育成・維持に関する業務においては、平成19年11月に制度の見直しが予定されている運転責任者判定業務の円滑な実施に向け、必要な準備を実施した。
これらに加え、当協会発足当初から原子力産業界の意識改革を目指して、@米国INPO(米国原子力運転協会)の協力を得たピアレビューの実施、A保安検査官のエスコートフリーの実施、B火力発電所の運転保守データの収集・活用に取り組んできた。ピアレビュー及びエスコートフリーについては着実に成果を上げたが、火力運転保守データの収集については、まだ一層の努力が必要である。
このように当協会発足後2年が経ち、自警団としての成すべき業務が明確となり、職員の意識も固まり業務推進の基礎固めができてきた。
これらの基盤業務に加え、平成18年度は、平成20年度から導入される原子力発電所における新たな検査制度に対する技術的見地からの支援、また、操業に向けアクティブ試験中の日本原燃再処理事業所に対する「作業安全に関する特定評価」を実施した。さらに、昨年11月、水力発電所のデータ改ざんに端を発した発電設備に関する保安院の点検指示により明らかとなった北陸電力志賀原子力発電所に係る制御棒引き抜け事象に対する技術支援など、環境の変化に伴う業務にも積極的に取り組んできた。この一連の対応では、原子力産業界における情報共有の必要性が改めて問われ、当協会が管理・運営するNUCIA(原子力施設情報公開ライブラリー)の一層の活用が求められた。
一方、海外では原子力ルネッサンスの風が吹いており、その状況の情報収集、海外への情報発信、及びデータに基づき日本と諸外国との比較評価の公表などにも取り組んだ。
具体的な平成18年度の活動は以下のとおりである。 |
2. 事業の経過及び成果 |
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(1)
情報収集・分析・活用 |
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勧告文書等の発行 |
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国内外の原子力発電所に関する事故・故障情報等を収集し、分析・評価を行った。この結果は、原子力の安全確保、信頼性に影響を及ぼす類似事象の発生防止に資するため、「勧告」、「注意」、「提言」、「通知」等の文書を発行し、その実施状況をフォローしていくこととしている。
平成18年度は、国内情報341件、海外情報〔INPO、WANO(世界原子力発電事業者協会)、NRC(米国原子力規制委員会)、IAEA(国際原子力機関)〕3,080件を分析した。(17年度は、国内314件、海外2,379件)
その結果、提言文書2件、通知文書3件を電力会員に対して発行した。
@)提言
・安全系電動弁の圧力ロッキング・熱固着(H18.5.17)
・ディーゼル機関用超底流硫黄燃料油の使用について(H19.3.28)
A)通知
・放射線管理区域への装備品の未着用での入域に係る通知について(H18.10.27)
・ 2次系補給水(再生水)が混入する事象に係る通知について(H18.10.27)
・周辺土壌への液体放射性物質流出による地下水汚染防止(H19.1.9)
これらの発行文書については、文書の概要をホームページに掲載するとともに、半期毎に電力会員の検討・実施状況を調査し、その集約結果も併せてホームページに掲載している。
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A |
情報の傾向分析と活用 |
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a)
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国内外の事故・故障情報に対する傾向分析に注力した。
国内については、運転・保守へのフィードバックを特に考慮し、国内の疲労、応力腐食割れ等劣化事象やヒューマンエラー事例の傾向分析を行った。具体的には、新検査制度の導入に当たり、安全上重要な機器や運転継続に必要な機器には状態監視の充実が有効であることを調査するため、機械品(電動ポンプ、電動弁、配管)、電気品(モータ)、計装品(カード/基板)、燃料についての最近のトラブルを分析・評価した。また、運転期間延長に伴うトラブルの発生について建設・保守に起因するトラブルおよび経年的特性に起因するトラブルについて分析・評価した。
海外については、特に米国の運転情報について、傾向による実態の把握と国内との比較評価を実施した。また、NRC情報ENR(Event Notifica -tion Report)のデータベース化、INPO等の運転経験情報を活用した。
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b) |
火力発電所の運転保守データの収集については、他分野の事故・故障経験の活用の観点から、その収集に努め、平成18年度までに15件の情報提供を受けた。漏えい、弁動作不良など原子力分野にも活用できる情報9件については、電力会員へ情報提供を行った。さらに同会員の火力部門に対して情報提供の定期的な要請を行い、技術蓄積を継続していくこととする。
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B |
(パフォーマンス指標)等の活用の検討 |
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民間PIであるWANOPIについては、継続的にデータの収集・分析を行い、ピアレビュー前の状況把握等に活用するほか、世界水準からみた日本のプラントの状況把握等に活用した。具体的には、日本を含む8ヶ国の稼働率と集積集団被曝線量の至近10年間の比較を実施し、日本の原子力発電の現状について分析を行い公表した。(H19.4.19参議院経済産業委員会等で説明) |
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C |
NUCIA(ニューシア)の運用 |
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平成18年度は、336件のデータが新たに登録され、累計で3,541件のデータ数となった。本年度は、17年度に実施したシステム改良のフォローを行うとともに、電力会員間の登録基準の判断に差異があることから、登録基準の明確化について11月より電力会員と協議を開始した。
平成19年3月、4電力会員は過去に発生したBWR制御棒駆動機構引き抜け事象を、情報共有の観点から追加登録した。本件を契機に、原子力産業界に対して、ニューシアを始めとして、情報の一層の共有化に対する社会の要請が高まったことから、その基準の明確化を図っている。
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D |
INPOおよびWANOとの連携 |
