1. 事業概況 |
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平成20年度における原子力界を取り巻く動きとして、先ず、「保全プログラムを基礎とする新検査制度」の導入がなされ、個々のプラントの特性に応じた保全活動を展開することにより、制度上は24ヶ月を上限とした長サイクル運転も可能となったことが挙げられる。また、平成19年7月に新潟県中越沖地震で被災した柏崎刈羽原子力発電所の7号機においては、施設健全性評価結果及び新たに策定された基準地震動Ssによる耐震安全性評価結果が妥当との原子力安全委員会の見解が平成21年2月に示され、再起動に向けて進展がみられた。一方、独立行政法人日本原子力研究開発機構「もんじゅ」及び日本原燃株式会社「再処理工場」では、トラブル等により運転再開及び操業開始が当初計画の平成20年度中に達成できなかった。これについては、核燃料サイクル事業に携わる事業者自身が着実な対策等を進めるとともに、原子力発電所をはじめとした原子力産業界の経験を活用し、原子力産業界が力を結集して支援することが期待されている。
当協会は、「情報の収集・分析・活用」、「安全文化の推進」、「民間規格の整備促進」の3つの事業において、継続的改善を図りつつ、着実に事業活動を推進した。例えば、平成20年度には、新たにピアレビュー実績に基づく原子力発電所の改善活動に対する支援セミナーや安全文化アセスメント等を通じて抽出された安全文化に関する共通課題とその取り組みをテーマとしたセミナーを開催した。また、平成20年4月には技術基盤部を設置して、「技術力基盤の整備」及び「原子力技術者育成・維持」に係わる新規事業として、発電所の保全に係るノウハウやベストプラクティス等の情報共有化の基盤構築を進めるとともに、運転責任者諮問委員会の設置等によって、当協会が第三者機関として運転責任者判定事業を着実に実施するための準備活動を進めた。
また、設立後4年が経過したことを踏まえ、これまでの活動の実績評価・課題抽出の総括を行った。各事業では、その基礎を構築し、着実に活動実績を蓄積するとともに、活動に対する有識者による外部評価を受けることやINPO(米国原子力発電運転協会)ベンチマーク評価等を通じて、継続的な改善を図っている。一方で、各事業の質的向上に向けた課題とともに、共通課題として、会員が当協会から得られる情報や成果を有効に活用できる仕組みを構築すること、さらには当協会の人的資源の基盤を強化すること等を抽出した。
具体的な平成20年度の活動実績は次のとおりである。
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2. 事業の経過及び成果 |
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(1)
情報収集・分析・活用 |
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共有すべき情報の提供と勧告等文書の発行 |
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国内外の原子力発電所に関する事故・故障情報等を収集し、分析・評価を行うとともに、原子力の安全確保、信頼性に影響を及ぼす類似事象の発生防止に資するため、「勧告」、「注意」、「提言」、「通知」の文書を発行し、その実施状況をフォローしている。
平成20年度は、国内情報370件、海外情報2,893件〔INPO(米国原子力発電運転協会)、WANO(世界原子力発電事業者協会)、NRC(米国原子力規制委員会)、IAEA(国際原子力機関)〕を分析した(平成19年度は、国内695件、海外3,089件)。このうち、国内情報158件、海外情報199件については、運転情報検討会を通じて電力会員に共有すべき情報として提供した。
また、分析の結果、通知文書1件「コンクリートピット内設置のポンプバレルの健全性の確認(H20.8.5)」を電力会員に対して発行した。これまで発行した文書については、文書の概要をホームページに掲載するとともに、半期毎に電力会員の検討・実施状況を調査し、その集約結果も併せてホームページに掲載している。
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A |
情報の傾向分析と活用 |
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原子力発電所の運転・保守へのフィードバックを目的に、ニューシアに登録された国内情報を対象にして、運転制限(LCO)逸脱事象、及び、疲労・応力腐食割れ・絶縁劣化の経年的事象の傾向分析を継続的に実施した。これらの分析結果については、電力会員に活用してもらうため、複数の発電所において報告会を行うとともに、日本原子力学会(2008年秋の大会)において対外発表を行った。
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B |
電力会員の自主保安体制推進の支援 |
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電力会員の保安検査、定期検査、安全管理審査に係る保安情報については、保安情報データベースシステムにて収集・一元管理を行っている。発電所の品質保証体制を充実していくため、収集された保安情報の共有化を図るとともに、これらの情報を横断的に分析・評価し、電力会員参加の自主保安体制推進会議等でフィードバックした。
また、発電所を中心とした訪問調査を継続し、得られた電力会員の品質保証活動の共通課題について、良好事例の共有化によるパフォーマンス向上のため、「調達管理の基本的な考え方」や「有効なマネジメントレビューの在り方」及び「原子力安全達成のための品質目標の設定」について、当該業務担当で構成するWG活動の成果を取りまとめた。
