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2002年10月30日から11月1日にかけて、石川島播磨重工業(株)横浜事業所において、第26回の相互評価(ピアレビュー)を実施しました。
その概要は以下のとおりです。
1.対象事業所(所在地)
石川島播磨重工業(株)横浜事業所(神奈川県横浜市) |
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2.事業所の概要及びレビュー対象
石川島播磨重工業(株)では、1955年に原子力事業を立ち上げて以来、多数の沸騰水型軽水炉(BWR)用機器の設計、製作、据付及びメンテナンスを行ってきている。主要機器の中で、原子炉圧力容器は24基(うち2基は製造中)の実績(2002年10月末現在)があり、その他には、原子炉格納容器及び原子炉系の大型機器配管などの実績がある。また、軽水炉用機器の製造技術を生かして、高速炉、高温ガス炉などの新型炉機器の製作にも取り組んでいる。これらは、主に原子力機器専用工場として建設された横浜第一工場で製作されている。また、1978年以来、原子燃料サイクル分野にも取り組んで来ており、主に、高レベル廃液ガラス固化施設及びガラス固化体貯蔵施設の設計から建設までの工事を行ってきている。現在は、それらの実績を生かして、使用済燃料貯蔵、高レベル廃棄物処分及びその他放射性廃棄物処理技術などのバックエンド分野にも取り組んでいる。
なお、今回のレビュー対象は、石川島播磨重工業(株)横浜事業所に所属する、エネルギーシステム事業部の原子力関連部門の設計・製造に係る安全推進活動とした。
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3.レビューチームの構成およびレビューの方法
Aグループ
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:関西電力(株)、住友金属鉱山(株)
(レビュー分野:組織・運営、教育・訓練、重要課題対応(品質保証関係)) |
Bグループ
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:三井造船(株)、NSネット事務局
(レビュー分野:設計・製造、重要課題対応(品質保証関係を除く)) |
レビュー方法 |
:上記分野について、現場観察、関係者との面談および書類確認 |
石川島播磨重工業(株)横浜事業所
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現場観察状況
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4.レビュー結果
(1)主な結論 |
- 今回の石川島播磨重工業(株)横浜事業所に対するレビュー結果を総括すると、原子力安全の面で直ちに改善措置を施さなければならないような事項は見られなかった。
- 本事業所では、全社の経営理念(「技術をもって社会の発展に貢献する」及び「人材こそが最大かつ唯一の財産である」)を受け、事業部基本方針、事業部品質方針を掲げ、各論に示すような諸活動を通じて、技術・品質・信頼・安全の確保に、協力会社も含め、全従業員が努力している姿が確認された。
- このような努力は、プラントメーカーにおける原子力安全の確保とは、第一に品質重視の経営であるとの方針のもと、品質保証/品質管理活動に積極的に取り組み、高い品質保証/品質管理レベルにあること、さらに、本事業所がわが国で初めてASME−N/NPTスタンプを取得しただけではなく、ISO9001の認証取得やデミング賞を受賞したことなど、品質保証システムの外部機関による評価にもあらわれている。
- また、東電問題に関する取り組みについては、本事業所に直ちに委員会を設置し、企業倫理プログラム、倫理尊重の風土作り等の不正防止システムの検討を行っている。
- 今後、本事業所は、現状に満足することなく、なお一層の安全文化の向上を目指して更なる自主努力を継続していくことが望まれる。
- また、今回のレビューで得られた成果が、本事業所だけでなく、協力会社に対しても展開されることが期待される。
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(2)良好事例及び改善提案 |
今回のレビューにおいて、NSネットの他の会員さらには原子力産業界に広く紹介されるべきいくつかの良好事例を見出した。一方、本事業所の安全文化をさらに向上させるためのいくつかの提案を行った。
良好事例*1と改善提案*2 の一覧は次のとおり。 |
○「良好事例」
レビュー分野
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良好事例の概要
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T 組織・運営 |
・トップ方針の各部門業務への具体的展開
・安全及び品質パトロールでの問題点発見時の素早い処置
・潜在している不適合の芽の早期摘み取り |
U 教育・訓練 |
・専門家リストによる技術の伝承
・不適合事例の収集及び情報の共有化 |
V 設計・製造 |
・設計OA化の推進によるヒューマンエラーの防止及び設計の効率的検証
・多面的、広範囲な設計検証
・「エリア管理」による安全衛生管理密度の向上 |
W 重要課題対応 |
・IT化を取り入れた効果的な文書管理
・製品品質確保のダメ押し
・効果的な被ばく低減の実施
・「私の安全宣言」による安全風土の定着活動
・「いくぞう君」ビデオ装置による効果的な安全教育の推進
・リスクアセスメント手法の現場での活用による安全活動 |
注)太字は代表的な良好事例
○「改善提案」
レビュー分野
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改善提案の概要
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T 組織・運営 |
・事例収集などの幅広い調査を基にしたデータ不正防止対策の検討 |
U 教育・訓練 |
・ 資格認定委員会への部門以外のメンバーの参画 |
W 重要課題対応 |
・協力会社との倫理に係る情報交換
・トラブルの発生防止活動の風化防止への工夫 |
5.相互評価報告書
相互評価報告書本文及び参考図は、こちらをご覧下さい。
●相互評価報告書本文(PDF形式:289KByte)
●参考図
6.その他
日本ヒューマンファクター研究所の所長である黒田勲氏がオブザーバーとして参加を実施。(オブザーバーのご意見・ご感想の取りまとめ結果は、別途NSネットのホームページにて公表しています。)
以 上
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*1良好事例
当該事業所の安全確保活動のうち、的確かつ効果的で独自性のある手法を取り入れている事例であって、NSネットの会員さらには原子力産業界に広く伝えたい、優れた事例を示したもの。
*2改善提案
原子力の安全性を最高水準へと目指す視点から、原子力産業界でのベストプラクティスに照らして、当該事業所の安全確保活動をさらに向上・改善させるための提案などを示したもの。そのため、現状の活動が原子力産業界の一般的な水準以上であっても、改善提案の対象として取り上げる場合がある。 |
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