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INPOとは、リエゾンエンジニアを通じて情報交換をするとともに、島根原子力発電所で技術交換訪問を実施した。
WANOには、国内運転経験情報61件を投稿した。平成19年1月からは、軽微な情報も積極的に提供し、情報の共有化を一層強化している。
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E |
電力会員の自主保安体制推進の支援 |
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保安検査、定期検査、安全管理審査について、電力会員が情報を共有化して発電所管理の品質向上を図ることが喫緊の課題となった。このため、平成18年度は、10月から延べ13ヶ所に及ぶ発電所訪問を実施するなど、情報の収集・分析、データベースの構築を図り、その結果を新たに設置した電力会員による自主保安体制推進会議で提示し、良好事例を始めとした情報共有を図ることにより、各発電所のパフォーマンスの向上の支援を行っている。
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F |
RCA(根本原因分析)の推進 |
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新検査制度の導入にあたり、重大事象あるいは軽微な繰り返し事象に対して、電力会員がRCA手法を活用して事故・トラブルの未然防止の強化を図っていくことになった。このため、電力会員が円滑な導入を図れるようにRCA推進の中核者の育成研修を行うとともに、RCA手法を活用していくためのハンドブックを作成している。
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(2) 安全文化の推進 |
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ピアレビューの的確な実施と改良ピアレビュー方式の確立 |
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INPO方式を採用した特別ピアレビューについては、高浜、川内、浜岡の3原子力発電所で実施した。INPOレビューワーの意見を参考に、逐次改善を図り、昨年度実施した福島第一原子力発電所を含めた4回の特別ピアレビューを踏まえて、「現場観察の重視」を特徴とした原技協版ピアレビュープロセスを設定した。
ピアレビュー最終日の結果公表については、INPOではレビュー結果は非公開としているが、4回の実績を踏まえ、透明性確保の観点から必要であると考えている。
ピアレビューの実効性を高め、効率的に行うため、WANO東京センターとの協力関係を強化した。原技協ピアレビューへの海外レビューワーの派遣を要請する一方、WANO東京センター等のピアレビューに対して原技協レビューワーを派遣し、相互支援を行うこととした。平成18年度は、原技協から(注)の5原子力発電所にレビューワーを派遣した。
電力会員以外の会員についてのピアレビューでは、住友金属鉱山梶A潟Wェー・シー・オー、三菱電機鰍ノ対して実施し、各会員の事業内容に対応してカスタマイズし、現場観察をできるだけ取り入れる改善を行った。
(注):WANOピアレビュー個別発電所名は非開示
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A |
科学的・合理的な運用ルール適用の規制側への働きかけ |
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発電所現場での保安検査官のエスコートフリーの実現を目指し、国・電力会員間での条件整備などの検討の促進及び支援を実施した。11月1日、保安院は、「原子炉設置者の同行を伴わない原子炉施設の安全確認等に対する協力について」を通知した。これを踏まえて、BWR(福島第二、島根)、PWR(美浜、伊方)において、試運用を開始した。
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B |
安全文化の浸透・向上活動 |
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安全文化の浸透・向上支援のため、管理者セミナーでは、従来の方式に加え、参加者が積極的に参加する体験型のセミナーとした。 また、安全キャラバンについては、給水流量計の不正なデータ補正事案に関連し、会員の要請による追加実施を含め、13会員を対象として実施した。終了後のアンケート結果でも9割近い満足度を得ている。また、併せて5自治体に対しても原技協活動を紹介した。
さらに、安全文化検討委員会を設立し、安全文化の上位概念の設定、及び安全文化診断に必要な項目の検討を行い、これに基づきNSネット事業部会員の職員1万人に対する第2回職場安全風土調査を実施した。また、平成19年度下期より開始する安全文化診断の準備として、手法並びに実施体制を検討した。
原子力安全に関する情報発信・交換として、NSネット事業部会員の職員が、いつでも気軽に各自の安全文化を診断できる「e-ラーニング教材」を作成した(19年度より運用を開始している)。また、安全文化普及・向上支援のため、小冊子「ヒューマンファクターってなに?」を発行した。
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C |
情報発信活動 |
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Web サイトを通じて活動結果や安全文化の推進に役立つ各種データベースなどの提供を行うとともに、NSネットニュース(No.32〜35)を発行した。
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(3) 民間規格の整備促進 |
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民間規格の整備促進 |
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国の技術基準の性能規定化に伴い、民間規格の整備促進が求められている中、さらに、平成20年度より新検査制度が導入されることになったことから、保全、リスク関係の規格類の整備が喫緊の課題となっている。また、廃棄物分野についても、今後の省令改正・安全審査に備えて規格類の整備が必要となっている。
当協会としては、原子力の課題に基づいて優先的に整備すべき規格分野を体系的に整理し、5ヵ年計画を策定するとともに、新たに保全、リスク関係の規格類を整備するために、平成18年4月、プラント運用グループを設置して対応した。
この結果、プラント関係33件(17年度:16件)、サイクル・廃棄物関係8件(同2件)の計41件(同18件)について、調査、素案作成、学協会審議等の規格整備に係る原子力産業界の専門家支援を行った。
具体的には、PSA用ピアレビューの技術基準、安全保護系計器のドリフト評価指針等14件の規格素案を学協会の分科会等に提供した。(資料1参照)