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C |
RCA(根本原因分析)の推進 |
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電力会員等における社内でのRCA実施及び普及推進の核となる人材を育成するため、昨年度より開始したRCA研修(RCA手法の講義、事例演習、海外等過去事例の討議等延べ5日間)を年2回実施し、75名を養成した(平成19年度は、94名)。研修実施にあたり、研修テキストを適宜改訂した。
また、RCA推進WGにて、電力会員の取り組み状況に係る情報共有を行うとともに、モデル保安調査等にて出された課題を整理し解決策について取りまとめを行っている。 |
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D |
PI(パフォーマンス指標)等の活用の検討 |
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民間PIであるWANO-PIについては、継続的にデータの収集・分析を行い、ピアレビュー前に世界水準からみた日本のプラントの状況把握等に活用した。また、平成21年度から試運用される規制PI/SDP※について、国のPI/SDP検討会に参画して、PI/SDP手法の検討を行うとともに、総合評価の試運用における問題点の抽出やPI/SDPの在り方について検討した。
※ PI評価:安全実績指標評価、 SDP評価:安全重要度評価 |
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E |
ニューシアの充実 |
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ニューシアに登録された平成20年度に発生したトラブル情報等は313件で、累計は4,501件であった。これらの情報の内、他プラントへの水平展開が必要な情報のスクリーニングを行うとともに、電力各社の登録状況や水平展開の実施状況を定期的に確認し、ホームページに掲載している。また、会員によるニューシアの有効活用を促進するため、アンケートによる会員からの改善要望事項を集約し、今後のニューシアシステム更新時の基本仕様に反映していく。
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F |
INPO,WANO等との連携活動 |
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INPOとは、駐在エンジニア等を通じて情報交換をするとともに、日本原子力発電鞄穴C第二発電所で技術交換訪問を実施した(H20.10.8〜10)。また、INPOの活動についてベンチマーク評価を行った結果、事象分析における協会内の組織横断的な意見集約や会員との更なるコミュニケーション強化の必要性を抽出した。これらに対する改善方策を検討し平成21年度以降の活動に反映させる。
WANOには、平成20年度に軽微な情報も含め167件の国内情報を投稿し、国際レベルでの情報共有活動にも積極的に対応している(平成19年度は、162件)。
また、独立行政法人原子力安全基盤機構(JNES)との情報交換会を毎月開催し、トラブル情報等に対する意見交換を進めるとともに、重要事象に対しては当協会の技術的見解を提示する等、科学的・合理的な課題対応を目指した活動を実施している。
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(2) 安全文化の推進 |
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ピアレビュー活動 |
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平成20年度は、原子力発電所(1)、燃料加工施設(3)、燃料使用施設(1)、設計・製造施設(1)、の計6回のピアレビューを実施した。
原子力発電所に対しては、東京電力兜沒第二原子力発電所を対象としたピアレビューを実施し、長所9件、改善提言7件を抽出した。
また、ピアレビュー活動をより効果的なものにするため、発電所での改善活動を支援するセミナーを2回開催した。「共通的弱点セミナー」及び「改善支援セミナー」として、過去6回のピアレビューにおける共通的弱点について問題点を共有し、改善策等について会員間でディスカッションを行った。また、定検時観察及びシミュレータ訓練観察を継続的に実施するとともに、改善提言に対する発電所のアクションプランを入手し支援活動を開始した。また、保修分野と運転分野において見られた共通的弱点を中心に米国発電所を訪問調査し、ベストプラクティスの観察と意見交換を行った。
ピアレビューの実効的な運営のために、WANO東京センターとの協力関係を維持し、ピアレビュー実施計画の調整やレビューワの相互派遣等を行った。平成20年度は、日本、中国、イギリス、米国、インドの国内外6原子力発電所で実施されたWANOピアレビューに7名の職員が参加した。また、レビュー体制整備のため、3名の電力OBのシニアエンジニアをレビューワとして登用した。
一方、原子力発電所以外の施設については、原子燃料工業梶A三菱原子燃料梶A日立GEニュークリア・エナジー梶Aニュークリア・デベロップメント梶A潟Oローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパンを対象としたピアレビューを実施した。これらについては、各会員の事業内容を踏まえたレビュー項目を抽出し、面談や現場観察を多く取り入れた改良方式とし、この方式を確立した。
