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柏崎刈羽原子力発電所の地震後の状況等について(第6報)
− 8月10日までの全体状況に係る経過報告 −

  平成19年8月10日
改訂0 版
日本原子力技術協会
   

  本第6報では、地震後の柏崎刈羽原子力発電所の状況や東京電力を含む関係機関の取組み・動向等について、これまでの全体像について改めて整理し紹介する。

   
1.   地震(本震)の発生
(1) 発生日時: 平成19年7月16日(月)10時13分頃(現地時刻)
(2) 震源位置: 新潟県上中越沖の深さ約17km(発電所は震央距離16km、震源距離23kmに位置)
(3) 地震規模: マグニチュード6.8(この地震により新潟県の長岡市、柏崎市、刈羽村及び長野県の一部で最大震度6強を観測)
   
2.   地震後の発電所の状況
(1)

運転状況

 

  地震に伴い安全保護回路が正常に動作し、2〜4号機及び7号機が自動停止した。残る1、5及び6号機は定期検査に伴い停止中であった。
  現在、全てのプラントは停止して安定した状態であり、主排気筒放射線モニタおよびモニタリングポスト等のリアルタイムデータに有意な変動はなく、放射線等による周辺環境への影響はない。

   
(2)

発電所における地震観測記録

a.   各号機の原子炉建屋最下階(添付1参照)における観測値と同位置における設計値は以下の通りであり、1号機では東西方向において最大加速度680ガルが観測された。また、2号機で東西方向において観測された最大加速度(観測値:606ガル)は、設計時に想定した値(設計値:167ガル)の3.6倍に相当するものであった。
  【単位:ガル】
 
観測点 原子炉建屋最下階における観測値 同位置における設計値
南北方向 東西方向 上下方向 南北方向 東西方向 上下方向
1号機 311 680 408 274 273 (235)
2号機 304 606 282 167 167

(235)

3号機 308 384 311 192

193

(235)
4号機 310 492 337 193 194 (235)
5号機 277 442 205 249 254 (235)
6号機 271 322 488 263 263 (235)
7号機 267 356 355 263 263 (235)
 

  (注)上下方向については、括弧内の値を静的設計で用いている

   
b.   また、東京電力では、今回の地震の本震時に取得された地震観測データの分析について、これまでの調査結果を取りまとめた報告書(第一報)を作成し、7月30日、保安院に提出するとともにその内容を公表した。
   

<公表された観測記録>

      1〜7号機の原子炉建屋最下階を含む本震時に取得された「加速度時刻歴波形」とこの波形の得られている「観測記録の最大加速度値と設計時の最大加速度応答値」
      1〜7号機の原子炉建屋最下階における「観測記録に基づく床応答スペクトル」と「設計時の地震応答解析モデルに基準地震動を入力して算出した床応答スペクトル」の比較
       
  c.   東京電力では、今回の地震に対する耐震安全性確認に資する地震動を用いて、安全上重要な設備について地震応答解析および耐震安全性の評価を実施していくことにしている。また、海域の活断層調査、地震観測データ分析結果等今回の地震によって得られる知見を踏まえ、今後の耐震安全性評価、耐震対策に反映すべき事項について検討していくことにしている。
 

 

(3)

発電所の被害状況

  a.   地震発生後の外観点検によって確認された主な事象とその現状は以下の通りである。
    (a) 原子炉建屋オペレーティングフロアにおける水溜り【全号機】
        地震によるスロッシングにより、放射性物質を含む使用済燃料プール水が原子炉建屋オペレーティングフロアの全域に亘り溢水した。
     

  7月27日時点で全号機において水の拭き取りが完了している。

   
    (b) 主排気筒接続ダクトのズレ【1〜5号機】
        地震発生前後でモニタリングポストの値に有意な変化は認められず、外部への放射能の影響は確認されていない。
     