また、規格基準部の体制強化により規格基準部職員が学協会における規格類の審議に直接参画する体制を充実させた。
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A |
新検査制度移行に伴う技術基盤の整備 |
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平成20年度の新検査制度導入、保全高度化、高経年化対策の推進に向け、 必要な技術基盤の整備及び関連民間規格基準の策定を進めている。具体的には、保全高度化導入時の共通技術基盤関連の海外調査、概念設計の検討、保守管理規程の改定、保全活動管理指標の設定等を実施した。また、今後、リスク情報を有効に活用していくことから、PSAの保安活動全般への活用等に備え、国内PSA信頼性データベースの充実を進めた。
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(4) 部門横断による取り組み≪タスクチームで総合力を発揮≫ |
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事業を進めていく中で、当協会の有する技術力を活用するため、部門を越えてタスクチームを設置し、以下の課題に対処した。
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日本原燃再処理事業所に対する作業安全に関する特定評価の実施 |
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アクティブ試験以降発生した内部被ばくなどのトラブルについて、作業安全上の問題点を評価し、日本原燃に対して改善等の提言を行った。特に内部被ばく問題については、県議会等で説明を求められ、再処理施設における放射線管理のあり方について説明を行った。
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A |
北陸電力志賀原子力発電所の臨界に係る事故について |
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北陸電力が、3月15日に公表した平成11年に発生した制御棒引き抜けにともなう臨界事故に関して、同電力の要請により、事故の根本原因分析の支援を行うとともに、独自に同原子炉の反応度解析を実施した。(H19.4.17解析結果を国内外に公表)
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(5) 原子力技術者の育成・維持 |
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平成19年11月に見直しが予定されている運転責任者判定業務に関して、電力会員3社、運転訓練センターの判定業務実施状況を調査するとともに、他分野の要員認証機関の調査を実施し、制度設計の検討に着手した。また、判定制度に関する規程類の整備を行っている。
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(6)
原子力安全動向調査の実施 |
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OECD-NEA Topical Conference、WANO/TC理事会等国際会議に参加し、原技協の活動を報告するとともに、日本の原子力の現状を紹介した。また、EUROSAFE2006やRegulatory Information Conference等に参加し海外動向を調査した。
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(7)
広報・広聴活動 |
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会員サービスの充実化 |
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技術セミナーを11月に敦賀、大阪にて開催した。安全文化、信頼性重視保全などをテーマに原技協役職員自ら現状の原子力に係る課題について報告し、36会員90名の参加を得て原技協の活動を理解頂いた。
また、「原技協通信」を平成18年度は9回定期発行(会員職員1,632名)するとともに、ホームページに世界の原子炉データベースなどを掲載し、会員サービスの充実化を図った。
さらに会員12社を訪問し、原技協の活動を紹介するとともに、会員ニーズの調査を行った。
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A |
記者懇談会の開催 |
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記者懇談会を4回開催し、原技協の活動や原子力を巡る課題について、技術的説明及び発電所現場での実情を解説し、原子力技術に対する理解促進を図った。
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(8)
関係団体との連携 |
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日本原子力産業協会とは、定期的に原子力産業の活性化に向けた、相互の連携の在り方について検討を継続している。
火力原子力発電技術協会とは、規格基準関連業務の移管に関して関係者との調整を図り、平成19年度より移管することで合意した。
電力中央研究所とは、リスク情報の活用、高経年化対策対応、放射性廃棄物処分施設の設計・性能評価において連携を図る一方、平成19年度下期より実施する安全文化診断の取り組みに関する協力の在り方について協議を行った。
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(9)
組織改編につい |
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当協会に求められる諸課題に適切、かつ柔軟に対処するため、平成18年4月に原子力技術者の育成・維持業務の推進、原子力安全動向調査、及び協会内の技術情報管理を統括するために、業務部に技術企画・情報管理グループを、また、保全高度化業務へ適切に対処するため規格基準部にプラント運用グループを設置し、さらに、平成19年1月には、自主保安体制を支援するために、情報・分析部に保安情報評価グループを設置した。
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3.
法人の概況 |
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(1) 事業内容 |
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原子力に関する下記の事業を行う。