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A |
安全文化の浸透・向上活動 |
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外部評価として、客観的な視点で個人の意識や組織の特徴を把握し、改善点を提供する安全文化アセスメントは、開始から約1年半の実績を重ねることで、当協会の手法をほぼ確立した。電力会員等における安全文化醸成活動は保安検査の枠組みの中で確認されることを考慮し、平成20年度は、電力会員を優先して、5発電所で現場診断6回を実施した。今後は、燃料加工メーカー等の会員に対しても実施していく。また、安全文化アセスメントのインプットとなる安全文化アンケートについては、平成21年度下期の第3回目のアンケート実施に先立って、安全文化7原則との整合性を明確にし、かつ、質問項目の重複の整理、現場部門と設計部門の切り分け等の見直しを行い、会員の安全文化醸成がより的確に評価できるよう配慮した。
安全キャラバンについては、当初計画のとおり9会員を対象として実施した。なお、平成19年度に活動の質の向上を図ることを目的に設置した第三者による評価委員会(主査:北村正晴東北大学名誉教授)より、平成20年7月に今後の実施方法に対する具体的な改善提言を受けた。これを受けて、平成20年度下期からの活動に反映させ、グループワークを取り入れる等、個別の会員のニーズにより沿った方法、テーマを設定して実施した。
管理者セミナーについては、3種類のセミナーを計3回実施した。鉄道業界の研修施設を活用した体験型セミナー、及び、航空業界で実績のある「CRM(Crew Resource Management)研修」を原子力用に改良した演習型セミナー、さらに、安全文化アセスメント等を通じて提起された安全文化に関する共通課題とその取り組みをテーマとした講演型セミナーを開催した。
原子力安全に関する教材として、NSネット事業部会員の職員がいつでも気軽に安全文化を学習できる「e-ラーニング教材」の第3作目、「リスクマネジメント」を制作した。なお、平成19年度より運用を開始している第1作目の「安全文化」については、会員からのニーズを反映し、NSネット事業部会員以外の全会員が活用できるよう公開した。また、異業種交流会でのエッセンスをまとめた小冊子「異業種交流会のご意見を踏まえた安全文化に向けたメッセージ」の発行を準備中である。さらに、「安全文化ってなに?(2)」の英語版を発行するとともに、当協会が設定した「安全文化の7原則」の普及促進を図るため、安全文化ポスターや安全文化の7原則を記載した携帯用ポケット版を作成した。
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(3) 民間規格の整備促進 |
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@ |
民間規格の整備促進 |
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当協会としては、原子力の課題に基づいて優先的に整備すべき規格分野を体系的に整理し、5ヵ年計画を策定することとしており、平成20年度も5ヵ年計画を最新の知見、情勢を踏まえてローリングし、優先度の高いものから重点的に民間規格制定活動を支援した。
中越沖地震における教訓事項を受けた耐震関係の規格類の整備、また、保全プログラムを基礎とした新検査制度導入における保全重要度判断等のリスク情報の実用化に対応した規格類の整備、及び、廃棄物分野における低レベル廃棄物に係る規格の体系的な整備が、原子力産業界において早急な対応が必要とされている。当協会は、これらを優先的課題として民間規格整備支援を進めるとともに、在籍する職員の個々の専門性を活かせる分野では、学協会での規格審議組織の幹事等の役割を担い、学協会の規格制定活動における主体的役割を高めた。
具体的には、プラント関係の規格40(19年度:39)、サイクル・廃棄物関係の規格11(同12)の計51の規格(同51)について、調査、素案作成、学協会審議等の規格整備に係る原子力産業界の専門家支援を行った。このうち、学協会での審議素材として、原子力発電所の緊急時対策指針、火災PSA標準、情報の活用に関する指針等に対して、23の規格素案を提供した。また、18の分科会等の審議組織において主査・幹事を務めている。
なお、リスク情報を適切に活用していく観点から、PSAの品質確保の重要な手段となるPSAピアレビューについて、当協会内にPSAピアレビュー検討会(主査:山口彰大阪大学大学院教授)を設置し、当協会が発行するガイドライン(以下、「原技協ガイドライン」という)を制定した。今後はPSAピアレビュー試行により実績を積み重ねるとともに、レビューワの養成、体制整備等の検討を進める。
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A |
構造関係規格業務 |
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ASME動向調査に関しては、電力会員に依頼した専門家及び当協会職員が定例会議に出席して改定動向を調査するほか、産業界からの出席者による情報交換会を主催し、情報共有を進めた。また、学協会における認証制度や技術士活用について検討を進めるため、設計管理、検査等における米国のPE(プロフェッショナルエンジニア)等の公的資格者・公的機関の活用に関する調査を行った。