  現在、ズレの大きさ等について調査中である。

   
    (c) 消火系配管損傷による原子炉複合建屋水溜り約2,000m3【1号機】
        1号機原子炉複合建屋(管理区域)地下5階において、同階全域に亘り深さ約48cmの浸水が確認された。漏えい量は約2,000m3と推定され、採取した試料からは微量の放射性物質が検出(約6ベクレル/cc)された。
        原因は地震により損傷した屋外の消火系配管からの水が建屋内に流入したものと推定された。
        原子炉複合建屋の地下には、廃棄物処理系の機器が多く設置されているが、原子炉建屋の地下のように非常用炉心冷却系のポンプなど原子炉安全上の重要な機器は設置されていない。
        なお、現在、この消火系配管の修理は完了し水の漏えいも止まっており、溜まった水の排水作業も実施されている。
   
    (d) 所内変圧器の火災発生【3号機】
        地震発生直後の10時15分に運転員が3号機所内変圧器からの発煙を確認し、12時10分に消防署により鎮火が確認された。
        その後、地上からの外観目視点検を中心に調査を行い、以下のことを確認した。
       

・ 当該変圧器と当該変圧器二次側の接続母線部が上下にずれていること
・ 当該変圧器二次側のブッシングから漏油していること
・ 当該変圧器二次側の接続母線部の接続ダクトに激しく火災の痕跡があり、母線部の一部が溶損・破断していること

        現在、この変圧器は使用できないが、別に設置されている起動用変圧器より受電しており、プラントの安全を確保するのに必要な電源は確保されている。なお、1〜7号機の非常用ディーゼル発電機については、7月25〜27日にかけて定期的な手動起動試験が実施され、機能の健全性が確認されている。
        詳細について現在調査中である。
   
    (e) 放射能を含む漏えい水の海水への放出((a)に伴う事象)【6号機】
        6号機原子炉建屋3階及び中3階の非管理区域において水溜りを確認した。放射能の測定を行ったところ、放射性物質が含まれていることが判明した。
        その後、当該漏えい水が放水口を経由して海に放出されていることを確認した。放出された水の量は約1.2m3、放射能量は約9×104ベクレルと推定された。なお、海水モニタの指示値に有意な変動はなく、放出された放射能量も法令に定める値以下であり、環境への影響はなかった。
        調査の結果、漏えいが非管理区域に至った経路は以下の通りと推定される。
       

・ 地震によるスロッシングにより原子炉建屋4階オペレーティングフロア(管理区域)床面へ溢れ出た水は、同フロアに設置している燃料交換機の給電ボックスへ流入し、ボックス内電線貫通部のシール部の隙間から電線管の中へ流入した。
・ 電線管は建屋内床面中に埋設され原子炉建屋の非管理区域へ通じていることから、電線管へ流入した水は、その一部が原子炉建屋中3階(3階と4階の中間階)の上部空調ダクト付近から滴下するとともに、中3階床面の開口部を通じて3階床面に滴下した。
・ 3階床面に溜まった水は、同床面の排水口を通じて地下1階に設置されている非放射性の排水を収集するタンクに流入し、最終的に放水口を経由して海に放出された。

        発電所外の環境へ放出させないための当面の措置として、当該タンクの汲み上げポンプを停止するとともに、燃料交換機給電ボックスのシール部材を交換し、隙間ができないよう貫通部の密閉性の向上を図ることにした。
   
    (f) 原子炉建屋天井クレーンを駆動させる軸の継手の破損【6号機】
        4箇所ある継手のうち、3箇所の継手に破損を確認。今後、当該部以外についても詳細点検を継続することにしている。
        天井クレーンは脱線しておらず、天井からの落下の危険性がないことを確認している。(添付2参照
   
    (g) 主排気筒モニタにおけるヨウ素及び粒子状放射性物質の検出【7号機】
        7号機における主排気筒の定期測定においてヨウ素及び粒子状放射性物質を検出した。主排気筒より放出された放射能量について評価した結果、放出された放射能量は約4×108ベクレルであり、これにより評価される線量は約2×10-7ミリシーベルトで、法令に定める一般人の一年間の線量限度(1ミリシーベルト)以下であることを確認した。
        原因は、原子炉の自動停止後の操作過程において、タービングランド蒸気排風機の停止操作が遅れたため、復水器内に滞留していたヨウ素及び粒子状放射性物質が、タービングランド蒸気排風機により吸引され、排気筒を経て放出に至ったものと推定された。
   
b.   東京電力では発電所における不適合管理状況を6グレード(As〜対象外)に分類して定期的に公表しており、7月26日時点の状況は以下の通りである。地震の影響による不適合事象は1,200件以上にのぼるが、そのほとんどがCグレード以下の軽微な事象となっている。
 
