柏崎刈羽原子力発電所の地震後の状況等について(第13報)
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原子炉開放・炉内点検の実績と状況 等について − |
平成20年2月19日
改訂0 版
日本原子力技術協会 |
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東京電力における炉内点検作業については、本日2月19日に3号機のフェーズ3点検が終了したことをもって、全号機の炉内点検が完了した。そこで、本第13報では、炉内点検の実績とその結果、その他の点検結果や不適合管理状況について紹介する。
また、来週開催される「原子力発電所の耐震安全性・信頼性に関する国際シンポジウム」の概要についても併せて紹介する。 |
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1. |
主な点検・復旧状況 |
(1) |
炉内点検関係 |
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原子炉開放作業、燃料移動作業及び炉内点検(フェーズ1〜3)の一連の作業実績と状況を添付資料に整理した。
当該作業の過程において、以下の通り、幾つかの不適合事象が確認されたが、何れもプラントの性能、安全性に重大な影響を与える事象ではなかった。また、その他においては「損傷・変形・脱落などの異常」は確認されなかった。
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a. |
1号機 気水分離器 仮置き用脚部等の変形 |
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○ |
機器仮置きプール内に仮置きしていた気水分離器について点検した結果、昨年9月27日、仮置き用の脚部(4本中4本)と原子炉内へ設置する時に位置を決めるためのガイドピン(2本中2本)に変形が確認された。 |
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○ |
仮置き用の脚部とガイドピンは、気水分離器の補助的な設備であり、機能や構造に影響するものではない。また、気水分離器の仮置き用脚部の変形に伴い機器仮置きプールの床面にキズが確認されたが、当該箇所からの水漏れは確認されていない。 |
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b. |
5号機 燃料移動作業中における燃料交換機荷重異常発生に伴う自動運転の停止 |
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○ |
燃料移動作業中の昨年11月11日、燃料交換機の荷重が大きくなったことを示す警報が発生し、燃料交換機自動運転が停止したため、その後、水中カメラを使用して当該燃料集合体の外観を点検したところ、正しい装荷位置である燃料支持金具から外れていることを確認。 |
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○ |
当該燃料集合体及び燃料支持金具については、大きな変形等の外観上の異常はなく、原子炉内の水のヨウ素濃度についても有意な変化はないことから、原子炉内の燃料に損傷はないものと考える。 |
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○ |
当該燃料集合体が燃料支持金具から外れた原因は、今回の定期検査において燃料集合体装荷作業(昨年5月)を実施した際、何らかの理由により正しく装荷されなかったため、その後の地震の揺れなどにより燃料支持金具から外れたものと推定される。 |
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○ |
炉内点検で取り出すことができなかった燃料集合体1体については、11月20日に外れていた燃料集合体1体を燃料支持金具(正規の位置)へ戻し、使用済燃料プールへの移動が完了。今後、炉内点検が終了後、チャンネルボックスの曲がり測定等を実施し原因を詳細に調査する予定。 |
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c. |
5号機 ジェットポンプ(No.1)ウェッジのずれ |
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○ |
昨年11月29日、20台あるジェットポンプのうち1台について、ジェットポンプ・インレットミキサーの運転中の振動を抑えるために上からはめ込んでいる楔(ウェッジ)がずれていることが確認された。 |
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○ |
インレットミキサーは、上部の固定具(ビーム)によりライザー管に固定されていることから外れることはなく、また、当該楔(ウェッジ)のずれによる安全上の問題もない。なお、5号機は地震発生時、定期検査中であり停止していた。 |
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○ |
その後、残り19台のジェットポンプについて点検を実施した結果、同様の異常は確認されなかった。東京電力では、ずれた原因等について調査することにしている。 |
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d. |
6、7号機 制御棒の引き抜け不可【中越沖地震とは関係なし】 |
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○ |
7号機においては、燃料移動作業中の昨年10月18日に1本、6号機においては、燃料移動中の昨年11月23日と25日に計2本の制御棒の引き抜けができないことが確認された。何れも、その後、あらかじめ定めていた復旧手順により引き抜くことができた。 |
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○ |
制御棒駆動機構、制御棒、原子炉側の機器の点検を実施し結果、これまでに原因の特定につながるような事象(異物、損傷等)はなかった。 |
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○ |
その後、6、7号機における共通要因を検討した結果、今回の事象は、異物混入防止用の通水を通常のプラント停止時よりも長期間停止していたこと等により、クラッド等(鉄さび等の金属不純物)の混入が多くなり、一時的に制御棒駆動機構内の摩擦抵抗が増大したために発生したものと推定されている。 |
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○ |
今後、同様の事象が発生した場合においても、スクラム操作等により改善が可能であり、また、クラッド等の干渉は制御棒駆動機構の挿入機能上問題となるものではない。 |
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e. |
