WWW.GENGIKYO.JP 
メールでのご意見・お問い合わせはこちらへどうぞ
当サイトのサイトマップです
English version
有限責任中間法人 日本原子力技術協会  
HOME 協会の御紹介 活動状況 関連情報 問い合わせ先  
活動状況
新潟県中越沖地震(柏崎関連)
全体
情報・分析
NSネット
規格基準
技術基盤


   Contents
理事部長
   メッセージ
   
活動内容紹介
社員総会
評議員会
事業計画等
原技協セミナー
技術コラム
特別活動
その他の活動

 


柏崎刈羽原子力発電所の地震後の状況等について(第19報)
−  原技協の健全性評価委員会の活動状況(平成20年度)  −

平成21年8月31日
改訂0 版
日本原子力技術協会

  設計基準を超える地震荷重を受けた重要機器の健全性を確認し対策を着実に実施すること、さらに、災害から得られた貴重な教訓を関係者が広く共有していくために、当協会は、構造強度・検査・耐震などを専門的分野とする学識経験者と、電力・メーカー等の関係者による「中越沖地震後の原子炉機器の健全性評価委員会」(主査:野本敏治東大名誉教授)を平成19年9月末に設立した。
  第17報にて報告のとおり、平成20年6月には平成19年度の活動成果をとりまとめた中間報告書を公開した。本報では、本年6月に中間報告書としてとりまとめられた平成20年度の活動成果と平成21年度の計画について報告する。なお、詳細については、当協会ホームページ掲載の報告書を参照されたい。

1. 平成20年度の活動状況

  委員会は、約2ヶ月に一回のペースで、平成20年度末までに合計5回の委員会を開催した。また、委員会下部組織の5つのワーキンググループ(以下、WG)は、合計25回と高い頻度で開催した。この中には、安全裕度に関する説明性向上を目的とした「見える化タスク」等の新たな取り組みを含めて、健全性評価に係わる活動を積極的に進めた。

 
(1)

評価対象範囲と検討事項

 

  原子炉冷却材圧力バウンダリを構成する機器・配管本体、支持部を主たる評価対象として、以下の検討を実施する。
@地震荷重を受けた機器の健全性評価手法
Aプラント機器の健全性評価・裕度評価

 
(2)

委員会及びWGの概要

 

  平成20年度より建築・土木分野の専門家8名を加えた大学・研究機関など有識者の委員総数26名、及び、電力・メーカーなど常時参加者約40名が本委員会に参加した。また、WGは再編成を行い、下表の5WGと1タスクを適宜開催し、設備継続使用に向けた個別技術課題に取り組んだ。

 

WG名称

WGの主たる検討事項

評価基準WG

構造健全性の評価手法、基準の検討

検査WG

機器の塑性ひずみ等の検査方法の検討

疲労・材料試験WG

地震荷重を受けた材料の疲労強度評価検討

建屋-機器連成WG

原子炉本体基礎の合理的な評価手法の検討

配管振動評価WG

配管減衰定数等の裕度評価と合理的な配管設計手法の検討

「見える化」タスク

安全裕度に関する説明性向上の検討

2. 平成20年度の成果

  委員会当初の課題であった、点検と解析の組合せによる健全性評価の大きな枠組み、疲労破壊モードのデータに基づく評価や塑性ひずみの測定方法、締結部材の検査方法などの検討成果は、東京電力による7号機の健全性評価報告や国の様々な審議プロセスの中で間接的に活用された。また、原子炉圧力容器基礎部の弾塑性手法適用に関する検討結果は、6号機の耐震安全性評価報告に活用された。平成20年度の技術成果概要を以下に示す。

(1)

地震荷重を受けた機器の検査手法の検討

 

  機器の点検・検査は、地震が作用した結果を直接確認する有効な方法であり、設備点検実施にあたり遵守すべき基準類、点検・評価者に必要な資格・力量について検討した。
  平成20年度は、前年度検討した塑性ひずみ測定方法(硬さ測定法)について、実機適用に当たっての課題を整理し、その対応案、及び地震による塑性ひずみの発生有無を評価する手法について提案した。図-1に7号機のほう酸注入系配管の硬さ測定の例を示す。地震荷重により塑性ひずみが発生した場合、評価部の硬さは硬くなる(最大値、最小値が大きくなる)ことが想定されるが、評価部と地震の影響の小さかった比較部の両者の測定値が、測定誤差(ばらつき)の範囲内にあり、設備の健全性に影響を与えるような塑性ひずみは生じていない。


(評価部位)


(硬さ測定による塑性ひずみ評価結果)