グレード 該 当 項 目

地震に伴う
不適合の件数

備  考
As 法令、安全協定に基づく報告事象(プラントの性能、安全性に重大な影響を与える事象 等) 10

・オペレーティングフロアおける水溜り
・3号機所内変圧器火災 等

A 品質保証の要求事項に対する重大な不適合事象(定期検査工程へ大きな影響を与える事象 )等 33

・主排気筒接続ダクトのズレ
・消火系配管の損傷 等

B 国の検査等で指摘を受けた不適合事象(運転監視の強化が必要な事象 等) 21 ・ブローアウトパネルの外れ 等
C 品質保証の要求事項に対する軽微な不適合事象 等 491  
D 通常のメンテナンス範囲内の事象 等 706  
対象外 消耗品の交換等の事象 等 2  
合   計 1,263  
  (注) Cグレードの適用例としては、「ポンプメカニカルシールの漏えい」や「通路窓ガラスの破損」(人的安全に関わる事象)等が、Dグレードの適用例としては、「弁シートパスで、増し締め等により補修可能なもの」等が挙げられる。
   
3.   関係機関の取組み・動向等
(1)

経済産業省(原子力安全・保安院)

  a.   国民の安全・安心を確保する観点から、7月20日、次の対策を講ずることを電力会社に指示した。
    (a) 自衛消防体制の強化
    (b)

迅速かつ厳格な事故報告体制の構築

    (c) 国民の安全を第一とした耐震安全性の確認
   
  b.   7月23日、薦田保安院長が新潟県を訪問し、新潟県知事、柏崎市長及び刈羽村長に対し、これまでの保安院としての対応について説明するとともに、意見交換を行った。
   
  c.

  中越沖地震が発電所に及ぼした具体的な影響に係る事実関係の調査を行うとともに、当該地震を踏まえた国及び原子力事業者の今後の課題と対応について取りまとめるため、「中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会」を設置した。
  7月31日、本委員会の初回会合が開催され、以下に示す具体的事項について下部WG等にて検討を進め、本委員会として報告を受けつつ審議を行うことが確認された。

    (a) 地震発生時の事業者による自衛消防体制、情報連絡体制及び地元に対する情報提供の在り方
    (b)

中越沖地震から得られる知見を踏まえた耐震安全性の評価

    (c) 中越沖地震発生時における原子炉の運営管理の状況と設備の健全性及び今後の対応
   
  d.   東電が調査したプラント状況について、現地の保安検査官が発生原因等、詳細事実確認作業を実施中。
   
(2)

原子力安全委員会

  a.   7月19日、原子力安全委員会の臨時会議において、鈴木委員長は、柏崎刈羽原子力発電所では最も重要な安全機能は正常に動作し、安全性は基本的に確保されていることや、今回の地震による故障・トラブルや耐震安全に係る今後の対応方針等について見解を示した。
   
  b.   7月30日、「地震による影響に関する原子力安全委員会の見解と今後の対応」について原子力安全委員会決定がなされた。主な内容は以下の通り。
   
    <新耐震指針の有効性>
   

  新耐震指針の見直しの要否に関しては、バックチェックにより新耐震指針に基づく地震動を想定し、それを今回の地震等の実際の影響により検証した上で判断すべきものであり、現時点では議論できる状況にはない。

   
 

  <建物・構築物の支持性能の確保>

   

  新指針適合性の観点から、SクラスのみならずB・Cクラスに対しても地盤支持性能の確認やこれを踏まえた必要な補強等の措置を講ずることについて、バックチェックに伴う作業の一環として全ての既設原子力発電所において行うことを要請する。