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安全文化の推進
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情報の収集・分析・活用
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民間規格の整備促進
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技術力基盤の整備
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原子力技術者の育成・維持
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前各号に掲げる事業に付帯又は関連する事業
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(2)
基金の拠出状況 |
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(3)
役員(理事及び監事) |
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理事 |
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石川 迪夫 |
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野田 宏 |
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中村 民平 |
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鶴田 忠和 |
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成瀬 明輔 |
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百々 隆 |
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佐々木 則夫 |
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東 正武 |
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松下 清彦 |
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監事 |
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森 一麻 |
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頼 敬 |
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*なお、理事及び監事の兼務の状況は以下のとおり。 |
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佐々木 則夫
(株式会社東芝 執行役常務) |
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東 正武
(財団法人電力中央研究所 常務理事 |
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森 一麻
(原子燃料工業株式会社 専務取締役) |
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頼 敬
(日本原子力発電株式会社 常務取締役) |
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(4) 会員 |
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平成18年5月18日、株式会社共和電業、リサイクル燃料貯蔵株式会社が、平成18年10月17日、社団法人火力原子力発電技術協会が入会した。一方、株式会社エネルギア・ニューテックが法人解散を理由に退会したことから、会員数は、114会員となった。
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(5) 会議 |
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A |
理事会 |
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日時:H18.05.18
第 8回 |
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日時:H18.06.13
第 9回
(書面表決) |
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日時:H18.09.13
第10回
(書面表決) |
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日時:H18.10.17
第11回 |
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日時:H19.03.29
第12回 |
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B |
評議員会 |
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日時:H18.05.11
第 3回 |
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日時:H18.11.16
第 4回 |
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C |
運営委員会 |
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日時:H18.05.12
第 3回 |
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日時:H18.11.22
第 4回 |
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(6) 職員の状況 |
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職員 61名(
平成19年3月31日現在
)
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以 上
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