原技協ガイドラインについては、当協会内に設置した炉内構造物点検ガイドライン検討会(主査:野本敏治東京大学名誉教授)を引き続き開催し、炉内構造物点検ガイドライン3件を制定・公開した。
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B |
学協会技術開発ロードマップ策定作業への参画 |
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学協会で進めつつある原子力分野における技術的課題の研究開発及び規格制定に関するロードマップ策定に参画し、産業界の規格制定ニーズを反映するとともに、産業界の規格制定中期計画への反映を進めた。具体的には以下のような活動を実施した。
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@) |
各種研究結果を踏まえて、具体的な規格基準の作成につなげるために関連研究のロードマップに関して電気事業連合会、(財)電力中央研究所との打合せを行い、今後の連携について協議した。 |
A) |
(社)日本機械学会で取り組みを開始したロードマップ作成のタスクに参加して、ロードマップの策定について支援している。 |
B) |
(社)日本原子力学会における高経年化対応技術戦略マップ、燃料高度化技術戦略マップ、熱水力安全評価技術に係るロードマップ策定に参画し支援している。 |
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C |
中越沖地震後の原子力機器の健全性評価委員会 |
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平成19年7月の中越沖地震に対応して、設置した「中越沖地震後の原子力機器の健全性評価委員会(主査:野本敏治東京大学名誉教授)」においては、幅広い学識経験者の協力を得て、機器の健全性評価法、点検方法等の検討を進めた。平成20年度は、配管の塑性ひずみ測定評価や、ボルト等締結部材の健全性評価等の継続検討事項に加えて、機器・配管の弾塑性挙動を考慮した解析手法の適用性評価、配管の合理的な振動特性評価、原子炉圧力容器支持構造物の耐震評価等、新たな検討課題に対応するため、建築・土木分野等から有識者を委員に迎え、@評価基準WG、A検査WG、B疲労・材料試験WG、C配管振動評価WG、D建屋−機器連成WGの5つのWGに再編成した。5回の委員会、25回の分科会を開催し、積極的な活動を展開した。
これらの成果は、平成20年6月に平成19年度報告書をとりまとめ、その概要版を公表した。また、平成21年6月に平成20年度報告書の概要版を公開予定である。本成果の多くが東京電力株錐闃羽原子力発電所の点検・評価活動に活用されている。
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D |
先手管理機能の強化及び民間規格の策定迅速化への取り組み |
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平成21年度からの活動として、民間の主導のもと安全技術上の課題を先取りし問題解決に繋げていく「先手管理機能の強化」及び「民間規格整備のより一層の迅速化」を掲げた。平成20年度は、この活動に係わる基本構想を検討し、体制整備や管理手順等について会員をはじめとした関係機関へ提案・協議し、専門性を有する職員の採用等、平成21年度からの活動開始にあたっての準備を行った。
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(4)
技術力基盤の整備 |
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A |
電力共通技術基盤の整備 |
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平成21年1月より保全プログラムを基礎とした新検査制度が導入され、保全に係る共通技術基盤情報の整備が本格的な活動のステージに移行した。当協会が、この共通技術基盤のステアリング機能を有した運営主体として活動するにあたり、平成20年10月より電気事業連合会から共通技術基盤に係わる業務の段階的な移管を行い、平成20年度末をもって業務移管整備が完了した。平成20年度は、共通技術基盤を構成する「現場技術者ネットワーク活動」と「情報ライブラリ」に係わる諸活動を推進した。
「現場技術者ネットワーク活動」については、保全管理指標連絡会、ベンチマーク支援検討会の活動を継続するとともに、経年劣化判定会議やエキスパート会議(劣化メカニズム整理表検討会)の平成21年度からの本格活動に向けた、試行的活動を開始した。また、RCM-CBMユーザーズグループは、現場技術者との情報共有の場として参画してきた。
「情報ライブラリ」は、共通技術基盤の保全データ等の情報収集・管理・共有化のための図書管理マニュアルの整備を行うとともに、情報共有化のための電子会議室等の情報システムの整備を実施した。なお、これらの活動にあたり電力会員等との間で、情報管理に係わる覚書を締結した。
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(5)
原子力技術者の育成・維持 |
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@ |
運転責任者判定業務 |