   
 

  <地震時の火災防護対策の強化>

   

  今回の地震では消火設備が機能しなかったこと等を踏まえ、「火災防護審査指針」の要求への対応状況について調査し、火災防護対策の強化に向けて検討を行う。

   
  c.   8月7日、鈴木委員長が柏崎刈羽原子力発電所への影響について最新の調査状況を確認するとともに、新潟県庁、柏崎市役所、刈羽村役場を訪問し、意見交換を行った。
   
(3)

原子力委員会

 

  8月7日、原子力委員会は、既に開始されている原子力安全委員会や原子力安全・保安院における取り組みに関し、適切な情報発信等、その際に重要と考える6項目の見解を示した。

   
(4)

地方公共団体(新潟県、柏崎市、刈羽村)

  a.   7月18日、柏崎市の会田市長は、火災予防上危険があるとし、消防法に基づき柏崎刈羽原子力発電所の使用停止を命令した。
   
  b.   発電所の被害状況と現況におけるプラントの安全性について確認するため、新潟県、柏崎市、刈羽村は安全協定第10条に基づく「立入調査」を実施している。8月1日、2日には、専門家の知見に基づき調査・確認を行うため、「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」委員同行の上で実施した。
     
(5)

国際原子力機関(IAEA)

 

  耐震分野を中心として、放射性物質の漏えい、安全運転管理等に関し、事実関係の把握及びそれから得られる教訓を抽出するため調査団を派遣した。8月6〜9日には柏崎刈羽原子力発電所の調査と関係者からのヒアリングを行い、8月10日には保安院等との意見交換を行った。
  調査結果については、速やかに公表される見込みである。

     
4.   日本原子力技術協会の取り組み
(1)

ホームページでの情報提供(日本語版、英語版を掲載)

a.   柏崎刈羽原子力発電所の地震後の状況について
   

  ・ 第1報(7月18日) 地震の発生及び環境への影響
  ・ 第2報(7月20日) 地震動、原子力安全委員長委員会発言他
  ・ 第3報(7月23日) 甘利大臣臨時記者会見、炉心燃料への影響他
  ・ 第4報(7月26日) 原技協現場調査報告
  ・ 第5報(8月 1日)  地震観測データ分析結果(第一報)

    (注)   第1、2報については、海外で正確な報道がなされていないことから、まず英語版ホームページに掲載。第3報以降日本語版も併せて掲載。
       
b.

  発電所の状況及び東京電力・国・自治体等動向の主要な経緯
  7月25日掲載(以後、順次改訂)

       
(2)

現地調査

    7月23〜24日 現地調査(3名派遣:発電所及び柏崎市、刈羽村の被害状況調査)
    調査結果は第4報としてホームページに掲載
       
(3)

会員への情報提供

    7月27日 技術セミナー(仙台:東北地区会員を中心に原技協の活動報告の中で報告 約40名)
    現地調査報告会(中部電力 約20名)
    現地調査報告会(その他の電力、重電メーカー、原産協 約40名)
       
(4)

メディア等対応

    7月18日 読売新聞: 石川理事長インタビュー記事「火災への対処遅れ課題」
    7月22日 報道2001: 石川理事長出演
    7月26日 NHKニュースウオッチ9:トップニュースで専務理事コメントを紹介
    7月26日 めざましテレビ:専務理事コメントを紹介
    8月3日

原子力平和利用連絡協議会定例委員会:石川理事長が講演の中で、柏崎刈羽原子力発電所の状況等について説明

    その他理事長等への取材対応多数
       
(5)

海外機関への説明

 

 8月24日、米国NEI(Nuclear Energy Institute)を訪問し、柏崎刈羽原子力発電所の状況等について説明を行うことにしている。また、欧州の機関に対しても同様の説明を行うことについて調整中。

       
 

  本内容は、東京電力における今後の詳細調査等により更新されるものである。

              
    参考リンク先  東京電力    原子力安全・保安院    原子力安全委員会

 



 
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