(硬さ測定の様子)
図-1. ほう酸水注入系配管の硬さ測定の例(7号機)
 

  また、機器基礎部の健全性評価手法として、締結力確認のためのトルク測定方法、基礎ボルトのき裂発生有無確認のための超音波探傷試験方法について提案した。これらの手法で健全性が確認された7号機の基礎ボルト概観写真を図-2に示す。

 


(基礎ボルト上部)

(基礎ボルト下部)
図-2. 原子炉圧力容器基礎ボルト概観写真(7号機)

(2)

原子炉本体基礎の弾塑性評価による耐震安全性評価

 

  基準地震動Ssに対する耐震安全性評価を行う際に実施する原子炉建屋−原子炉格納容器−原子炉本体基礎等を連成した地震応答解析で、従来、原子炉建屋は非線形モデル、原子炉本体基礎は線形モデルを用いて連成地震応答解析を行っていたが、原子炉本体基礎部の構造様式を考慮した弾塑性モデルを構築した(図-3参照)。
  新たに構築した弾塑性モデルにより基準地震動Ssに対するABWRの原子炉本体基礎部の評価に本手法を適用した結果、合理的な解析結果が得られるとともに、基準地震動Ssに対する耐震安全性を確認した。


(原子炉建屋縦断面図)

(RPVペデスタル地震応答解析モデル)
図-3. 原子炉圧力容器の基礎部の弾塑性解析
(3)

配管耐震性に関する評価手法の整備

    機器の弾塑性挙動に関する最近の知見を踏まえて、配管の許容応力等について検討を継続して実施した。本来は設計用であるJEAGのVASに代わる「地震後の耐震健全性評価手法案」(新評価手法案)を検討し、これによる合理化効果を試算した。その結果、現状の許容応力の比に換算すると、1.2倍程度になる見通しとなった。
  また、設計用減衰定数設定経緯を調査し、配管サポートや付加物の既知の情報をもとに設計と異なる合理化された評価を可能にするための課題を整理した。
 
(4)

疲労強度に関する評価検討

 

  地震荷重により発生したひずみが材料強度、疲労寿命に及ぼす影響について検討するため、昨年度実施した3鋼種に加え、平成20年度は主な配管材として5鋼種(SUS304TP, STP480, STPT410, SFVC2B, SS400)を対象としてデータの拡充を図った。予ひずみ付与試験及びフェライト鋼種の疲労寿命に及ぼす繰返し予ひずみの影響を図-4に示す。フェライト鋼及びオーステナイト系ステンレス鋼のいずれの鋼種においても機械的性質及び疲労寿命に及ぼす繰返し予ひずみの影響は小さく、設計疲労曲線に対し、十分な寿命裕度が確保されていることを確認した。従って、中越沖地震の交番荷重による材料強度への影響はなく、設計疲労線図に基づく累積疲労係数評価により、機器の疲労寿命は十分な裕度をもって評価可能であることを確認した。


(予ひずみ付与疲労試験の様子)
図-4. 地震荷重を模擬した負荷を与えた材料の低サイクル疲労強度の評価結果
 
(5)

「安全裕度」の予備的検討

    耐震設計の有する解析評価の保守性について、配管系の各種解析方法によるケーススタディ結果から、耐震設計には大きな裕度が内在していることを確認した。さらに、「安全裕度」の一般への説明性向上方策を検討した。
 
   
3. 平成21年度の活動計画

  平成21年度も、専門家による活発な議論を重ねつつ、柏崎刈羽原子力発電所7号機・6号機での健全性評価結果を他号機へ展開するとともに、基準地震動決定を受け本格化する各号機の耐震安全性評価を継続実施する。また、以下に記すように、これまで得られた成果の集約を図り、関係各面への情報発信を積極的に行っていくこととする。

    国内外の技術知見を取り入れ合理的な知見を整理するとともに、耐震安全裕度等についての説明性を高める。また関係学協会等との連係を強化・情報発信に努める。
    本委員会の各WGで纏めた、点検・検査・配管耐震評価・原子炉基礎部の解析評価など個別技術成果をより一般的化した技術ガイドラインの形態に整備し、関係者の利便性を図る。
    IAEAで検討中のSafety Report等をベースに、地震後に実施すべき点検・検査など地震動の大きさに応じて再起動の対応を定めたガイドラインを整備するため、電力各社にも参加を要請して新たなWGを設置する。
   
  以上
[↑]PageTop

HOME協会のご紹介活動状況設備稼働状況関連情報ご意見・ご質問

Copyright © 2005 Japan Nuclear Technology Institute, All Rights Reserved.