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運転責任者判定業務の当協会への移行は当初計画より遅れたが、原子力安全保安院の運転責任者に関する判定の方法、実施体制等についての確認に関する指針(内規)が改正され、平成20年度末には、電力会員は経済産業大臣より外部機関の判定を可能とした合否判定規程の確認を受けた。これにより、当協会が平成21年度当初より運転責任者判定業務を実施することになった。このような状況を踏まえつつ、平成20年度は、判定業務運営のために必要な規程類や体制等の整備を実施し、JEAC4804-2008「原子力発電所運転責任者の判定に係る規程」の要求事項に適合した運転責任者判定業務マネジメントシステムを構築した。
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A |
保全技量認定制度の導入促進 |
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電力会員大で導入検討を進めている保修業務従事者を対象とした保全技量認定制度については、平成21年度下期から作業班長等のAクラス対象者の試運用開始に向けて、制度設計支援を図った。具体的には、電気事業連合会の保全技量認定制度WGに参画するとともに、電力会員や元請会社等が参画するWGとして、「技量認定指針作成WG」及び「試験問題作成WG」を当協会にて運営した。WGでは、保全技量認定指針の作成を進めるとともに、認定対象機器(ポンプ、弁、モータ、電源盤、プロセス計装)の試験問題案の作成を進めた。 |
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B |
原子力アカデミーの創設 |
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原子力に携わる技術者の育成・維持を目的に、原子力アカデミーを創設し、平成20年6月には、その第1弾として「原子力安全セミナー」を開催した。「原子力安全セミナー」は、原子炉主任技術者等の原子力発電所の上級管理職を対象として、講義・演習を通じて、原子力安全に関する知見の深耕を図るものである。
また、INPOベンチマーク評価を行い、上級運転員のリーダーシップ等に関するソフトスキル訓練の開発に着手した。
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(6)
組織横断的活動による取り組み |
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これまで当協会が事業を進めていく中では、組織横断的活動による当協会の有する技術力の有効活用を試みてきた。定期的な活動としては、事故・故障情報等に対する分析・評価におけるスクリーニングや中越沖地震対応としての定期的フォローアップをホームページに掲載する等、各部門の代表者が参画して取り組んできた。
また、非定期的な活動としては、会員からの要請を踏まえて、次にあげるような特別なレビュー活動を行う等、部門を越えたタスクチームを設置し支援を行った。
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@ |
日本原燃 再処理工場に対する特定評価のフォローアップの実施 |
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日本原燃鰍フ要請に基づき、平成19年9月から12月にかけて「協力会社との連携に関する特定評価」を実施し、7項目の改善要望事項を提示していたが、平成20年度は、これらの改善要望事項等に対する日本原燃の取り組み状況についてフォローアップを実施した。
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A |
「もんじゅ」サポートミッションの実施 |
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独立行政法人日本原子力研究開発機構(以下、「JAEA」という)の依頼に基づき、平成20年7月から9月にかけて、通報連絡を対象としたサポートミッションを実施した。サポートミッションでは、通報連絡に係わる業務に従事した経験を有する職員からメンバーを選定するとともに、アドバイザーとして、より広い視野で研究開発に携わってこられた有識者1名を加えたメンバー構成とし、4つの切り口(「通報遅れに関する疑問」、「組織の特徴」、「JAEAが立案した改善策」、「通報連絡に要する時間」)で助言を抽出した。
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(7)
広報・情報発信活動 |
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会員に対しては、各事業の活動成果をホームページで紹介するとともに、メールマガジンやNSネットニュースの発行等の情報提供を実施した。また、会員への当協会活動の理解促進を図ること、及び、会員からのニーズを発掘するため、札幌、広島で「日本原子力技術協会 技術セミナー」を開催し、民間規格制定状況、安全文化醸成活動、中越沖地震対応等について報告し、意見交換を行った。その結果、当協会の技術解説や海外調査・国際会議の報告等の情報発信の要望が寄せられたので、活動トピックスとしてホームページへの掲載を開始した。
さらに、会員のみならず、一般公衆及びマスメディアに正確な情報を伝えるために、「中越沖地震柏崎刈羽原子力発電所関連」等の情報をホームページにおいて発信した。特に、新聞、雑誌等の報道関係者には、当協会の活動及び原子力を巡る課題を理解していただくために、「記者懇談会」を平成20年度は「中越沖地震後の原子力機器の健全性評価委員会」の活動状況等をテーマに、2回開催した。マスメディアから技術的に分かり易い解説であるとの評価であった。