7号機 原子炉ウェルライナドレン水の検知 |
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○ |
昨年10月8日に確認されたライナに繋がる配管のレベル計への水の流入については、11月7日、漏えいにつながる微小な傷が2箇所確認された。その後、漏えいにつながる微小な傷は合計2箇所(長さ約3mmと約2mm)であったことが確認され、ステンレス製の板(漏水防止カバー)で覆う仮補修が実施された。 |
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○ |
原因調査の結果、傷が発生した部位はライナの溶接部であり、建設時の溶接において、構造上溶接作業に困難を伴う箇所であったために溶け込み不足(未溶接部)が発生したことおよび、溶接の仕上げ加工としてグラインダにより溶接余盛部を除去していたことにより、残存板厚が薄くなっていたことが確認された。その後、新潟県中越沖地震の影響により当該部近傍にスロットプラグが接触し、貫通傷が発生したものと推定されている。 |
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○ |
原因調査のために切り出した跡(ライナ本体側)については、平成20年2月26日までに溶接により補修が実施され、次回の原子炉ウェル水張り時に原子炉ウェルからの漏えいの有無が確認される予定である。 |
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(2) |
その他点検結果 |
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3号機原子炉再循環系配管において、前回点検時に確認されたひび部(1継手)について、超音波探傷試験による点検を1月22日〜2月13日にかけ実施した結果、新たにひびと判断すべきものは確認されなかった。 |
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2. |
不適合管理状況(中越沖地震に係るもの) |
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東京電力では、発電所における不適合管理状況を6グレード(As〜対象外)に分類して定期的に公表しており、1月末までの不適合の審査状況は以下の通りである。地震の影響による不適合事象は3,300件弱にのぼるが、そのほとんどがCグレード以下の軽微な事象となっている。 |
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(*1)
As:法令、安全協定に基づく報告事象(プラントの性能、安全性に重大な影響を与える事象 等)
A :品質保証の要求事項に対する重大な不適合事象(定期検査工程へ大きな影響を与える事象 等)
B :国の検査等で指摘を受けた不適合事象(運転監視の強化が必要な事象 等)
C :品質保証の要求事項に対する軽微な不適合事象 等
D :通常のメンテナンス範囲内の事象 等
対象外:消耗品の交換等の事象 等 (*2) 7号機 原子炉ウェルライナドレン水の検知 (*3) 7号機 原子炉建屋(管理区域)内における水漏れ(2件:第11報参照) (*4) 5号機 燃料移動作業中における燃料交換機荷重異常発生に伴う自動運転の停止 (*5) 5号機 ジェットポンプ(No.1)ウェッジのずれ
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3. |
「原子力発電所の耐震安全性・信頼性に関する国際シンポジウム」の概要 |
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新潟県中越沖地震は、地震国日本において原子力発電所を運転していくにあたり多くの課題を提起した。現在、東京電力においては、点検・復旧作業や地質調査等が進められ、国においても柏崎刈羽原子力発電所に及ぼした具体的な影響の事実関係の調査や当該地震を踏まえた今後の課題と対応について審議がなされている。
このような状況の下、日本原子力産業協会、電力中央研究所、そして当協会は、国の審議動向を待って対応するのではなく、原子力に携わる者自らの問題として捉え、
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@ |
世界の技術的知見を結集し、原子力発電所の耐震安全性・信頼性の一層の向上を図っていくこと |
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A |
発電所立地地域の皆様をはじめとする国民の皆様のご理解に役立てていただけるように情報を提供し説明していくこと |
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が、我々産業界が果たすべき役割であると考え、その一環として、地震の影響を受けた機器の健全性評価、地盤変状の影響とその対策、および防災・火災防護に焦点をあて、柏崎刈羽原子力発電所の地元において、以下の通り、標記国際シンポジウムを開催することにした。
参加者については、国内からは、地元住民、自治体、国、マスコミ、大学、電力、メーカ等から、当初の計画を遥かに上回る申し込みがあるとともに、海外からも10カ国以上の方からの申し込みがあり、本シンポジウムに対する期待や関心の高さが窺える。
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<シンポジウムの概要> |
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a. |
開催期日 :平成20年2月26日(火)〜27日(水) |
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b. |
開催場所 :柏崎市産業文化会館 文化ホール(新潟県柏崎市) |
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c. |
プログラム : |
@開会、来賓挨拶、基調講演、特別講演 |
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Aセッション1:地震の影響を受けた機器の健全性評価 |
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Bセッション2:地盤変状の影響とその対策 |
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Cセッション3:防災・火災防護 |
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D総括セッション、閉会 |
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以 上 |
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