なお、これらの情報発信等においては、当協会や会員の知的財産保護のため文書管理を確実に行うとともに、当協会の品質保証マネジメントシステムに基づく「情報漏えい防止」に関する内部監査を実施し、当協会の情報管理の改善も図った。
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(8)
国内関係団体及び海外機関との連携
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(財)電力中央研究所とは、原子力発電及び核燃料サイクル事業の発展に資するため、安全文化、リスク情報活用、廃棄物・廃止措置等の5つの分野について技術協力に関する技術協定を締結した。平成20年10月に技術協力会議を開催し、電力中央研究所による研究開発を通じて行う技術協力の範囲を定めた。
また、第52回IAEA総会の併設展示ブースにおいて、新潟県中越沖地震に関する情報提供として、(社)日本原子力産業協会、東京電力鰍ニ協力して柏崎刈羽原子力発電所への影響や活動、並びに、「中越沖地震後の原子力機器の健全性評価委員会」の成果等を海外へ発信した。
その他、ANS(米国原子力学会)年会、欧州TSO(技術支援組織)主催の安全情報会議、米国NRC主催の規制情報会議等に参加し、海外の原子力安全動向について継続して調査した。
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(9)
協会活動の総括評価と課題抽出
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平成20年度は、設立以降の協会活動の総括を行い、今後の活動に資するための課題抽出を行った。その結果、基幹事業について次の課題を抽出した。「情報収集・分析・活用」では重要事象・傾向分析のレベルアップとそれに基づく提言力の強化、「安全文化の推進」では安全文化アセスメントの定着とピアレビューで得られた良好事例の活用促進、「民間規格の整備支援」では「先手管理機能の強化」の実効的な活動と原技協ガイドラインの充実、また、新規事業である「技術力基盤の整備」及び「原子力技術者の育成・維持」では、共通技術基盤及び保全技量認定制度が有効に活用される仕組み作りと定着化である。
また、今後、これらの課題に共通して対応するため、当協会が原子力産業界の技術集約的役割を担うとともに、技術情報を集約・体系化し、効果的な活用を進めること、また、協会自らの人材育成を確実に実施し、職員個々の専門能力を最大限活用するための組織横断的機能を働かせた組織運営を目指す。
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(10)
理事、顧問の選任・辞任について |
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平成20年6月19日、定時社員総会において、大部悦二理事を選任。同日、理事会において石川迪夫最高顧問を再任した。
また、平成21年1月31日、松下清彦理事は、一身上の都合により理事を辞任した。
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(11)
組織改編について
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保全プログラムに係る保全技術の整備支援を行うとともに、運転責任者判定事業や保全技量認定制度等の整備支援を行う組織として、技術基盤部を平成20年4月に設置した。
さらに、原子力技術に関する的確な情報をホームページ等に発信・提供していくため、業務部に広報・情報管理グループを設置した。
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3.
法人の概況 |
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(1) 事業内容 |
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原子力に関する下記の事業を行う。
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安全文化の推進
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情報の収集・分析・活用
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民間規格の整備促進
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技術力基盤の整備
・
原子力技術者の育成・維持
・
前各号に掲げる事業に付帯又は関連する事業
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(2)
基金の拠出状況 |
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(3)
理事及び監事 |
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理事 |
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藤江 孝夫 |
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鈴木 康郎 |
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中村 民平 |
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成瀬 喜代士 |
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河島 弘明 |
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百々 隆 |
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佐々木 則夫 |
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東 正武 |
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松下 清彦
(平成21年1月31日付辞任) |
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監事 |
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頼 敬 |
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西村 章 |
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*なお、理事及び監事の兼務の状況は以下のとおり。
(平成21年3月31日現在) |
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佐々木 則夫
(株式会社東芝 代表執行役副社長)
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東 正武
(財団法人電力中央研究所 常務理事 |
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頼 敬 (日本原子力発電株式会社 常務取締役) |
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西村 章 (株式会社グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン
理事) |
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(4) 会員 |
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平成20年5月12日、株式会社オー・シー・エルが、平成20年10月15日、ウツエバルブサービス株式会社、財団法人発電設備技術検査協会の3会員が入会する一方、1会員が退会したことから、会員数は、120会員となった。
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(5) 会議 |
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@ |
定時社員総会 |
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日時:H20. 6.19 第 4回 |
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A |
理事会 |
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日時:H20. 5.12 第21回 |
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日時:H20. 6. 5 第22回 |
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日時:H20. 6.19 第23回 |
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日時:H21. 3.26 第26回 |
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日時:H21. 1.21 第25回 |
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B |
評議員会 |
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日時:H20. 5.28 第 7回 |
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日時:H20.11.19 第 8回 |
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C |
運営委員会 |
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日時:H20. 5.28 第 7回 |
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日時:H20.11.27 第 8回
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(6) 職員の状況 |
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職員73名(平成21年3月31日現在)
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以 上
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